当初、この記事は『足立康史論ファイナル』と題していましたが、やめました。
これまで『足立康史論』と冠して書いた記事は、主として足立康史議員およびそのファンに対する建設的提案という趣旨だったのですが、今回は違うからです。ファンの方々にとってはこれから書くことに何の意味もないどころか、お気を悪くされるだけでしょうから、ここで引き返すことをお勧めします。
ってことで、ここで書くことは、東京15区補選の際に起きた足立康史SNS発信騒動と党による処分についてその本質は何だったのかを、私なりにまとめをしたいと思います。
以下は、当時書いた文章で、なぜこのタイミングで投稿するかについては最後に書きます。
騒動の概要
先の東京15区補選において、東京維新の会の「機関紙」が公選法上どうなのか?という第三者からの意見に足立氏が反応、それを【口頭で】藤田文武幹事長らに具申するも「聞き入れてくれなかった」とのこと。それを理由に足立議員はこのことをSNSで発信。東京維新の会も日本維新の会執行部も、自党のネガティブキャンペーンをやってどうする!と激おこ。それを口頭で注意するも……面倒くさくなったので詳しく知りたい方はツイッター読んでください。
SNS発信する必要はあったか?
一連の騒動で多くの人が難儀しているのは、実は「問題の抽象化」なんです。「抽象化」とは、簡単に言えば「つまりどういうことか」という言語化のことです。この抽象化にはレイヤーがあって、あるレイヤーにおいては、足立さんって今回も、そしてこれまでも、ほとんど悪いことなんてしてないんですよ。
今回の事案で足立さんがやったことをあるレイヤーから抽象化すると、「適法性のチェックと党内への注意喚起」であって、実に真っ当です。
ところがここに諸事情を混ぜ合わせるとどうなるか。
(1)東京維新は総務省にも確認し、本部執行部にも許可を得た上での機関紙発行。
(2)足立議員は日本維新の会の“法務監査役”でも“相談役”でも何でもない。
(3)注意喚起は【口頭】であり、電子を含めた文書では行っていない。
(4)にも拘わらず「聞き入れられなかった」としてSNSで発信。
足立さんにとって東京15区はよその選挙区であり、本来は関係のない話。あるとすれば、法令順守の問題であり、維新の仲間が法を犯そうとしているのならそれを止めるのが正義……ではありますね、たしかに。
しかし、口頭で具申しても聞き入れられなかったとしたら、それが答えでしょ?もし何かするのであれば、まずメールやLINEグループなど後に残る媒体を使って、客観的に「言うべきことは言った」という証拠を残しておくのが真っ当なやり方というものです。これがアナログ時代なら内容証明郵便とか使うことになって非常に面倒くさいのですが、今のデジタル時代は非常に便利なもので、メールは送受信の履歴が残るし、LINEには既読が付きます。こんな便利なツールを使わない理由って何だったのでしょうか?「口頭で具申」と言ったって、どのくらいの声でどんな言い方で伝えたのかは分かりません。ボソっと喋って独り言と捉えられた可能性だってなくはないですよね。メールやLINEなどのデジタルツールを使えばそんな言い訳もできません。
問題の根幹であり最も厄介なのが「SNSを使っての発信」です。だって、SNSで発信すること自体はなにも悪くありませんからね。それが自党の選挙活動の違法性にまつわることだったら「正義」であり「自浄作用」ですから、褒められこそすれ非難されるはずがありません。
で、内側では使わなかったデジタルツールを外側には使った理由は何ですか?
SNSでこういうことを発信すれば、第三者やマスコミがどう反応するか、誰の目にも明らかですよね?
うん、でも足立さんは悪いことはしてませんよね!
そもそも公職選挙法ってどんなもの?
もうね、選挙の度にあちこちで「これって公選法違反じゃないのか!」って言ってるでしょ。私はド素人なんで全く分からないんですが、その都度公選法の当該箇所を読んでみたりすると、う~む、確かに違法かもなーとかは思ったりはするんですが、異常に細かいところまで規定してるようにも見えるし、解釈次第という幅が大きすぎるとも見える、鵺のような法律なんですよね。なので「公選法に一切違反せず選挙活動するのは無理」という人も結構いるようで。
であるからして、私のような素人が今回の騒動の発端となった選挙活動の【適法性】については何ら判断ができないのですよ。
そして、機関紙がNGで、2連ポスターがOKという理屈も分かりません。
しかし、現時点での心象としては、以下のように映ります。
【架空の企業・小米運送にて】
山田:ボソっ…(うちの車が阪神高速で75km/h出してた言うてる人おってヤバいんちゃう…)
鈴木:(はぁ?)
山田:(聞き入れられなかった、よっしゃSNSで言うたろ)「皆さん聞いてください!我が社の配送車が制限速度60kmの道路をなんと15kmもオーバーして走っていたのです!違法です!許せません!」
顧客A:いやいや、阪神高速60kmで走ってたら逆に捕まるやろwww
山田:皆がやってるからと言ってやって良いんですか?適法か違法かこそが問題のはずです!私はどうなっても良いけど、小米運送のポリシーだけは守りたい!
社内熱狂的シンパ及びライバル会社社員:そーだそーだ!
顧客B:え、待って、山田さん大型家具搬入する時、駐車禁止区域で15分間車停めてたよね?
山田:貨物積み下ろしの際は5分間までは適法です。私は4分30秒ごとに車を10cmずつ移動したので完全な白です!皆様、今後このやり方を「山田方式」として是非ご活用を……
公選法が分からないと言っておきながら、勝手な心象論で喩えやがって!と思った方、その通りです。ではなぜ私がそんな心象を持ってしまったか以下で語ります。
政党のガバナンスとは
今回に限らず、足立議員の口からはよく「ガバナンス」という言葉が発せられているように記憶していますが、ではこの騒動におけるガバナンスの問題とはどこにあるか考えてみます。
東京維新が「機関紙」を頒布するにあたって、党執行部と総務省に確認。足立さんはどこにいるかというと、まず東京維新の会の人ではありません。また、維新の法務顧問とかリーガルチェッカーのような役職にある訳でもありません。
「ガバナンス」という点では、足立さんにとって東京維新の活動は関係のない話だったはずです。
「だからと言って違法行為を見過ごす訳にはいかない」
「ボランティアが逮捕されたらどうするんだ」
ふむ、なるほど。だ・か・ら、SNSで発信したということであれば、それは党の意思決定にカウンターをかましているということであって、ガバナンスを崩しているのは足立議員ということになります。あ、感情的な方は落ち着いてくださいね。これが悪いことなんて言うつもりはありませんから。
足立議員の言葉をそのまま信じるならば、それは「ガバナンスより優先すべきもの=コンプライアンスの問題があった」と言うべきなのです。「ガバナンス」と「コンプライアンス」は別物ですから。
た・だ・し、です。
この方、本当にそこまで利他的な精神を持ち合わせているんですか?
それほど重大な問題であれば、それこそ上申書の提出やそれに準ずるやり方(党内でできるコミュニケーションツール)があったのではないですか?なぜ言論や手続きに拘る足立議員が、法に触れる(と足立議員が懸案する)事案についてはしかるべき手順を踏まずにSNSで発信したのでしょうか?
点と点を繋げると線が……
これはあくまで私の妄想でしかないことをお断りした上で。
足立議員と音喜多議員にはかねてから強い確執があった。面罵して直後にツイッターをブロックするほど足立議員は音喜多議員を憎んでいた。そして今、党紀委員会開催がほぼ確定している中で、「今回の騒動は音喜多の策謀である」と断定の口調で訴えている。
今回の話は、「適法性の懸念」とさえ言えば大っぴらに批判されることはない。もちろんSNSで発信するのも形式上問題なし。そしてSNSで発信したらどうなるか……。
おっと、考え過ぎかもしれません。いけない、いけない♪
しかし、どちらにせよ、私はこのような人物を一切信用しません。
政党オーナーは、えてして「誰のおかげで当選できたのか分かってるんか?」と公認権を盾に圧力をかけがち(前代表は、その傾向が強かった)ですが、政党助成を受けている政党は公党ですから、オーナーの持ちものではなく、党員ひいては国民の持ちものです。
「代表の奴隷じゃなくて国民の代表」 https://t.co/IxymvsuwzR
— 足立康史 衆議院議員 (@adachiyasushi) December 24, 2023
当時も批判しましたが、こんな匂わせ・チラ見せ発信のどこが「正々堂々」「言論尊重」「オープン」「維新らしく」なのでしょうか。支持者からはこれといった決定的情報は何も見えないまま「どうぞ訴えて下さい」とのこと。
惨敗した代表選の直後は松井さんを指して「晩節を汚した」などと言ってましたよね。選挙の後にこれを言う人のどこが「民主主義尊重」なのでしょうか。
「言うべきことは言う」のであればなぜ音喜多さんのことをブロックしたのでしょうか。「自分の言いたいことは言うけど、聞きたくないことは聞かない」からではないですか?
そして何度でも言いますが、「橋下さんがやめてくれてよかったと皆言っている」という発言を目にした時に「あ、この人まともではないんだ」と思うようになりました。
そもそも、息をするようにイタコ芸を使う人なんて信用できるわけがないんです。「励まし・称賛の声を多数頂いております」って、誰でも言えますからね。私もブログ書くたびにこのフレーズ入れようかと最近思ってます。そう言えば、比例枠返上発言の撤回の時もイタコ芸使ってましたね。「足立さんが名簿に入ってるから比例で投票したんだ、という声を多数いただき…」って、本当便利ですよね。
法やルールでどこまで“正義”は守られるか
教師「おい、机に脚を乗せるな!授業は始まってるんだぞ!」
生徒「オレ、血行悪いんでたまに脚の上げ下ろししないといけないんスよ。エコノミークラス症候群になったらセンセー責任取ってくれるんスか?www」
教師「だったら今噛んでるガムはなんだ!教室中に梅の匂いが蔓延してるじゃないか!」
生徒「今血糖値がヤバくて、ガム嚙んでないと意識飛んじゃうんスよねーwww」
教師「そうか、分かった。ならせめて私語は慎め。お前の自由は他人の勉強する権利を侵害しないところまでが範囲だ」
生徒「え、言論の自由を制限するんスか!教師のパワハラじゃないっスか!?www」
教師「キサマ、いい加減にしろよ!!」
生徒「あ、殴るんスか。どうぞどうぞwww」
教師、バシーーンッ!!!
さて、この教師と生徒のやり取りにおいて、悪いのは誰でしょうか。
残念ながら、形式上、そして法律上、教師が悪いことになります。
そして生徒の方が犯しているのは、「マナー」「エチケット」「礼節」であって、「法」ではないのですよ。教師はマナーを教え秩序を守ろうとしますが、その先で体罰と言う違法行為を犯すことになります。
そして生徒は騒ぐのです。「おい、皆見たかーー!今俺殴られたぞー!体罰加えられたぞーっ!動画撮ったかーっ!」と。さらに表向きには「個々の生徒が主体性を持ち、思ったことを何でも言える、それが我が校の校風であると校長も毎年仰っていて、私はその〇〇高校らしさを守りたかっただけです。私はどうなっても良い、私が守りたいのは〇〇高校なんです!!」などとやるわけですよ。
上申書の話題が出た際、私はツイキャスで「無理だろう」と言いました。上申書を書くにも書く内容がないと思ったからです。足立さんがやってきたこととは、まさに例に出した生徒のようなもので、例えば酒を飲んで暴れて暴言を吐くというような【分かりやすい悪いこと】ではないところが厄介なのです。
結果、上申書の噂は本当だったわけですが、そりゃ内容は情緒的になりますよ。本当ならここに積もり積もったものも列挙したいはずだったでしょうけど、そうなると「上申書」というより「資料」になってしまうでしょうからね。
実質的に、この機関紙騒動は最後の引き金でしかないわけですが、足立親衛隊はそこからは目を逸らし、あくまで「機関紙の適法性」を論点にしようとします。上の生徒の手口ですね。
すべてはこの一言で台無しに
しかししかし、そこは我らが足立康史大先生。
「元凶は音喜多さんひとりです」
とツイートして維新支持者を椅子からずっこけさせてくれました。
さらにご丁寧に、そのツイートを削除してしまうところまでやってくれて、もう完璧です。
足立氏はめちゃくちゃ頭が良いのに、それを制御する感情が未熟なんでしょうね。嘘がつけない人なんです。口の周りを真っ黒にしながら「ぼ、ぼく、チョコレートなんて食べてないよ!」という子供と同じ。
「維新の支持者から逮捕者を出したくない」と言う正義はどこへやら。
「いや、音喜多の振る舞いで逮捕者が出るかもしれなかったんだから、言ってることは間違いではない!」
と信者なら言うかもしれませんが、だったらツイ消しなんてする必要ありませんよね!?
ツイ消ししたのは、言っちゃいけないことを言っちゃったという自覚があったからでしょう?それが積もり積もった私怨によるものだったからでしょう?
もちろん、人の心の内側なんて知りようがありません。だから皆、その人の普段の言動から点どうしを結んで線を引いて判断するのです。そして、だからこそ、言動には規律が必要なんです。
議員も議員なら支持者も……
党紀委員会によって「議員資格停止6か月」の処分が決定された後、一部の支持者から「党紀委員会のメンバーを特定して落選運動を」というツイートが投稿され、まあある程度は予想できたものの、やはり衝撃でした。さらに驚いたのは、(当時まだいいねをした人が見れていたため)あんな人やこんな人までがこのツイートにいいねを付けていたことです。
言論で勝負できないから暴力に訴える。つまり、これはテロなんです。
足立康史議員は、維新の幹部から何か脅迫でも受けて不本意な形で日本維新の会に入党したのでしょうか?私が知る限りではそんな話を聞いたことがありません。普通に考えれば、純然たる自分の意志で維新に入党し、今も自分の意志で所属し続けているはずです。
入るのも自由なら出るのも自由。足立氏自身やそのファンが言うように、維新がめちゃくちゃな政党であるなら、自ら離党して別の政党に移籍するなり自分で政党を立ち上げるというのが筋なんです。(どちらが正しいかというレベルの話ではありません)
足立支持者ってこんな当たり前の筋すら理解できないお子ちゃまが中心となり、その後維新下げツイート(特に音喜多政調会長への執拗な誹謗中傷)を連発し、そこに大津ナニガシと一緒になって皆でいいねを付け合うというグロテスクな光景を見ることになりました。
ここから馬場維新の総括へ……
以上が当時書いた内容です。折を見て投稿しようと思っていたのですが、その「折」が今だったのです。
と言うのは、目下維新は斎藤知事騒動で揺れに揺れており、舵をどう回せば良いのか船長も分かっていない状態なので、馬場体制下の日本維新の会は総括が必要だろうと。それを語る上で、足立康史騒動は外せないのです。
ここから先、すでに何本かブログを投稿していますが、斎藤知事騒動を中心として維新がどうなっていくか、どうすべきかという見解を述べていきたいと思います。
では一旦失礼。
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