ツイキャスで予想した通り、吉村共同代表が次の日本維新の会代表選への出馬を表明しました。
ということで、「維新はなぜ衆院選で負けたのか(後編)」はいったん横に置いときまして……。
第1回代表選のトラウマ
さて、維新の代表選と言えば、記念すべき第1回の代表選について良い評価をする人を知りません。
松井元代表による実質的な後継指名であり、そのお相手はご存じのように馬場現代表です。当時、私はこの代表選そのものにも猛批判しましたが、その時点からの課題は馬場新代表の振る舞いでした。馬場さんが本来、リーダーの器でないことは明らかでした。しかしながら、なんせ、他に人材がいないのだから馬場さんがなるしかなかったのは事実。であれば、馬場さんがやるべきは「全力で人材育成」だったはずです。そのためには、任期中に「新代表候補大募集!」とやれば良かったのです。
それを、「我こそは維新の代表なり」という面でいたから、今のグダグダ維新があるのです。
と言っても、毎度この断り書きを入れておりますが、これは馬場さんが代表だから馬場さんを批判せざるを得ないだけで、当然ながら維新全体の問題であり、維新の政治家全員に責任がある話です。
もう無投票で吉村さんで良いのでは?
今般の代表選は、そんなトラウマにも近いかもしれない黒歴史である第1回代表選を踏まえて、ということになるわけです。
が、私は敢えて言いたいのですが、吉村さんが立候補表明した以上、もう他の候補者は出ずに無投票当選で良いのではないのでしょうか。
というのも、最近の維新は「強い意志」とか「確固たる理念」とか「オリジナリティー」みたいなものとは無縁で、「マスコミがこう言ってるから」「橋下徹が怒ってるから」「支持者に突き上げられたから」という上っ面の対応をしては間違った判断をしてしまうということが続いているからです。
今のフニャフニャ維新はもう上っ面の「ウケ」を考える余裕なんてないはずで、「前回の代表選の評判が悪かったので、今回はオープンに見えるように」みたいな中途半端にあざとい演出もまた見透かされてしまうでしょう。
もっとも、本気で吉村さんに対抗して自分が維新の代表になりたいという人がいるのであれば別ですが。
吉村さんは生まれ変われるか
日本維新の会の次の代表にはどうも吉村さんになりそう。そうなれば私は吉村さんを応援する。
が、まずは儀式として一度は「どのツラ下げて代表になった?」とは言う。人気の高い吉村さんは維新の【延命】に一役は買うだろうが【再生】できるかどうかは未知数だ。 https://t.co/kI0CQWTfdC
— 小ライス (@shorice_hitotsu) November 7, 2024
この投稿の通り、私は吉村さんを応援すると同時にまずは批判します。
出馬表明会見ではここを突っ込む記者はいなかったようですが、斎藤知事騒動における維新の振る舞いにはいわゆる岩盤支持層までが怒り心頭に達し、相当な勢いで支持を落としています。くだんの騒動において、維新の中でもおそらく唯一、斎藤元兵庫県知事の「パワハラ」を認定したのは他ならぬ吉村さんです。
当初は「真実が明らかになるまで」と判断を保留していたのに、橋本さんに「そうやって真実究明主義を貫くのか!」とよく分からない叱られ方をしたと思ったら、態度一転。「僕も電話で直接『辞めろ』って言ったんですけどね」と。
万博の「玉川出禁発言」の時もそうでしたね。最初はマスコミの突っ込みに「政治的集会の中での発言くらい自由にさせてくれ」と反発していましたが、これまた橋下さんが「どんな場であろうと知事という立場であの発言はダメ」と言われた途端、ゴメンナサイ。
先のポストで書いたように、これまでの吉村さんのままでは「延命」はできても「再生」は到底無理な話です。本気で維新を再生したいのなら、まずは吉村さんが生まれ変わること(親離れ)が必須条件でしょう。
さて、斎藤知事騒動の総括なしに出馬表明した吉村さん、どうなりますやら。私の「応援」は限りなく「見届け」に近いものです。
では、出馬表明会見について。
2人分働く吉村さん
記者の「府知事と国政政党代表は兼任できるのか」の質問に対し、吉村さんは「2人分働けば良い」と回答。そうです、2人分でも3人分でも働けば良いのですよ。吉村さんの尊敬する橋本さんは多分5人くらいに分身してたようですし。
その流れで、「党首討論だってリモートで良い」と主張されていましたが、これまた仰る通り。党首討論だけではありません。党内の交流も一般への広報も、もっともっと効率化できるはずです。維新がすべき改革は、組織の意思決定や広報までも含めた「コミュニケーション改革」だと思います。
執行部人事を考えてないだと!?
次に小言。
「若いメンバーで執行部人事をするつもりか」の質問に「まだ代表になってないので」と回答。
そういうとこじゃボケエエエエ!!!
執行部人事も想定せずに代表選に出馬してるんですか?それが本当だとしたらいよいよ本物のボンクラとしか言いようがありませんね。と言っても、いくら何でもそれはあり得ないでしょう。吉村さんの頭の中には当然人事計画があるはずだし、ないと困ります。であれば、回答は2パターンしかありません。
「はい、代表に立候補するからには当然執行部人事も考えています。しかしながら、その対象者がこれから代表選に立候補するかもしれないという状況でそれを言ってしまうと、代表選の公正性に影響が出てしまうのでここでは控えさせて頂きます」
「はい、代表に立候補するからには当然執行部人事も考えています。まず共同代表に〇〇さん、幹事長が〇〇さん、ここは確定です。ただし、これは僕の頭の中で勝手に考えているだけであって、本人への申し出も何もない状態です。当然ながら信頼できる人だから指名しようと思っているのであり、またそういう人物だからこそ代表選に出馬してくれても良いと思います。『維新とは何か』という議論は皆さんの前ですることでより大きな意味を持つと思います」
中途半端な守りの姿勢は何も良いことがありません。弱い言葉こそ命取りになりますよ。
行政マンとしての吉村さんは優秀だが…
かねてより、私は吉村さんを「行政マンとしては非常に優秀だが、政治家としては凡庸」ってな評価をしてきました。そして出馬表明会見は、まさにそういう吉村さんの特徴がよく出ていたと思います。
かつて東京都知事選では公約に「東京をもっと良くする!」と書いた仰天候補者がいましたが、これでは有権者を完全にバカにすることになりますね。とは言え、政策というのは語り始めると相当高度な学術に絡むこともあり、選挙の際に口頭やポスターで表現し切れるものでもありません。
ということは、我々が学生時代にさんざん悩まされた「要約する」「見出しを付ける」という国語能力が要求されるわけです。
吉村さんがいかにも行政マンだなと思うのは、出馬表明会見なのに政策の細かいところまで全部言おうとしていたところです。言い換えれば、要約したり見出しを付けたりするスキルがない。国民民主党に負けた維新を象徴しています。
さらに細かいところを言えば、吉村さんは一息で喋れるところまで喋ろうとして、終盤ボソボソ喋りになってしまうという悪い癖があります。是非、玉木雄一郎氏の語り方と比較してみてください。
これはまた「発信」にフィーチャーした記事で詳しく書こうと思いますが、最近の維新はマクロ的にもミクロ的にも、どの範囲まで声を届けたいのかという「発信の距離感」においてポンコツだったのですよ。
吉村さんは橋下さんと殴り合いの喧嘩ができるか
すでにかなりの長文ですが、ついでなので書き切ってしまいます。
あのやしきたかじん氏に首根っこをつままれて維新に放り込まれた吉村さん。振り返ってみると、維新において重要な決断は先人(主に橋下さん)がやってくれていたのであって、吉村さんご本人はこれといって重要な判断をしてないんですよ。
もちろん、先述の通り、行政マンとしては極めて優秀です。でもそれは先人が舵を回した後に突っ走る力であって、自分で舵を回したことがないのです。地下鉄の民営化だって、その交渉・調整においては吉村さんの手腕が活かされたでしょうし、手続き上の決裁権も当時の市長である吉村さんにありましたが、地下鉄民営化という方向性を決めたのは吉村さんではありません。万博も大阪IRも同様。そしていずれも、吉村さんにおいては、「やれ」と言われたことはやり通すという力は保証されているのです。
(当選するという前提ですが)次は自分が舵を切り、部下に命令をする立場になります。
そうなると……橋下さんの維新叩きが弱まる?いいえ、橋下徹はそんな甘い人間ではないと思います。もしそうなったとしたら、吉村維新が橋下傀儡政権ということになっているでしょう。吉村さんは強大すぎる“親”と殴り合いの喧嘩をする覚悟が必要になります。
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