日産プロパイロット1.0の不満点と今後の自動運転の話

技術・産業

セレナe-powerのオーナーになって3ヶ月ちょい。

プロパイロット1.0(セミ自動運転?)を備えたシリーズハイブリッドであるセレナe-powerの個人的評価はかなり高いものです。動力性能、居住空間、燃費、運転支援、これらを非常にバランスよく組み合わせており、これでこの価格で収まっているのかと改めて驚かされます。

 

さて、日産の運転支援技術であるプロパイロットについて、ちょっと掘り下げてみます。

まずセレナe-powerに乗ってみての運転支援機能の不満点を改めて。

 

加速・減速が雑

高速道路なんかで流れに乗っている時などは人間が運転するのと全く同じと言って良いほどのアクセルワークで乗り心地も良いのですが、前に車がない時にプロパイロットをその時点の速度よりも高い速度に設定すると、セレナはむきになってアクセルを踏み込みます。いや、まあそれで困ることはないのですが、アクセル全開にしたい時であれば自分で踏み込みますから、アンタはそんなに必死にならんでもええよ、と。問題なのは前に停車している車があった時。むきになってアクセル踏んでいたかと思ったら、一定範囲内に停車する先行車を発見したら今度は急ブレーキを踏むのです。これ、かなり怖いです。

そこから派生する問題として、一般道におけるプロパイロットの出番がかなり少なくなるっちゅーのがあります。そもそも日産が一般道でのプロパイロットの使用を想定しているのかどうかは知りませんが、実は私結構使ってるんですよ。皆、プロパイロット=高速という思い込みがあるかもしれませんが、積極的にプロパイロットに慣れておくと、一般道でもナチュラルに操作できて、運転がかなり楽になるんですよね。特に広くて信号にかかりにくい国道なんかだと効果絶大です。なので、この加速・減速が雑というのは「ああ、今一歩……」と思えてしまうケースが多々あって残念なところです。

急カーブに対応できず

プロパイロット1.0はハンドル支援もしてくれますから、カーブでも自然に車線内を維持してくれます。が、それはある程度までのカーブという前提です。ある程度の曲率半径を下回ると、急ハンドルどころか、車線からはみ出ちゃう!と警告を発してくるのです。いや、分かってるなら減速してくれよ、と。

新型ノートに搭載されたプロパイロット1.0(1.0+とでも呼ぶべきでしょうか)やスカイライン搭載のプロパイロット2.0だと減速して対応してくれるようです。

 

3秒停止でプロパイロット解除

プロパイロットによる自動停止後、3秒経つとプロパイロットは「待機」状態になり、RESスイッチを押すかアクセルを踏むことによって再始動します。まあ、大した手間じゃないと言えばそうなんですが、割とイライラします。そしてどういうわけか新型ノートはこの停車時間が30秒に設定されているんだとか。いやいや、じゃあ3秒ルールってどういう根拠だったの??

 

え?プロパイロットってアップデートしないの?

日産ディーラーに聞いてみたところ、セレナならセレナでそのプロパイロットのアルゴリズムは終生アップデートされないとのこと。つまり、今私が持っている不満はセレナに乗っている限り解消されないということです。

これは実に勿体ない話。プロパイロットを動かしているのはコンピュータで、その中にソフトウェア(プログラム)が書き込まれているわけですよ。で、今回提示した問題は、そのプログラムのうち、ほんの数行をチョチョチョイと書き換えてしまえば改善できてしまうレベルの話なんです。これが例えばセンサーの感度に依存する問題であれば、それはすなわち「ハードウェアの問題」なので、機器を取り替えない限り改善もできないのですが、ソフトウェア上の問題はWi-Fiに繋げてアップデートするだけで改善できるのですから、それをしないというのが勿体ないんです。

日産は国内でこそ最先端にいますが、世界と言う舞台ではテスラは何歩も先を進んでいて、そのテスラの自動運転対応車は「随時アップデート」するんですよ。つまり、同じ車でも1年後3年後10年後にどんどん賢くなっていく。

この辺が日本と海外の大きな違いでしょうね。

 

「急カーブ」を自分で判断できない?

ところで、カーブに差し掛かると減速するという機能はノートやスカイラインには搭載されているわけですが、これのメカニズムはどういうものかというと、高精度の3Dマップを読み込んで、それに従って適正な速度を決めているんですね。

これは私が思っていたよりはるかに力技です。だってですね、我々はそのカーブを「減速が必要」と判断する時に地図なんて見ますか?違いますね。運転してて前を見てたら自然に急カーブだと分かるから減速するんです。

それをコンピュータにやらせるだけで良いんですよ。これ、今の映像解析技術で十分できるはずですよ。

 

自動運転技術は今後どうなるか

テスラはすでに、実験レベルで街中の完全自動運転を実現しています。と聞くと、じゃあもうできてるってこと?と思っちゃいますが、2021年3月時点でテスラ社は、「FSD(テスラの自動運転ソフトウェア)はまだ完全自動運転には対応できず、レベル2(部分自動運転)にとどまる」という旨を明言しています。

この動画を観てみると、一見完全自動運転ができてそうに見えますが、よく見てみると、教習者が走るような分かりやすい道路しか選んで走っていないのです。「完全自動運転」とはどういうことかというと、完全に人間の代わりに運転してくれるということであって、例えばどう考えてもすれ違うことが無理な「酷道」とか、東京や大阪などの都市部にありがちなどの信号を見てどの車線に従えばいいのかも分からない複雑な五差路とかを自分で判断して走ることができて初めて「完全自動運転」なのです。それを考えたら、目指しているゴールはまだまだはるか先にあることが分かります。

 

んでですね、随分前にも書いたんですが、自動運転に必要な要件は以下の2つだと思うんです。

(1)完全自立運転は諦めるべき

(2)自動運転車が走れるコースは予め決めておき、それを拡張していくべき

(1)について。辛坊治郎氏なんかは、「自動運転は自律式を目指すべきで、そうでない限り日本はどんどん置いていかれる」という旨の発言をしていましたが、これは度合いの問題です。私から言わせれば「完全な自動運転」は、目指すだけ無駄。

例えばこのニュース。なんか自動運転が物凄く進歩したような錯覚を覚えてしまいますが、この「自動運転車」、道路に埋め込まれた電磁誘導線の上を走ってるだけなんです。つまり、車掌の乗っていないチンチン電車に過ぎません。こういうのを指して「いや、自律運転せんかい!」と言うのであれば私も共感します。こんなの自動運転でも何でもありませんからね。

先述の急カーブ問題も同様。そのくらいは自律でやってくれよ案件です。

 

自動運転の限界点

で、限界(実現するにしても自律型だと労力が大きすぎる)だと思われるのが複雑な交差点や、すれ違えない狭い道、物理的な制限のある急勾配などです。

「複雑な交差点」はやろうと思えばできるでしょうが、目下、急カーブすら自分の目で判断できないAIにそれを判断させるというのは実に心もとない話です。であれば、車に通信機能を備えて、交差点にもセンサーと通信機を合わせた装置を置いて「見えないお巡りさん」とし、その指示に従って走行できれば確度の高い安全性が実現できます。

何より、通信機能によって周囲からの補助情報を得ることができれば、複雑な交差点に限らず、今の人間以上の安全が実に簡単に実現できるのですよ。人間であれば運転する際に頼る情報のほとんどが視覚であり、信号も視覚情報のひとつに過ぎません。いくら道交法を順守して運転していても、赤信号を無視する車や道路に飛び出してくる子供に対応するには限界があります。ところがもし交差点や危険地帯にセンサーを置いておけば、人間の目には見えない危険を察知して信号を送ってくれ、車が自動的に減速・停止することもできるのです。さらに、道路を走る車の全てが一定基準の自動運転に対応するとすれば、車用の視覚信号は日本から完全撤去できてしまうことになります。

 

自動運転車のコンピュータ同士が「交渉」する?

大阪府と奈良県の境にある暗峠はいわゆる「酷道」として有名で、一歩足を踏み外せば崖、道交法上対面通行が可能なのに物理的にはすれ違うことができないというむちゃくちゃな道路です。さて、これをどうやって自律型自動運転はやり過ごせるでしょうか?と考えた場合に、それこそ世の中に人間と見分けがつかないくらい高レベルなロボットが普通にいるような世界の一歩手前くらいまで進化しないと無理なはずなんですよ。

となると解決法はやはり先述の2つ、つまり「通信機能を使う」か「そもそも自動運転走行禁止にする」しかないのです。

すれ違えない道路を双方が通信機能を持つ自動運転車が鉢合わせた場合、物凄く楽です。ピアツーピア通信で「交渉」し、両車両がすれ違う幅に到達するまで同調運転するわけです。もちろん片方はバック。広い幅にまで来たらそこですれ違い完了。面倒なのは片方が人間だった場合。人間は電波の読み書きができませんから、何かしらの形で交渉手順あるいは自動運転プログラムの操作方法を決めておかないといけなくなりますね。

 

規制こそ近道である

さて、テスラの自動運転のレベルを見る限り、それほど極端に複雑な状況でなければ完全自動運転も近い将来可能になるものと思われます。つまり、自動運転車が走行できるルートは限定しておき、技術の進歩や環境整備の度合いによってそれを拡大していくのが最も早道だろうと。その前提さえあれば、10年以内に無人タクシーなんてのも十分実現可能だと思われます。

 

自動運転技術の発展にも接待が必要?

おまけ。昔から自動運転に造詣の深い辛坊さんがよく口にしていた話。

日本のメーカーはかつて自動運転においてもトップレベルの技術を持っていたが、国交省がそれを許してこなかったと。しかも明確にコレは良いとかアレはダメとかって言うんじゃなくて、「良いと思っているのか!」と迫るらしい。「え、ダメなんですか?」と聞き返すと「そうじゃなくて、良いと思ってるのか!!」とさらに迫ってきて、結果メーカーは委縮。最近、官僚の接待問題が取り沙汰されましたが、そういう時に接待は使うんだって……。ダメだこりゃ。

 

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