コロナで変わってほしいもの
このコロナ禍で、いろんなものをリモート化、あるいはデジタル化しようとする動きがあります。
とは言え、実際にはコロナ禍が明けたら元に戻っちゃうってケースは相当にあって、例えば今リモート勤務している人たちが、コロナが明けても皆が皆そのままリモート勤務を続けるということはちっと考えづらいんですよね。
コロナが明けたら、
完全に元に戻るって人
パーシャルリモートになる人(週3勤務+週2リモートとか)
ほぼ完全にリモートになる人
と大きく3パターンくらいに分けられて、「ほぼ完全にリモートになる人」というのはごく僅かでしょう。
ともあれ、ベクトルはリモートに向かっていて、これ自体は喜ばしいことです。
企業の中には、都心部の社屋以外に、郊外にいわゆる「サテライトオフィス」を設置するところも増えているとか。スタバに行ってノートパソコン叩くような気軽な感覚になるわけですね。
この動きが本格化すれば、東京一極集中が緩和されることになります。大都市の地価が下がり、その分郊外の地価が少しあがるかもしれません。
「それでも東京一極集中はなくならない」と予想する識者も根強くいますが、一極集中は避ける「べき」なので、この動きを支援する方が良いと思うんですよ。
ほんと、東京になんかあったら日本全体終わっちゃいますから。
コロナで変わるべきは医療
さて、以上は一般的なお仕事の話。コロナで最も変革されるべきは医療でしょう。
このコロナ禍では、これまで聞いたことのなかった「医療崩壊」という言葉を何度聞いたか分かりません。しかし、この言葉自体を聞いたことがなくても、「医療サービスの需要が供給を超える」という概念自体は皆うっすら頭にあったわけで、今ほど注目されていなかったにしても、医療は改革されるべきという意見はずっとあったのですよ。
当ブログでもかつて、「AIによる医療」が話題になりつつあった時に、「その前に基本的な改革をいつするんだ」という趣旨で記事を書いたことがあります。というか、今書いてるこの記事は、その上書きなんですが…。
例えば、人間の医師が見たら小さな異変を見逃してしまうようなレントゲン写真もAIに見せたら見抜いてしまうとか、ゴッドハンドの手さばきを学習したAIが超一流の手術で脳や心臓の手術をしてしまうとか。ちょっと前までなら夢のような話ですが、現在では十分技術として確立できるものです。しかし、もっともっと根本的な問題は、肝心の医師が変革を望んでいないようである、ということです。
お薬手帳っている?レントゲン写真を患者が持ち歩くの?
例えば、通院・入院している病院を移る際、ついこの間まで紹介状とレントゲン写真を患者本人が持参してたわけでしょ?いや、今でもやってるのかな。
少なくともうちの近くの病院では写真を共有できるシステムができたのがかなり最近の話です。これ、20年前でも十分できたはずの技術ですよ。
薬局に行けばいちいち、
「お薬手帳お持ちですか?あれば40円割引が…」
なんて言われます。
おい待て。
そのお薬手帳、持ち歩いたとして、無くしたらどうするんよ?処方履歴が全てそこにしかなかったら、あの小さい手帳失くしただけで何飲んでたか分からなくなるの?オイラは良いよ。今飲んでる数種類の薬は全部頭の中に入ってるから。でも、頭が傷み始めてる老人は?
それと患者が小さな子供である場合、ほとんどの自治体で乳幼児医療費の助成があり、診察の際に受給者証の提示を求められると思います。これ、どう考えたって保険証ひとつで済みますよね?その患者が市民であるかどうかなんて保険証見れば分かりますよね?
保険証でもマイナンバーカードでもなんでも良いからID認証して、コンピュータのデータベースに入れりゃええやないの!お上は「住基カード」みたいな何の役にも立たないものにはとてつもない巨額な予算使うくせに、間違いなく役に立つシステムには金を使わないのですよ。
これ、政治や行政が、「国民のため」ではなく、「特定の利権勢力のため」に動いてるからです。
まずは総合診療
もうちょいだけAI寄りの話をしましょう。
過去の記事でも書きましたが、体の調子が悪くて病院にかかりたい時、何が困るかというと、どの規模の病院の何科に行けば良いのか分からないということです。あなた今、大きく頷きましたよね?
「胸が痛い」と言っても、心臓かもしれないし、食道かもしれない。肋間神経痛なら整形外科だろうし、ストレスによるものなら心療内科かもしれません。
私の実例で言えば、日常生活に支障をきたすほどの倦怠感と頻脈、めまい、異常な暑がり、これらの症状から「自律神経をやられたらしい」と非常に権威ある大学病院の精神科に行ったところ、通院の度に薬を増やされるのですが、症状は悪化するばかり。これを歩いて3分の町医者に見せたら1分かからず「甲状腺ですね」と診断されました。検査の結果、「バセドウ病」と確定。大学病院では血圧を計測されることもなく、聴診器すら当てられることもなく、何ヶ月もの誤診によって、いたずらに体にダメージを与えられ続けたわけですよ。
んで、改めて調べてみたら、それを知ってさえいればどんな素人でも分かる症状でした。(まあ、それまで自分で調べようとしなかったのも悪かったんですけどね)
これですね、医療版の「20の扉」みたいなのがあれば、おそらく半分以上は総合診療の代わりになるんじゃないかと思うんです。要するに、今どこでもやってる「問診票」をコンピュータにやらせることによって、必要な情報だけ取り出し、何科に行けば良いかを教えてくれる、というもの。
これ、AIなんていう高度なレベルの話ではありません。コンピュータが普及するずっと前からできたはずだし、コンピュータやスマホがあればもっと簡単に誰もができるシステムですし、近ごろ毎日のように耳にする「オンライン診療」の第一歩でもあります。
医師会はこんな努力もせずに「あー、忙し忙し。あー、いくらいても医者は足りない」と自らの値打ちを釣り上げてるわけですよ。何より、そんなシステムが出来てしまったら、町医者の「紹介料」収入がなくなっちゃいますからね。
AIにはまず医療そのものより、ダメな病院、ポンコツ医師、そして既得権益を駆逐する判断を担ってもらいましょう。
改革を邪魔するのは医師会の利権?
大病院というのは民営・公営に関わらず、大きな補助金が入ってるので、医師や経営者は一般企業に比べたらはるかに公務員的な意識を持っているものと思われます。
一般企業にとって「儲ける」ということは、「コストを下げて売り上げを上げる」ということに他なりません。だから、売り上げを上げるべく、あるいはコストを下げるべく、業務を効率化しようという改革意識が作用します。
一方、半分行政である病院は、法律やらなんやらかんやらに守られていて、改革せずとも自分の身を守れます。客である患者は増えるばかりだし、供給するサービスである医療行為につけられるお値段は言い値です。少々お高くても、どっちみち国民が負担するのは1~3割。残りは保険料と税金から賄われます。国民皆保険制度は世界に誇るべき医療制度であることに間違いはないのですが、同時に、病院の経営努力のモチベーションを下げる要因でもあります。
3時間以上待たせて診察1分半、なんて言う県立医大病院もあります(先述の藪医者の病院がこれでした)。患者をいくら待たせても医師に苦痛はありませんからね。予約制度なんて病院側の負担が大きくなるだけで得はありません。一般企業ならこれで客が減ることがあっても、権威ある医大病院となれば「客」はいくらでも来ます。
同一県の県立病院でもちゃんとしてるところはしていて、科こそ違うものの、診察予定時間が5分とずれない完ぺきな予約制度を敷いているところもあります。やろうと思えばかなり簡単にできるわけです。患者側の目線にさえ立てば、です。
それでもやっぱりそういう改革のインセンティブはなかなか作ることができません。それどころか、役所気質である病院は、役所がそうであるように、無駄な仕事を増やしまくって事業規模をむやみに大きく維持して補助金をせびるわけです。競合相手を増やさないように、大学の医学部設立にも反対します。
おや?ここに映っているのは、最近コロナでテレビに出ずっぱりの釜萢敏先生ではありませんか!
「医療の質が下がるから医学部新設に反対」?
そうですか。ではやるべきことはやってくれるってことですね?
「おくすり手帳」なんてなくしてくれるんですね?
オンライン診療や総合診療を増やしてくれるんですね?
「紹介料」というまったく意味の分からない因習を捨ててくれるんですね?
たまたま医学部に入れるほどの金持ちの家に生まれて、インターン引き連れて、パソコンの前から一歩も動かず、脈や血圧どころか、患者と目すら合わせないまま王様気分で仕事をし、何か月も誤診を続けるようなバカ貴族医師を駆逐してくれるんですね?
ついでに裁判所
遅れていると言えば、日本の裁判所もそうでして、最近司法のお世話になった人ならみんなご存知かと思うんですが、裁判所ってメール使わないんですよ。基本的に、電話とファックスだけ。今ファックス使ってるのって日本くらいらしいです。もう笑い話のネタですよ。
弁護士とはメールでやり取りできても、裁判所との連絡には直接電話するか、紙に書いてファックスするしかないんです。国民1人1台スマホ持ってるこの時代に、ですよ。
これまた「改革を起こすインセンティブのない」お役所意識の典型ですね。
さすがは「ハンコ文化を守る議員連盟」の会長がIT担当大臣を務める国です。
日本人の価値観が改革を遅らせる?
学校に目を移してみると、
重いランドセルにその日の教材を全部詰め込んで運ばせる(置き勉禁止)
学校を休む場合は電話ではなく連絡帳を友達に頼む
どう考えてもパートに出て給料稼いで寄付した方が安くつくベルマーク
等々、非合理的な因習のオンパレードです。
日本人は、手間や時間をかけたり、苦痛を覚えることに価値観を見出してしまう民族なのですよ。
つまり、改革を遅らせるのは何も利権の問題だけではなく、日本人が元々持つ文化が原因であったりするのです。
合理的な理由はどこにもないけど「今までそうしてきたから」「皆そうしてるから」を根拠に「これからもそうしろ」「お前らもそうしろ」を押し付ける文化でもあるのです。
ファックスやハンコ文化が残っているという事実は外国人を驚かせますが、これは別の側面から見ると、日本がそれだけ豊かで平和だったからとも言えます。
奇しくも今般のコロナ騒動でマイナンバーが注目されましたが、日本でマイナンバーカードが普及しないのは、個人のプライバシーが尊重され、それを声高に叫ぶほどの余裕があるからです。完全に普及している韓国と比較されがちですが、韓国は目下戦争中であるという事実はなかなか語られません。
これを良く見るか悪く見るかは視点次第ですが、少なくとも変えて幸福になる人が多くなる因習は変えていくべきでしょう。
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