【初公開日2018年4月3日】
AIは人間を超えられないという希望的観測
先日の『そこまで言って委員会』を観ていたら、何かいまだにAI(人工知能)と言うものが正しく認識されていないのではないかという印象を受けました。
いわく、
「AIはゼロからは何も生み出せない。クリエイティブなことができない」
とのことだったんですが、どのレベルでの話ですかね。その中でも囲碁・将棋のアルゴリズムの話が出てきてたんですが、竹田恒泰だったかが、とにかくたくさんのパターン(定石)を蓄積させてるだけだとかなんとか。
それ、違いますから!
そもそもAIは人間をお手本になどしていない
今のAIの囲碁・将棋がすごいのは、AIプログラムに囲碁・将棋の【ルールだけ】を教えて、打ち方なんかは教えてないんですよね。そのルールしか知らない全くアホなAI同士で対局させる。打ち方知らなくてもルールだけは分かるから、勝敗はつきます。
で、一局終わるたびに「どうやって勝ったか」「どうやって負けたか」を記録していくんです。もちろん最初の方は、ルール違反をしないというだけで、全くデタラメな打ち筋でしょう。ところがこれを何万局と繰り返すうちに精度はとてつもなく上がっていくわけです。
これを1~2か月続けているだけで、人間のプロに勝ってしまうようになっちゃったわけですよ。
囲碁なんて2000年以上の歴史があると言われていて、その2000年の間に人間の優れた知能により、定石を作り上げてきたわけですが、AIは2か月足らずで人間の2000年の知の蓄積を超えてしまったわけです。スッカラカンの状態から、ですよ。
追記:この間NHKのAI特番見てたら、2ヶ月どころか3日って話でした。
しかも、愚かな人間の打ち方など全く参考にせず、です。
誰も正確な科学の進歩を予想できない
前世紀、
「30年もたてばこの世からガンを初めあらゆる病気は克服でき、ビルとビルの間を変なパイプみたいなのを通って移動し、デロリアンは空を飛んでいるはず」
みたいなことをボンヤリ思っていました。単なるSFの話ではなく、それはある程度現実のものだと多くの人は思っていたはずなんです。
ところが、自動車は一部電気で走るようにはなったものの相変わらずガソリンを入れて地べたを這いつくばっていますし、ガンは増える一方。明らかに変わったのは、携帯電話とウォシュレットの普及くらいでしょうか。
プロの棋士へのインタビューでも、「コンピューターが人間を超えるのも時間の問題」と冷静に予測できたのは、羽生善治を含めたわずかな人達で、大半は「はるか遠い未来の話」あるいは「永久にそんな時代は来ない」と言っていたのです。ま、囲碁や将棋が強いから総合的な知能が高いとも限りませんからね。
シンギュラリティーは必ず起こる
このように、科学技術にまつわる未来予想については皆過大評価しがちなのに、こと話がAIとなると逆に過小評価するんです。本能的な怖さがあるせいなのかもしれません。
「シンギュラリティー」とは、AIが人間の知能を追い越し、人間に取って代わって社会を主導するようになる事象を指しますが、これは放っとけば必ず起きます。別にだからと言って、『ターミネーター』のスカイネットのように人類に対する攻撃を始めるとも限りませんが、やらないとも限りません。が、そんなことは予めのプログラミング次第でしょう。
そういう『ムー』的なSF論としてではなく、あくまで科学として、シンギュラリティーは必ず起きます。
人間の価値や神秘性は誰も守ってくれない
「AIはゼロからは何も生み出せない」と言うのは、「ナムアミダブツ」と同様、「私だけは極楽に行けますように」という念仏に過ぎません。AIに小説を書かせたり、大喜利のお題に答えさせたりする試みはとっくの昔に始まっています。あとは囲碁・将棋と同じで、それをひたすら繰り返して精度を上げていくだけ。もっとも、小説や大喜利にはルールがないので囲碁ほどスムーズには行きませんが、それを見た人の評価という形で評価を定量化はできます。
AIが小説を書き、漫才で人を笑わせ、政治まで担うようになれば、哲学的な意味での人間の価値は地に堕ちます。それが怖いから「ナムアミダブツ」と唱えるわけです。
しかし残念ながら、人間が自らに感じる価値や神秘性は、誰からの保護もされていません。神様はついうっかりなのか、あるいは悪趣味で故意にか分かりませんが、そこにプロテクトをかけないまま人間を誕生させたのです。人間といえども、メスを入れて中身を見てみれば、地球上にいくらでもある物質しか出てこないのです。炭素や酸素や窒素など、一般的な物質しか使われていません。
神様がプロテクトをかけていないことで、遺伝子操作やクローンなどが可能になりました。同様に、人間の脳の解明はこれからも進んでいくでしょう。後はそれをエミュレート(模倣)するかコピーするかで「人間の再現」はできてしまうことになります。
それが良いことか悪いことかは、誰にも何とも言えないでしょうが、人類史最大の事件であることは間違いないでしょう。
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