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エアコンの室外機を濡れタオルで冷やすのは節電になるか?

猫と室外機 技術・産業

久しぶりの家電(生活の科学)ネタ。

ずーーっと前から、エアコンの仕組みについて書こうと思っていたのですが、この手の話ってイラストがないと非常に分かりにくいのに私は絵が描けないものだから、遠慮していたんです。ま、自前に拘らず、フリー素材持ってくりゃ良いだけのことなんですけどね。

で、今話題になっているのが、エアコンの室外機に濡れ雑巾をかぶせておくと効きが良くなるのは本当か?って話なんですが、その前にエアコンの仕組みの話要ります?あ、要らない?じゃあとっとと本題へ。

以下に書くことは3流私大文系卒の素人によるもので、ブログ主は一切の責任を負わないものとします。
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「室外機に濡れタオル」でエアコンの効きは良くなるのか?

絵描けないんで、どんな感じか気になる人はツイッターで「室外機 タオル」で検索してみてくださいね。写真いっぱい出てきますから。

言葉で説明すると、エアコン室外機の天板に、水を入れた洗面器やバケツを置いて、十分な長さ(面積)を持つタオルや雑巾などの端っこを水に浸し、タオルの残りの部分で天板を覆う、というやり方。

これで、バケツに水がある間はタオルが水を引き込んで、室外機天板が長時間湿った状態を保つことができ、打ち水効果(気化熱)によって室外機が冷え、エアコンの効きが良くなるという算段です。

私の見解でアリかナシかで言うと、これは「アリ」です。

真夏の常温の水はぬるーいものですが、そのぬるい水で洗った洗濯物も干してしばらくしてから触るとヒンヤリしていますね。これが気化熱で、「マイナスの熱」を作り出します。室外機は簡単に言えば排熱装置であり、その室外機自体を冷やせば冷却効率が上がるのも当然です。

その効果のほどはと言うと、それは後々。

 

でもメーカーはやめろって言ってますよね?

そんなもん、わざわざメーカーに聞いて「それいいかもね♪」なんて言う訳がありません。メーカーが公認して故障が増えたら余計なクレームが増えるだけですから。ちょっとでもデメリットがありそうなら「非推奨」と言うのがメーカーの作法なのですよ。

「そもそも室外機の上に物を置くな」とメーカーが言うのは、「置いていい」ということにしてしまうと、何kgまでなら良いのかという基準を作らなくてはいけません。そしてその基準内であれば、責任を持って保証しなくてはいけません。基準を作ること自体がものすごく面倒で、さらに細かい面倒がいろいろ増えることになります。「室外機の上に物を置いた方が良いのか置かない方が良いのか」で言えば、置かない方が良いに決まってるので、メーカーとしては「置くな」と言うわけです。

 

実際、バケツを置いて問題ある?

じゃあ水を入れたバケツくらいは?まず、重さ的には何の問題もないでしょう。象が踏んでも大丈夫……かどうかは知りませんが、数リットルの水(つまり数kgの荷物)が乗ったくらいで耐久性がどうこうなるようなヤワなものではありません。それよりも経年劣化で寿命を迎える方が先です。

 

水道水に含まれるミネラルやシリカが固着する?

次に水が悪さをするかって問題ですが、これも全く問題ありません。

蛇口から出る水にはミネラルやシリカなど、蒸発しない不純物が含まれ、それが固着することによって故障するかもよという心配ですが、その心配はあくまで室外機内部の冷却フィンやファン(ややこしい)その他の部品に付着した場合の話であって、天板にいくらくっ付こうが問題ありません。汚れたらカンタンに掃除できるんだし。

その前に、室外機内部に水道水が入ったとしてもそうそう故障などはしません。そもそも室外機は文字通り室外=屋外に設置され、大雨や強風に晒されても作動できるようになっています。水道水がどうこう言う前に、雨は空気中の不純物を含んでいてそれがぶっかかってもちゃんと動いているのが室外機なのですよ。

じゃあ水道水をかけても良いのか?と言うと、やめた方が良いでしょう。特に真横からビシャーーッ!とかけてしまうと、さすがに水がかかってはいけない部品にまで水が届き、故障の原因になります。

そういう私は、庭の水撒きの時に、ついでに室外機にもかけてますけどね。上から優しく、ですが。

 

そもそもメーカー自身が室外機に水をぶっかけている

このサイトで紹介されているのは「スカイエネカット」と言って、なんと室外機に直接散水して冷却する装置で、そのメーカーはダイキンです。つまり、水をかけちゃいけないなんてことはないわけですよ。

ただし、使われている水は不純物を除去した、つまり純水に近い状態の水だと思われます。

海外でも「Mistbox」と言う同じような製品が。こちらは水を霧にして噴射するものです。

 

で、肝心の効果のほどは?

先述の「スカイエネカット」なんですが、その効果は最終的な電気代としては14%(あくまで業務用)ですが、エネルギー効率自体は4%の節約にしかならないそうです。

ん~~む、思ったほどでもない。

メーカーが過小宣伝するはずないでしょうから、これが正味の数値なのでしょう。

一方の「Mistbox」は30%。この数字を信じるとして、結構大きな効果ですね。

 

この2機種の違いは見た目でも明確で、Mistboxはその名の通り、粒の細かい霧状になっているのに対し、スカイエネカットは粗いんですよ。私がスカイエネカットを始めて知ったのは何年か前のニュースででしたが、その時の印象は「そんなワシャー!とかけちゃうの?」でした。

しつこいようですが、室外機に水をかけて冷やすという仕組みは、水そのものの熱で冷やすのではありません。水が蒸発する時に周辺の熱を奪っていく現象(気化熱)を利用するので、蒸発しなければ意味がないのです。

ということで、どうせ水を使うのなら、屋外の観光地に設置してあるような冷却ミストくらいに粒を細かくして表面積を増やした方が蒸発しやすくなり、冷却効果が高く、節水にもなるはずなのです。

4%と30%という数字をそのまま鵜呑みにはできないものの、水の粒子を小さくすることそのものには大きな意味があると言えます。

 

もっと良い方法が……?

ちょっと話が逸れましたが、プロが作る散水式冷却装置でさえ効果はこんなもの、ということが言いたかったのです。

これらの装置は、水や水によって冷やされた空気が吸気口を通って冷媒(室内と室外を行き来しているガスのこと)を冷やしますが、天板を濡れタオルで冷やしたところで、天板部分の冷えた空気がどれほど冷却フィンに接触するのかと考えると、まあさほどの期待はできないかな、と。もちろんやらないよりは良いし、風の強い日だと効果も大きくなるとは思いますけどね。

 

じゃあどんな方法が良いの?

要するに、冷えた空気をあくまで吸気口から吸い込ませたいのですよ。

となると、吸気口側の直前で「打ち水」したいわけですよね。

エアコン室外機

例えばこの写真のように、壁ギリギリに設置されている室外機の場合、この壁が湿っていればそこそこの打ち水効果が期待できます。1回やるのは実に簡単で、壁に水をかければ良いんですが、それを長時間持続させようとなると難しいですね。

室外機の吸気側にある程度のスペースがあるなら、地べたに置くタイプのタオルハンガーなんかを立てて、タオルの下がバケツに浸るような装置を、吸気口からギリギリ数cmのところに設置すると良いでしょう。写真で言えば、「壁がずっと濡れている」状態を作れるわけです。これで、気化熱で冷やされた空気が無駄なく冷却フィンを冷やしてくれることになります。

ただし、タオルが乾いて軽くなり、吸気口にへばりついてしまうと、一気に故障してしまうかもしれないレベルの不具合が生じますので、もしやるなら、タオルに何かしらの重りをつけて固定しましょうね。

 

室外機に氷を乗っけるのはどう?

結論から言うと、全くの逆効果になるのでやめてください

そもそもその氷はどこでどうやって作られたものでしょうか。おそらくは、クーラーをつけている部屋と同じ空間にある冷蔵庫では?

ではその冷蔵庫はどういう仕組みで動いていますか?

そうです、冷蔵庫もエアコンと同じくヒートポンプという電気で動く熱交換機で冷気を作り出しているのです。

しかも。

エアコンのように室内機・室外機に分かれていない冷蔵庫は、庫内冷却のために作り出した冷機の収支が合うように、“暖気”を部屋に排出しています。

室外機を冷やすために冷蔵庫から氷を取り出したらその分だけ新しく水を補給して、冷蔵庫は製氷を始めます。氷を作るに足るほどの冷気を作り出すために、その分の暖気を作っては部屋を暖めることになります。製氷のために暖まった空気を冷やすためにエアコンが回り、そのエアコンの室外機を氷で冷やす……。しかもその氷の大部分は外気を冷やして屋外を少しだけヒンヤリさせるということだけに消耗されます。

お分かり頂けたでしょうか?「無駄」ならまだしも、完全に逆効果になるのですよ。

氷を室外機に乗せて冷やすくらいなら、その氷を部屋の中のどこかで溶かしていた方がまだマシだし、それですら冷蔵庫の作動のことを考えたら収支で大きなマイナスになります。なので氷を使うなんてバカなことはやめてください。(隣の家からもらってきた氷を使う分にはOKです)

濡れタオルという方法が賢いのは、一切電気などを使わず、「水が蒸発する時に作り出すマイナス熱」という自然の物理現象を利用している点にあります。「水道代が!」なんて人がいますが、エアコンの電気代に比べりゃ水なんてタダ同然ですよ。

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