貧乏な日本が生意気言うな
過日、『そこまで言って委員会NP』でインバウンドのオーバーツーリズム問題が取り上げられた際、竹田恒泰氏が「インバウンドが今の2倍になってもGDPは1%しか増えない」と否定的な主張を展開していたが、氏は今の日本経済において1%の成長がどれほど重要か分かっておられないのではないか。その1%が加算されてもまだアメリカには追い付かないのが現状の日本だ。
外国人観光客が増えて、やれ「日本人が日本の観光地に行きにくくなった」だの「売店の価格が高くなった」だの「ゴミが増えた」だのと文句を言う人がいまるが、私から言わせれば、
「貧乏人のくせに生意気言うな!」
である。
例えば、エレクトロニクス産業。例えば、半導体。例えば、造船。日本がお家芸としていた産業も今や完全な脇役だ。造船なんか世界シェアの半分以上を持っていたのに、いつの間にやら韓国にも中国にも負け、何とか3位に着けてる状態である。
こういったかつての日本にとっての基幹産業が十分強くてしっかり経済成長しているのなら、「インバウンドで日本が汚れる」「日本人が観光できなくなる」と文句を言う資格もあるだろうが、貧乏国家になってしまった今の日本にとって観光産業は経済成長をなんとかプラスに維持するための命綱だ。
東大寺は拝観料を上げて法人税を払え
昨年、姫路城の入場料を邦人と外国人で設定を分けることが検討された。本来の趣旨は姫路城のメンテナンスにお金がかかるから料金を値上げするというものだったが、料金改定のついでに「インバウンド料金」を設定してしまおうという経緯だったようである。
結局、「邦人と外国人の確認が難しい」という理由でインバウンド料金設定は見送られたが、姫路市民と非姫路市民では料金を変えるとのこと。私はこの話が出た当時、「確認作業が煩わしくてできないのでは」と思っていたらやはりそうなった。市民と非市民で分けるのもなんだかよく分からない。地元民が地元観光スポットにそんなに行きたがるのかも分からないし、促す意味があるのかも分からない。必要なら無差別に料金を引き上げても良いのではないか?
例えば、私は東大寺のいわゆる「奈良の大仏」(盧舎那仏坐像)が結構好きで、数年に1度は見たくなり、見ようと思えば現在大人で800円の拝観料を取られるのだが、この料金が3倍の2400円になっても多分見る。数年に1度の2400円をケチるほど値打ちのないものではない。邦人だと2400円なら見ないという人もいるだろうが、だったら見なければ良い。おそらくインバウンドにはあまり関係のない話だ。東大寺はとっとと料金を引き上げて、外貨を稼ぐべきだ。ただし、法人税は払って頂きたいが。
小泉進次郎の「インバウンド6000万人目標」
さて、こちら。
目下、自民党総裁選活動中の小泉進次郎氏の「インバウンド6000万人」という目標に、アルピニストの野口健氏が「量より質を」と批判したというものだ。いわく、「富裕層を呼び込めば良い」とのことだが、インバウンドの人数を維持あるいは減らして売上だけ伸ばすなんてことがそんなに簡単にできるのかどうかは怪しい。
「売上ばかり重視してて良いのか」という意見があるのなら、「当たり前やろ!」と答えるしかない。野口氏は、インバウンドのせいで日本が下品になっていっていると指摘するが、マナー違反や犯罪の増加の大きな要因として「貧困」があることを忘れてはいけない。最初の話に戻るが、とにかく今、日本は貧乏から抜け出さなければいけないのだ。そのためには、格好つけて稼ぐ手段を選んでいる場合ではない。
フランスのインバウンドGDP寄与率
ちなみに。フランスは人口が日本の半分しかないが、インバウンド客は毎年1億人を誇る。その直接的なGDP寄与率は2~3%だとのことだ。フランスは概ね経済成長率2~3%で推移しているので、インバウンドがなくなれば一気にマイナス成長に転じることになる。この関係は日本にもピッタリ符合する。現在の日本のインバウンドGDP寄与率は1.2%程度だが、経済成長率が1%行くか行かないかの現状では命綱になる。逆に、インバウンドが6000万人に到達すれば、GDP寄与率は2%手前まで上昇することになり、何とか欧米諸国のお尻にしがみつけそうだ。
そもそも、この6000万人という目標も、目標と言うよりは「予想」と言った方が良いだろう。安倍首相の時代、インバウンド2000万人を目指すと言われた時には驚いた人もいるかもしれないが、2000万人どころかあっという間に3000万人を突破した。そして今年2025年の予想は、最低4000万人、最大4700万人とも言われている。この状況から線を引いていけば、2030年時点での6000万人など「目標」ではなく「予想」でしかないし、政治が考えなければならないことは、「6000万人を目指す」のではなく「観光産業における各業務の合理化、ルール設定、治安の維持」への対策だ。
シンガポールはインバウンドのせいで汚くなったか?
例えばシンガポールと言えば、行ったことがない人でも「ゴミに対して厳格なルールが敷かれている」ということは知っている。そのシンガポールもどんどんインバウンドが増えているが、そのせいで街が汚くなったということはないらしい。海外観光客も、シンガポールの「清潔」「ゴミルールが厳格」というイメージを持った上で行くので、「郷に従う」のだろう。むしろ、こういったイメージがシンガポールの観光国ブランドを維持させているとも言える。
このシンガポールの例は「やろうと思ったらできる」ことを示している。清潔さという点では、本来世界一とも言える日本なのだから、シンガポールの真似できる部分は真似してブランド化すれば良いのではないか。なんせ日本人は、問題があるとすぐに「やらない理由」を探して守りに入りたがる民族のように思える。
言っておくが、日本が今インバウンドを積極的に利用できなければ、今まさに議論されている移民問題など対処できるはずがない。こちらの方が1万倍難しい問題だ。

コメント
人余りの時代ではなくなったので労働生産性が問題とされるわけで、観光業で人材浪費してでも薄利多売で売上が立てばいい時代ないでしょ。全体的な値上げに賛成です。