最近またにわかに少子化対策の議論が活発になってきました。
きっかけは言うまでもなく岸田首相の「異次元の少子化対策」という妄……いや、発言です。普通の次元で良いからとっととまともな少子化対策やれよと思うのですが。
ま、そりゃ良いとして、ツイッターあるいはスペースでも少子化についての議論は活発なんですが、私の視点からすると今一つ論点がおかしいと思わざるを得ません。
結婚しないから子供ができない?
よく聞かれる理論に、
「結婚している女性に限って見ると、出生率は2近くある」
だから
「婚姻率を上げれば出生数は増える」
というもの。
しかし、私にはこの【だから】の意味がよく分からないのです。この理論の前提には、「結婚するから子供ができる」という因果関係があると思われますが、果たしてその因果関係は正しいのかという疑問があります。
そうではなくて、子供がほしい、あるいは子供が出来ても良いという共通認識を持つカップルが結婚しているのではないの?と。つまり、因果関係が逆のケースも相当割合であるだろう、いや、むしろそちらの方が主ではないの?と。
子供を作ったカップル(平たく言えば「夫婦」)は、「事故による責任」という例外も一部にあろうにせよ、そのほとんどは望んで子供を設けたはず。ということは、当たり前ですが、子供が好きなんですよ。家庭に子供がいても苦痛にならないカップルが結婚しているというケースが大多数なのではないかと思います。
実は皆「もう1人」欲しい
私は、それよりも今すでに子供がいるが「もう1人欲しい」という夫婦は結構いるはずだから、そういう夫婦に支援した方が確実に子供が増えると主張してきました。
そして私の経験から言っても、そして私の周りの夫婦の意識調査から言っても、「もう1人いても良かった」という夫婦は結構いるのです。
これまではあくまで私の観察と感覚だけで話していましたが、改めてデータを見てみましょう。
このサイトによると「子供がいるけど本当はもう1人ほしかった母親」という統計があります。この統計によると、「すでに子供はいるけど希望人数より少なかった」という母親の割合は、実に6割を超えています。子持ち夫婦のうち、6割以上が「あと1人ほしかった」となるわけです。
で、あと1人作れなかった理由としては、「経済的な理由」が28.9%、「仕事・育児支援の問題」が6.3%、この2つを合わせると35%を超えます。後者も概ねお金の問題でしょうから、とりあえず一緒にして考えるとして、少なくとも、
「子持ち夫婦の3割はお金の問題さえクリアできればあと1人子供を作っていた」
と言って良いでしょう。
これを行政の力で何とかするとしますと、あら不思議、単純計算で年間出生数は100万人を超え、出生率は1.7にまで回復することになるんです。
出産の障害になるのはお金!
その時に障害になるのは何かと言うと、お金。
なんせ1人子供を作って大学を卒業させようと思ったら2000万円かかると言われてるのに、平均的なサラリーマンカップルがポコポコ産めるはずもありません。
お金がかかるだけではありません。妊娠・出産・子育てに際し、母親の方は期間の長短に差はあれど、その間社会で働くことができません。そして多くの場合、キャリアが寸断されることになります。
つまり、子供を作ればすごくお金がかかるのに収入は減ってしまうという多重の経済苦に苛まれることになるのです。
N分N乗方式ってどうなのよ?
さて、そうなると、「で、具体的にどのようにお金の支援をするの?」って話になります。
そこで出てくるのが所謂「N分N乗方式」。最近突然この言葉が聞かれるようになりましたが、これはフランスが実施している税制の話です。要するに、所得税を個人単位ではなく、世帯単位で課税するというもの。一旦その世帯の収入を合計し、それを家族の頭数で割った額に対して累進性による課税割合が決まるというやり方なので、子供が増えれば増えるほど税金が安くなるという仕組みです。
はい。
えーっと。
日本でもやった方が良いと思います。
やれるものなら、ですが。
たしかにフランスは一時は2を超えるほど出生率を回復させましたが、そもそもフランスは少子化と言っても日本の1.3前後のような深刻な事態に陥ったことは一度もないんですよね。おそらくそれは古くからN分N乗方式を採っていたからだと思います。それでも出生率1.6台にまで落ち込んだ際にフランス政府は動き、その他の育児支援政策を実施しました。例えば、公立であれば大学もほぼ無償という具合に。細かいことは存じ上げませんが、特にシングルマザーが産みやすい土台を作り上げたんだとか。
なので、つい最近N分N乗方式によって出生率を急回復させたというわけではないんですよね。
後半(日本はどうすればいい?)へ続く。
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