「並ばない万博」とは
旧来の万博や遊園地・テーマパークなんかは何も考えずにその日現地に行ってチケットを買って入場するというシンプルな手法を採っていました。このやり方は一切システム的にややこしさがありません。ただし、その強い副作用として(それが万博やディズニーランドのような人気施設だった場合)「長時間並ばなくてはいけない」ということがあります。
ディズニーリゾートやUSJといったテーマパークにおいては、今でも基本的には並ぶ必要がありますが、そこは営利事業、どうしてもという人には「並ばなくても入れるチケット」を【金で】買うという手段が用意されています。
さて、今般の大阪関西万博が掲げた「並ばない万博」というモットーは全くもって正しいと言えるでしょう。と言うのは、年々夏の暑さが厳しくなる日本の中でも大阪は殺人的です。くわえて、ディズニーやUSJのようなテーマパークに比べて万博というイベントに来るお客さんは小さなお子さんから高齢者まで幅広く、体力的な問題が二重で効いてくることになります。「命かがやく」はずの万博で命を削るわけにいきません。というようなことで、大阪万博では来場者一人ひとりにIDを発行した上でインターネットによる予約と言うシステムを採用しました。
しかしながら、その実態はというと、初期にはアメリカ館で4時間の行列ができたことが話題になり、その後モンスター級の展示物を誇るイタリアはSNS報告ベースで最長6時間の行列ができたのだとか。
※イタリア館の個別事情については別の投稿で触れておりますので、ご参照を。
行列の解消法はあるのか?
運営者にやる気があるのかないのかよく分かりませんが、私は真面目なので「並ばない万博」をモットーとするならその提案をするだけです。この後にその具体案を書くわけですが、Xでちらっと書いたところ、
A.「だったら朝一で並べば良い」
B.「行列を解消したらその客たちが別の場所でまた違う行列を作るだけ」
C.「整理券を発行したら整理券をもらうための行列ができる」
D.「イタリア館は独自に予約システムがあるので利用すれば良い。調べないのが悪い」
E.「抽選で外れて嫌な思いをするくらいなら長時間でも待って入れる方が良いし、公平」
というような、(私から見ると)ウ〇コのような反応も含む反論を頂きました。これに打ち返す形で策を講じてみましょう。
あ、「行列に並んでも入館を確約されたわけではない」というホームラン級のバカはここには入れておりません。職員さんがどれほど愚かでも、入館させない人を行列に並ばせるなんてことはしないでしょうから。
「朝一で並べ」
いろんな事情で朝一から並べない人だってたくさんいます。そもそもこれは「誰か」の話をしているのであって、行列解消の手段ではありませんね。私は「イタリア館に行きたいんだけどどうすればいい?」と質問したわけではなく、「万博運営」を主語にしてその方策を講じているのです。
「また別の行列ができる」
というアホのために図で説明しますね。
「あるパビリオンの行列を解消しようとしたら別の行列ができる」と言う話には「すでにどの施設・パビリオンも満員」というちょっとあり得ない前提条件が必要です。たしかに、12~13万人来場が当たり前になってきた最近でこそ、一部のコモンズパビリオンですら入場制限をすることがありますが、それも一時的な話。少なくとも大屋根リングが満員になったことはありません。
講ずるべきは来場客の「偏在」の解消なのです。
さて、図なのですが、これはこれで話を抽象化するためにあえて非常に分かりやすいモデルを使っています。
「行列」とは何かというと、例えば2時間の行列なら「2時間立ってるだけで何もしない人の集団」がそこにいるということに他なりません。広い万博、どこかには並ばずに利用できる施設はあります。だったら、その2時間を、「それほど関心が強いわけではなかったから後回しにしてた」であろう別の施設・パビリオンに誘導できれば良いわけですよ。例えばEU館のテキストをじっくり読んだことはありますか?バルト館の植物を覚えようとは思いませんか?大屋根リングを1時間かけてゆったり散歩するのもアリでしょうし、吉本前でお弁当食べても良いですよね。
すると、必然的に解消法は「整理券」ということになります。
「整理券」方式に問題は?
簡単な話、行列に並んでいる人たちに入館を確約するという前提であれば、そこで待ってもらう必要なんてないんです。イタリア館クラスになると、通行の邪魔になりますからね。
だったら話は簡単。「整理券」を発行しましょう。
「整理券をもらうための行列ができる」?
んなアホな。ディズニーランドやUSJに行ったことがないのでしょうか?今はもうやめてしまったかもしれませんが、ディズニーランドに無料の整理券が自動整理券発行機によって配布されていました。そこにどんな行列ができていたというのでしょうか。ガチでアトラクションに並べば3時間とか4時間とかにもなりますが、整理券を待つのは長くても2分かそこらだったはず。
「整理券が転売される」?
は?何のためのチケットIDなのですか?来場者はそれぞれがシリアルナンバーであるQRコードを持っているのですから、それで個人認証して整理券を発行すれば転売のしようがありません。
しかもこの方法、高度なプログラミングも高価な装置も必要ないのですよ。だってイタリア館ですら予約枠外利用者=つまり、行列に並んで入る人は数千人でしょう。数千のシリアルナンバーをタイムテーブルに当てはめていくだけのシンプルなデータベースを作るだけで済んでしまいますから、職員さんが2世代前のスマホ1台持ってるだけで充分です。整理券発行時には、トラブルにならないよう整理券QRコードを表示させて、お客さんのカメラでそれを撮ってもらい、「控え」とする。これで万博公式サイトを使わない(負担をかけない)システムが出来上がります。
整理券を発行するくらいなら予約枠を増やしたら……?
そうなんです。常時何時間もの行列ができているということは、予約枠外の余裕がめちゃくちゃあるということです。だったら行列集団も予約枠に入れてしまえば良いということになるのです。
これは単純な算数の問題でしかないのですよ。
ただし。予約枠を広げても、必ずキャンセルする人が発生するし、それはすなわち「ロス」になります。予約枠外の利用者の存在は、そのロスを埋めてくれるパテのようなもの。だから100%予約というのも正解とは言い切れません。
私の提案は、事前予約枠をもう少し広げて、例えば「遠方からだがイタリア館だけは見たい」という人の需要になるべく応えながら、当日予約枠も設け、そのチャンスを2~3時間おきに整理券を発行するというやり方です。この1日に数回チャンスが回ってくる方式は俗に「ガンダム館方式」と呼ばれます。
何はともあれ、鑑賞時間を固定化しよう
さて、パビリオンには鑑賞時間が(自ずと)厳格に決まっているものとそうでないものがあります。前者の典型例はガンダム館(GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION)で、これはUSJやディズニーランドのアトラクションとほぼ同じ形式。エリアごとにガイドさんがいて、決まった時間の映像コンテンツを見せるので、鑑賞時間がかっちりと決まります。後者では例えばフランス館ですね。展示物をあの素晴らしいLED立体映像を3時間でも見たいのであれば見続けることができてしまいます。万博でも最高レベルの人気を誇るイタリア館は、たしか「緩やかに促される」という程度で、いようと思えば居座る(?)こともできたはずです。
日に日に来場者数が増えて行列も長くなっていく一方であることを考慮すれば、この後者タイプ、つまり鑑賞時間がアバウトな人気パビリオンには「時間制限」を設けるという選択肢を検討すべきでしょう。例えば、パビリオンが3パートに分かれているなら、各パートごとに10分割り当てられ、10分経ったら強制的に次のパートに移動してもらう。こうすれば、1人30分という固定時間になり、もしそれまで平均鑑賞時間が40分だったとしたら10分分だけキャパが広がる上に、計算が容易になります。
というか、これをやらないと整理券もまともに運用できないでしょう。
イタリア館行列の原因はエレベーターだった!?
…と、これを書いてる途中に、このような情報が。
速報)大阪万博 改善情報
イタリア館の回転率が、5月19日頃から約1.5~2倍へ大幅に上がった事が、USJのツボの調べで分かった。イタリア館ですが1階から3階へ、約10人乗りの小さなエレベーター1台で移動。
そこで渋滞発生で回転率が悪かったです。
階段で移動で、回転率が大幅アップへ #大阪万博 pic.twitter.com/SLDjqLMEKX— USJ・大阪万博のツボ (@usj1) May 28, 2025
自分の記憶を引き出してみますが……そういや、階段は解放されてなかったっけか…?
にしても、これで回転率最大2倍!?なんでもうちょっと早めにやらなかったのか不思議でなりませんが、とりあえずは改善ですね。
あ、反論のDとEについてはまた後日に。
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