大阪府市の二重行政とは
大阪都構想についてですが、ツイッターで論争を眺めていると、どーも根本を分からずに喚いている輩が【複数】いるようです。
中央図書館が「ムダ」ってすごいな
都構想が実現すると「ムダ」の名のもとに、図書館はじめ、クレオ大阪とかいろんな施設が廃止されるみたいやな…
中央図書館、結構利用してるけど「ムダ」やったんや…
いやいや、都構想で住民サービス下がりまくりですやん!#都構想にもう一度NO pic.twitter.com/kLbNTvFzVN
— 三九郎 (@thankyou_oinari) September 30, 2020
これは反対派にありがちな短絡的批判の典型例ですが、私もコメントしています。
まずこのツイートへの直接的な回答としては、
「そやから二重行政や言うとるやんけ!」
となります。
都構想反対派は分かってて言っている
都構想推進派は、そんなこと一言も言ってないのに、「都構想推進派は図書館を減らせと言っている!」と言うことにしています。反対派の常套手段で、論点ずらし以前の問題です。これがRTされていくうちに「悪質なデマ」と進化していくのでしょう。
推進派の主張はあくまで「二重行政が無駄」であり、同じ数だけ図書館があったとしても、運営者がバラバラでは蔵書が重複したり、人事の融通が利かなかったり、会員の管理など事務が無暗に増えたりなど良いことがないだろってことです。
こんなの本人だって「問題はそこじゃない」と分かっていて書いているのですよ。彼らの目的は頭の弱い浮動票を自陣に引き入れることであって、その人たちに大阪都構想のネガティブなイメージを受け付けることさえできれば良く、議論する気などないのです。
本当に分からずに言ってる人もいる
そうは言いますが、図書館の機能は書籍の保管ばかりではないでしょう。
東京には国会図書館、都立図書館、区の中央図書館、区の地域図書館、大学の図書館などがありますが、無駄ではありません。連携も進みましたし。アクセスのし易さも大切。
— Joshua Martin🙆♀️🙆♂️ (@JoshuaM2063) October 1, 2020
この人多分、マジで言ってるんだと思います。
何がおかしいか分からない人は、このブログに辿り着いて幸運でしたね。
この人は大阪都構想に反対するのに東京都の例を挙げているのですが、
国 ー 東京都 - 23区
はひとつの統治系統で繋がっており、主従関係にあります。当然、現在の大阪府市のような二重行政は起こり得ません。
「ということは大阪も都にしましょうということですね!」とチャチャを入れたら、
無理やり曲解しないでください!
東京の図書館は主従関係で成り立っているのではなく、検索や取り寄せなどで連携できているということ。二重行政問題など存在しないし、中央図書館がムダと言うのは暴言。
— Joshua Martin🙆♀️🙆♂️ (@JoshuaM2063) October 1, 2020
「曲解」とのことです。
「二重行政など存在しない」はどこのことを言ってるのでしょうか?東京都の話なら当たり前だし、大阪府の話ならその根拠が必要でしょう。
さて、姉妹ブログの『犬小屋』の方でも、「主従関係」という言葉が大嫌いな【自称】トレーナーの話が度々出てきますが、この言葉ってよほど嫌われてるんですね。
東京の図書館が「主従関係で成り立ってるわけではない」のなら、この人もまた「それぞれの図書館は家族のような関係です」とでも言うのでしょうか?
各々の図書館はどういう意識を持っているか知りませんが、その運営者同士には主従関係があります。
こんな基本的なことも理解せずして大阪都構想の議論に参加する人がいるのには驚くばかりですが、どうやらこんな人は他にもたくさんいる様子で、さらに驚きます。
政令市には「生まれつきの持病」がある
ということで、大阪都構想の前提となる常識から説明。
我が国の統治体系はこういう概念図で描けます。国の下に都道府県があり、都道府県の下に市町村がある。皆さんお分かりですね。…って、分からない人がいるから問題なんですが。
で、この通常の統治体系である限り、そして同じ都道府県内に存在する限り、市町村から国までは1本の線で繋ぐことができます。厚木市のひとつ上位に神奈川県があり、神奈川県のひとつ上位には日本国政府があるという訳です。これはヒエラルキー(階層)構造であり、縦方向の繋がりは即ち主従関係となります。
この体系を崩すのが「政令指定都市」(以下、政令市)という制度で、近年問題になっている大阪市も政令市のひとつ。政令市とはどういう制度かというと、本来なら都道府県の下位にあるはずの市に都道府県とほぼ同格の自治権を与えてしまうというもの。着想としては、その方が都市が発展しやすいということだったのかもしれません。
こうなると問題が出てきます。
政令市の上位は都道府県をすっ飛ばして国と言うことになりますから、同じ空間内に統治系統が2つ存在するということになるわけです。それでも都道府県知事と政令市の市長に良識があって、息を合わせることができるなら大した問題は生じないのですが、大阪府市のような「府市合わせ」が起こると大変で、各々が10cmを競って大赤字の超高層ビルを建てたりするわけです。都構想反対派は住民投票にかかる10億円の費用を「無駄だー!」と言いますが、りんくうゲートタワービルとWTCの総事業費総計約1800億円さらにその維持費は誰が出してくれたんでしょうか?
「都構想」とは旧政令市を府の統治下に置くこと
この問題を解消すべく生まれた案が、「大阪都構想」です。
これは統治系統を元に戻して、かつ「市」という階層を廃止して、府の直轄地にしようというもの。何も新しい発想ではなく、東京都が大昔からやっていることを大阪でもやりましょうというだけのことです。
政令市は基本的に本来上位にあるはずの都道府県のことなど考えなくて良いのです。市の境から外のことはどうなろうが知ったこっちゃないわけですよ。これが普通の市なら、都道府県が統括しているので調整もできますが、政令市は独立性が高いためそれもできません。できるとしたら各自治体の良識に頼ることになり、例えば大阪市立図書館の利用は近隣の市民でも利用できるようになっています。が、さすがにそんなことをする理由はないと思いますが、その気になれば「大阪市民以外使うな」と言うこともできるんでしょうね。
大阪「都」なら大胆な都市発展が望める
そういうミクロなことはちょっと置いといて、大事なのは都市計画です。ある都市を発展させようと思うなら、その周辺と協調する必要があります。反発するとさっきのビルのようになり、税金をドブに捨てるようなことになるからです。例えば、大阪市のように、すでに大都市になってしまっている都市において「県道」と「市道」を区別することが有意義なことかどうか。同じようなビル、同じような学校、同じような病院を建てる必要があるかどうか。この辺の調整も、都道府県が統括できる立場にないため、政令市は好き勝手にできてしまうことになるわけです。
それでも政令市のより大きな発展のためには都道府県あるいは他市との協調が必要なことは、為政者たちも分かっているはず。だったら、普通は協力し合って政治を行うはずですね。ところがところが、為政者が保身や利権のために動き始めたら…?市がどうなろうと府がどうなろうと知ったこっちゃない。俺は今市議会議員なのに、市をぶっ壊せとは何たることか!なんて議員はいないでしょうか?今市と恒常的なビジネス関係を築いている業者は、統治体系を再編されるとその利権の構造もリセットされることになります。都構想を強く反対している「知識人」の中に特定の土木業者と繋がってる人は…?
…とボカして書いていますが、現役市議の中には「都になったら君らの天下り先もなくなるぞ」と議会でハッキリ言っちゃうツワモノもいましたね(笑)
ともあれ、大阪市とそれ以外の市を大阪府が統治することによって都市の効率化、および大胆な都市発展計画ができるようになります。今までの府市はいわゆる「府市合わせ」で「船頭多くして船山に上る」でしたが、頭脳が一つになることによって大阪府全体が包括的に政治運営できるようになります。
大阪市を複数の「普通の市」にしたら…?
さて、もう一つの発想として、政令市を解体して複数の「普通の市」にしようという考え方だってありそうなものです。が、私は聞いたことがありませんし、やるべきでもないでしょう。これをやると、統治体系はスッキリしますが、自治権を分割してしまうとせっかく大きくなった都市もそこからは成長しなくなる可能性があります。知事の言うことを聞いてくれれば良いのですが、個々の市長が違う人格とそれなりの予算を持っている限り、まずそんなことはないでしょう。
ということは、やはり都道府県直轄の「特別区」にしてしまうことがベストなのですよ。
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