今、『俺の維新史』と題して、維新という政党を振り返る記事を書いているのだが、それはそれとしてとりあえずタイムリーな話題を走り書きで。
あーあ、W出直し選挙やっちゃった
高市政権が衆議院解散するということで、それに合わせて吉村大阪府知事と横山大阪市長がサプライズ辞意表明、出直し選挙をすることになった。狙いはもちろん、「大阪都構想」である。ところがこれが各方面……というより全方位から批判を浴びて、味噌がついた形だ。
(1)マスメディアおよび他党
まあ、これはしょうがない。彼らの仕事だから。
(2)維新支持者
さすがに維新支持者でも意見が割れた。
(3)橋下&松井
創造神であり、大阪都構想のオリジナルでもある橋下徹と松井一郎からも駄目出しを食らった。「今ではない」「吉村さんのやり方は北朝鮮や中国と同じ」と。
(4)党内議員
前原全共同代表も「意味が分からない」と反発。その他の議員にも反対意見を述べる人はいたが、何より大きいのは大阪市議会が「否定的な議決」を表明したことだ。
橋下・松井にとっての大阪都構想とは
まず(3)を掘り下げてみる。
言うまでもなく、橋下・松井両氏にとって大阪都構想は悲願である。大阪都構想そのものは未だ成ってはいないが、大阪都構想という党紀機構改革の理念は現役で生きている。というより、維新の党是だと言っても良いだろう。
過去の大阪都構想チャレンジ=住民投票においては、1回目で否決され橋下氏が腹を切り、2回目でもやはり否決され今度は松井氏が腹を切ることになった。しかしそれで大阪都構想が終わったわけではない。両氏が政界引退をしたのは、大きな予算を使って住民投票に及んだことの責任を取ったものであって、都構想を諦めたわけではない。むしろ、「後進にバトンを渡した」ということを明示したわけだ。
当然ながらこの2人(だけではないのはもちろんだが)にとって、「大阪都構想」とは掛け替えのない希望であり悲願だ。そして(どこまで育ったかは分からないが)自分たちが途中まで育て上げた上で次の世代に託した、言わば「形のない我が子」のような存在だろう。それをこれほど粗末な扱いをされたらたまったものではない、というのが感情としてあるのではないか。
橋下・松井にも大きな責任がある
ただし、この2人も偉そうなことは言えない。
まず橋下氏は、斎藤知事騒動でも明らかになったが、維新において院政を敷き、そのパペットが吉村さんだったのである。また、維新にどのような不祥事が起きても決して吉村さんの悪口だけは言わず、代わりのそこに関わってる誰かのせいにしてきた。そろそろ吉村さんに自我が芽生え始めたと思ったら、とんちんかんなことの連発を繰り出すのだが、今さら吉村さん批判したところで、「あんたがしつけを怠って徹底的に甘やかしからだろうが」としか思えない。
松井さんは松井さんで、代表を勇退する際の、維新にとって初めての党代表選で「後継指名」というやってはいけないことをやってしまった。「冷や飯」発言の記憶は今でも維新支持者の記憶に深く刻まれていることだろう。維新は「出る杭歓迎、どんどん出てきて議論しろ」でなければならなかったはずだが、あそこから「事勿れ」「無責任」「議論しない」「当事者意識を持たない」こういう空気が維新という党を覆ったのだ。
真面目な維新支持者がバカを見た
「悲願」を踏みにじられたのは橋下・松井両氏だけではない。多くの維新支持者にとっても大阪都構想は悲願だったのである。熱心かつ冷静な維新支持者はこれまで長い間、維新はどうあるべきで、何をすれば良いかを議論してきた。政策論の整備はもちろんだが、維新自身が「身を切る改革」を謳っているように、議員や党としての在り方と言う根本的なところにこそ維新の本体はあった(はずである)。「党内で活発に議論し、それをオープンにし、意思決定プロセスを明確にする」というポリシーこそがそれではなかったか。「ガバナンスの在り方」「発信の方法」などもそこに付随する問題だ。「維新」という看板を持つ組織ではなく、政治理念としての「維新」の支持者はかつて真剣にこれらを議論してきたのだ。今回、吉村知事と横山市長がやったことは、こういった ━━ それこそ愚直な ━━ 支持者の思いや努力を足蹴にするものだ。
維新大阪市議団の存在意義
吉村・横山両氏はとんでもなくバカなことをやったのは間違いないが、だからと言って大阪市議団が反対するのはおかしい。(ここには私の主観が大いに入っているということは承知の上で)そもそも橋下・松井が退場した後、大阪にどんな「政治課題」があったのか。おそらく、これといってなかった。大阪府知事も大阪市長もそしてそれぞれの議会も、これといって「政治のお仕事」なんてなかったのだ。府も市も、やるべきは先人が作った設計図に則って行政遂行するだけでよかった。どんな政治的主張をしているかも分からない市議団が、突然我を出したと思ったら「W選挙反対」とは了見が全く分からない。あなた方はこれまでこのリーダーの人気にあやかり、このリーダーの蒙昧さも受け入れた上で、無条件に賛成票を投じる1枚の駒としての役割の他に何があったのか。批判すべき点はこれまでにもいろいろあったはずだ。
逆に、W選挙に反対するなら徹底して反対すべきである。現に市議団は反対の理由として「公約に都構想を掲げていない」ことを挙げている。個々の市議は選挙と言うある意味市民との契約で今の立場にいるのだから、その理屈で言うなら、リーダーが何と言おうと賛成してはいけない。すなわち、法定協を作らせないことを宣言するとか、一斉離党すると言った選択肢を取らなくてはならないだろうし、賛成したければトップと同様に市議団全員辞職して出直し選挙をしなくてはならなくなる。
結局、「反対」という意思表示はするけど、「まぁでも、うちの殿様が言うなら、従うしかありませんけどね」と、筋を通さずなし崩しにしてしまった。
ハッキリ言おう。
これがいつもの維新なのである。
もし都構想が成立したら日本維新の会は……?
そもそも吉村代表は、「マスコミに漏れるとマズいから」という仰天の本末転倒理論で党内ですら情報共有せずに今回の決断をした。そりゃ松井さんに「北朝鮮や中国と同じ」と言われて当然だし、大阪市議団は完全にコケにされたわけだ。市議団は自分たちが「コケ」であることを認めるか、そうでないならここで「政治家としての自我」を見せてみろ、ということだ。
と、こういうことを考えていくと、さらに大きな問題が見えてくる。万にひとつ、都構想が成立したとしら、少なくとも大阪維新の会は約束通り解散することになるだろう。では日本維新の会はどうなるのか。私は今支持などしていないが、日本維新の会にも存在意義はあることを過去に説明してきた。だが存続するにしても、今回の騒動をどう消化するのだろうか。
多くの人はさほど重大視していないだろうが、大阪府知事は「日本維新の会代表」であり、大阪市長は「同副代表」である。トップと大幹部がこんなアホウなことをやらかして、それを是としたまま、例によって総括もせず「なかったことにして」政党を運営していくのだろうか。冷静に考えるべきだろう。これは「斎藤知事騒動」かそれ以上の、維新という政党の根幹を揺るがすとんでもない不祥事であるということを。
多分つづく。


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