首相が産休!?
ちょっと前、ニュージーランドの首相が産休を取ったことが大きな話題になりました。割合としてどれほどかは分かりませんが、お決まりの「日本も見習うべき!」みたいな声もそっち方面から上がりました。
いやいや、そりゃニュージーランドはやって頂いて結構。総人口が兵庫県以下の国家なんですから、好きにすりゃいいんです。人口、経済規模、国際情勢上の立場、何もかもが違う日本に当てはめちゃいかんのですよ。
戦争が起きたとしても「ちょっと産休取らせて頂きます」って言えるかって話です。その時の代理を副総理がやるのか官房長官がやるのかは知りませんが、その人ができるなら最初からその人が総理大臣をやっときゃよかったってことですね。産休が明けて元の首相に戻るとしたら、名目上、その産休の間は「ベストの状態ではなかった」ことを認めることになります。
で、このことは「ここが男女平等の限界なのだ」って話になるかどうかなんですが、そうだと言えばそうだしそうじゃないと言えばそうじゃない話です。
というのも、いまだ日本では女性の総理大臣は生まれていませんが、男性と言ってもその就任時は、ほぼ全員女性で言えば妊娠不可能な年齢ですよ。つまり、同じような年齢であれば、たとえ女性が総理に就任したとしても、妊娠・出産の心配など最初からないわけです。
「男女平等の限界」という話は、30代40代での総理就任ってことになりますが、あっても極めて稀な話になりますね。
だったらヒラの議員であれば産休はOK?
わざわざ禁止にしろとは言いませんし、したくても人権の問題でできませんが、ヒラであっても妊娠出産の可能性のある人が議員になることは決して好ましいことではないと思います。そもそも国会議員は、国民の付託を受けて選出された代表者であり、極めて特別な職業です。一般人なら同じ会社に40年務める人もたくさんいますが、国会議員は長くても4年または6年と限られたもの。その期間中に6週間取るとしたら、あまりに長いし、これより短くしたら産休としては厳しいものがあります。
さらにデリケートな話まで掘り下げると、妊娠・出産は大事業であり、女性の体に大きな変革と負担がもたらされます。ただでさえ1か月周期でホルモンバランスに波があるのに、妊娠・出産となるとさらにそれを上回るほどの大波が来るわけですよ。……と書いてる私は男ですけど。
すると出産前後にいわゆる「マタニティーブルー」や「産後うつ」といった精神的なダメージに煩わされる女性が結構いるわけですね。そこまで重い症状ではなくても、精神状態がいつもと違うという人を含めたらかなりの割合に上るでしょう。人生で最も精神的に不安定になりやすいタイミングで、わざわざ国民あるいは地域住民の代表にならなければいけない理由があるのか?という疑問を私は持ってしまうのです。
赤ちゃん連れの議会出席の是非
産休の話とは少し違いますが、2017年に熊本市議会で議員の赤ちゃん同伴をめぐって騒動が起こりました。最初に私の結論を言っておくと、赤ちゃんを連れての議会参加は反対なんです。しかしですね、この時の反対派おじさん議員の1人が「議会は神聖な場」みたいなことを言ってたと記憶してるんですよ。いやいや、赤ちゃんは汚れてるとでも言うのか、と。私が反対するのは、単純に議会進行の邪魔になるからであって、「議場が神聖だから」ということとは全く違います。
地方議員で議員は議員。小さな子供を持つママが務めるのは好ましくないと私は思います。思うのですが、だからと言って法律で禁止になんてできません。となるとそういう議員が表れて当然でして、だったらそれはそれである程度制度を整えてあげるべきだとも思うんですよ。と言っても大仰なものは必要ありません。市議会なら6畳くらいのスペースがあれば十分でしょう。そこに訪問ベビーシッターを呼んで世話してもらう。ベビーシッターの費用は議会負担でも良いでしょう。
議会を守るという意味でも、認めるならそこまでやる必要があると思います。
というわけで小泉進次郎の「育休」
賛否両論巻き起こった小泉進次郎環境大臣の「育休」。これも反対。
まず先述の通り、国会議員はそんな理由で休暇を取るべきではないということ。さらに小泉氏は環境大臣という、一省庁のトップです。
そもそも育児休暇として通算2週間ほどの休暇をもらって、一体何ができるんでしょうか。途中は子供をコールドスリープでもさせておくとか?実質的な意味がないんですよ。
この点については本人も何となくは語っていて、閣僚が実践することで一般に育休の文化が広まってくりゃ良いってことなんでしょうけど、だったらそれは基本的にサラリーマンである環境省の役人達に取らせるべきであって、大臣と言う職に就いた人間がやるべきことかと。八百屋や散髪屋の店主に育休も産休もないのに、なんで大臣が育休なんて取ってんだ、と。
「私は国会議員かつ国務大臣という特殊な立場上育休は取らないが、環境省の職員には最低2カ月の育休を取らせることを義務付ける」なんてことを実践し、国民にアナウンスすれば良いではないですか。被雇用者にこそ必要な休暇制度なのですから。
とは言え、小泉進次郎は自民党ヤング部門のマスコット。まるっきり純粋な自分の意思では動くこともできないということも想像できます。ポンコツぶりが目立つ彼はまだ30代の若さ。好きではありませんが、あまりネガティブな偏見も持たないよう見守りたいと思います。好きじゃないですけどね。
そもそも育児には何が必要なのか
さて、そもそも育児になぜ父親の休暇が必要なのでしょうか。育休って実は得する人があまりいないんですよ。育休を取る男性は、仕事が寸断されてしまい、効率が悪くなります。会社側は貴重な戦力が削がれることになります。
じゃあ母親はどうかというと、いろんな人がいるとは思いますが、中には「子供がひとり増えるだけ。男は稼いで来い」という声をあげる現役ママもいます。
いや、その前に育児休暇中の給料って法的な規制がないはずなんですよね。つまり、育児のための長期休暇を認めるにしても、給料を全額支給するのか50%にするのか0にしてしまうのかは会社次第ってことです。庶民にとっては何よりまず先立つものが優先ですから、制度的に人によって事情が変わってくる話を一般論化するのはなかなか難しいものがあります。国や自治体が何とかせんといかんでしょう。
仮に旦那が育休取ってくれて助かるという人がいたとしてもですね、「育休の代わりに育児手当を出してあげる」と言えばどうでしょうか。3歳未満の子がいれば国から毎月15000円の児童手当が出ることになっていますが、「夫がそのまま働くならさらに会社から15000円増額して合計3万円、6カ月間支給しますよ」って言われたらどうでしょうか。「いいから稼いで来い」というママがほとんどのような気がします。
まとめ
男性の「育休」は理念としても制度としてもまだまだボンヤリしたもの。私個人としては、夫が休暇を取ることより、ママが育児に専念できるよう国や自治体が経済面でサポートしてあげる方がよほど社会全体のためになるのではないかと思っています。と言ってもこれはあくまで夫が所得の主たる担い手という平均的家族を前提にしていますから、そうでない限りはまた考える必要があると思いますが。
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