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ウォーキングデッド・シーズン8の感想

映画・ドラマ

ウォーキングデッド・シーズン8の感想です。
あらすじとしてはまとめていません。
もちろん盛大にネタバレしておりますので、未視聴の方はここでご退場ください。

ニーガン打倒シーズン

シーズン8では、リックたちアレクサンドリア連合が対ニーガン戦の準備を整え、対等の力を持つようになり、最終的にニーガンを打倒するところまでが描かれます。

このシーズンの肝はと言うと、各人物の感情や哲学が煮詰まっていったり、あるいはそのあるべき立場が明確になっていくというところでしょう(煮詰まる=行き詰まる、という意味ではありません。念のため)。

そういう物語を作り上げるため、カールが死を迎えることになります。主人公リックの息子(しかもリックの唯一の血縁者)であり、まだ未成年のカールは、無垢と若さと希望の象徴であり、本来なら絶対に退場させてはいけないポジションにいたわけです。しかし、テレビ版シナリオライターは、カールと言う「最後の切り札」を使ってまでストーリーのピークを作りたかったのでしょう。

それぞれの心の動き

モーガンは、息子を亡くした絶望からやさぐれ野郎になってたところ、偶然出会った合気道の師匠から心の平穏を保つための手段を学んで一度は穏やかな人格を取り戻しました。しかし、リック達との再会およびニーガンの登場によって、冷酷な戦士として覚醒します。しかしながら、師匠から学んだ不殺の原理からの脱却は副作用も強く、心を乱していくことになります。

目の前で愛する夫が残酷極まりない殺され方をしたマギーは、意外にも平常心を保ち、ヒルトップの指導者=作戦司令官として「母の強さ」を見せつけます。しかしそれは「ニーガンの処刑という形で亡夫の仇を討つこと」という大きな目的を持っていたからであって、いざニーガンを捕縛したリックがニーガンを殺さないと決断した時は、感情を爆発させることになります。

そのリックの判断は、亡き息子カールの遺言によるもので、そのカールの言葉は宿敵ニーガンにも宛てられていました。和平にこそ至りませんでしたが、ニーガンにも心の動揺が見られました。

ニーガンの政治哲学

そのニーガンですが、悪虐非道な人間でありながら、このシーズンでは彼なりに政治哲学みたいなものがあり、それは彼の右腕であるサイモンとの対比という形で明確になります。

サイモンはニーガンの指示を無視し、ジェイディスを除くゴミ山の住人を全員虐殺してしまいます。後にそれを知ったニーガンは激怒。考えてみれば、ニーガンは意外と我慢強く、誰かを殺す時も1人ずつかせいぜい2人です。

これつまりどういうことかというと、サイモンは「部族のリーダー」であり、敵部族の殲滅が目的であるのに対し、ニーガンは「皇帝」となって敵を征服し支配下に置く「帝国主義」をやろうとしていたわけです。

結局政治哲学を持たない愚かなサイモンは、確固たる政治哲学を持つ賢いニーガンに処刑されてしまうことになります。

ニーガンは本気で「人々を救おう」と思っていた?

敵を消滅させることではなく、敵を「隷属的な味方」にしてしまい、生産させ、貢がせる。これが帝国主義であり、ニーガンの政治思想です。敵を殺すのは、支配のための手段でしかなく、だからこそギリギリまで総攻撃ということはしません。その代わり、その対象となる犠牲者の殺し方は極めて悪趣味で残忍です。その方が被支配者に対する洗脳効果が高いからです。「これ以上の地獄はない」と思わせ戦力を喪失させるための殺戮であるわけです。

ただ、リックたちはそれ以上のバイタリティーを持っていたのが計算違いだっただけで。その証拠かどうか、ニーガンは捕縛され、まな板の上の鯉の状態になってもなお「人々を救おうをしていた」とのたまっています。

私が目下、カタツムリのスピードで読んでいる『サピエンス全史』では帝国主義について結構なページ数を費やしているんですが、この本においても「帝国主義においては支配者は、自分たちの支配・統治が被支配者のためになると信じて疑わない」という旨が記されています。ニーガンはまさにその認識を持っていたわけですね。

カールの遺言

さて、幼少の頃よりウォーカーや人間を殺すのが当たり前の異常な世界の中で育ってきて、平均からすると随分バランスを崩した少年だったカールですが、青年になった今では友愛に目覚め、人助けをきっかけにウォーカーに噛まれて命を落とすことになります。

結果的にカールは命を賭して父親リックと宿敵ニーガンに遺言と言う形で思いを伝えようとします。リックには「昔の優しいパパに戻ってニーガンを和平の道を」と、ニーガンには「パパから和平を申し出られたらそれを受けろ」と訴えます。皮肉にも、「人は変われる」「融和できる」ということをメンバーで一番若いカールに説かれてしまうのです。

その遺言によってカールはかつての自分を部分的に取り戻しますが、ミショーンに遺言を聞かされたニーガンは「もう遅い」と、少しだけ素の表情を見せた上で跳ねのけました。

捕縛されたニーガンの処遇はメンバーごとに要望が違います。結果的にカールの遺言を一部取り入れる形でリックは「殺さずとも生かさない」という形をとります。牢屋で生かせておいて、自分たちは変われたという「生ける証明」として使い続ける、という使い道です。

さて、シーズン9は?

これに憤慨したのがマギー。彼女は、(なぜか)ジーザスと「リックは分かってない」などと物騒な相談をしており、さらにそれを立ち聞きしていたダリルも賛同。

ここでシーズン8は終わり。

私は原作コミックを読んでいませんが、シーズン9ではどうやらまた新たな敵集団が登場するらしいとのこと(ま、当たり前ですが)。マギーという不穏分子を抱えるリックのコミュニティーはどう対処するのか、今シーズンで死ぬはずだったニーガン、ドワイト、ジェイディスの3人がどうストーリーに絡んでくるのか楽しみなところです。

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