爆笑問題太田は何がダメだったのか?
各テレビ局が放送した選挙速報特番で、TBS「選挙の日2021 太田光と問う!私たちのミライ」はMCに爆笑問題・太田という思い切ったキャスティング。
ところが、二階氏に「人相悪いですね」、甘利氏には「うっひゃっひゃっひゃっひゃ……ご愁傷様です」など吐くその態度の悪さや的外れな質問に、「一人くらい味方はいないのか!?」というほど日本中から猛批判。では、彼の何が悪かったのでしょうか。
私はお笑い芸人としては彼のファンなんですが、やっぱりあの起用はダメだったんですよ。
池上彰と橋下徹
選挙特番と言えば池上彰。彼の政治思想やジャーナリストとしての姿勢に賛否はあるものの、彼がやるようになって選挙特番が面白くなったのは間違いありません。そのキモは言うまでもなく、相手がどんな大物であれ一歩も引かず、歯に衣着せない質問をぶつけるところです。
選挙特番の今一方の雄・橋下徹も同様。こちらは元来の頭の良さに加えて、地方行政で極めて大きな実績を残した元政治家とあって、繰り出されるパンチが目に見えないほど速く、かつ、一発一発が非常に重い。観ていてスカッとします。
TBSはそんな2人を見て「なるほど、政治家に失礼な態度を取ればウケるんだな!」と間違った学習をしてしまったのでしょう。
そもそも爆笑太田はどんな人?
私はこの記事の趣旨は別にして、爆笑問題・太田のファンでして、TBSラジオ『爆笑問題カーボーイ』は数少ない愛聴ラジオ番組のひとつです。彼の、空気をぶっ壊す勇気あるボケ、芸術や社会問題に対する賢明なアプローチの仕方などはかなり好きなんですよ。政治思想はかなり左寄りで私とは相容れませんが、それでもその言説には耳を傾けるべきところも多々あります。
ただ、どこかで書生論やパヨクっぽさが出てきてしまうところがあるんですよね。太田の書生論的政治思想は、自分でも自覚しているようなところがあって、なのでとりあえずリアリズムは抜きにして、思想としては面白いと感じていたのですが、選挙特番のMCをやっちゃダメなんですよ。
支持政党を表明したのがダメ?
彼は当該番組の中で「私は立憲民主党に入れた」と、MCという立場でありながら支持政党を表明してしまうという業界のタブーを侵してしまいました。と言っても、私はこのこと自体大した問題ではないと思っています。日本はあまりに潔癖過ぎてこういうことを問題視したがりますが、アメリカなんかじゃ当たり前ですからね。
ただ、それでも、司会をやる以上、公平・公正でなければいけないし、最低限の礼儀も弁える必要はあったのに、それを無視したことが問題だったわけです。
擁護論がイタい
芸人の立ち位置、バカにし過ぎじゃない?貴方は誰。教えてよ。太田光は芸人。
— 太田光代 (@ota324) October 31, 2021
アーリンに礼節など無理です。ただ、皆さんは礼儀正しく美しく。生きているのですか?
そんな人は芸人出来ません。
少なくとも馬鹿ですよ。芸人は。
政治家は?政治家の人に。私は礼節を重んじます。とか聞いたことないですよ。
やっぱり馬鹿じゃないと出来ないのでは無いかと思います。馬鹿は褒め。
— 太田光代 (@ota324) October 31, 2021
あんなことで、失礼だとたしなめる大衆って何だろうね?芸人の職業がわからないんだろうね。芸人は偉くないから出来るのに。ご愁傷さま
(浅草キッド・水道橋博士)
ああいうやつだからね、最初から。もうね、人間じゃないんだから。最初から見慣れてるんだから。今ネットで文句言ってる人はさ、多分太田のこと知らなかった人なんだろうね、人生で。“この人辛口いくな”ってそんな感じだろうな、見てる人は。だから、知らない人が書いてるんだろうな
(高田文夫)
『大物政治家もシャレが分からない人ばかりだ』ってことを、国民に知らせてくれたのは、太田氏の大きな功績だと思います(笑)
(ぜんじろう)
以上が主たる……と言うか、この他に見当たらないのですが、太田擁護論です。
お分かり頂けると思いますが、この太田擁護論は、「芸人論」であり「太田論」なんですよ。
芸人論を持ち出すのは結構。しかし、お笑い哲学として語るのであれば、そこには「ウケるかスベるか」の評価基準があるはずで、当該番組における太田はこれでもかというくらいにドン滑りしてしまっているのです。ウケた上で「面白かったから良かったじゃないか」と言うならまだしも、誰も笑ってないのだから、芸人としても失敗しているのです。
なぜ芸人として失敗したか?そりゃ当然で、あそこで求められていたのは「報道」であり、「政治家の見解」であったわけで、お笑いではなかったからです。需要のないところに供給したって消費されるわけがありません。
ぜんじろう曰く「政治家はシャレが理解できない」とのことですが、相手がシャレの分かる人かどうかを見極めるのも芸人のスキルです。ちなみに、ぜんじろうの場合、相手がどうこうの前に本人が何も面白いことを言えなかったため、ものすごい速さでテレビから姿を消したんですけどね。
水道橋博士も同様。彼はすっかり「芸人哲学を語るだけの芸人」に成り下がってしまったようですが、芸人哲学を語って陶酔しても人は笑わせられないし、人を笑わせられないのなら芸人ではないのですよ。
「芸人を分かってない」「太田のことを知らない」なぜ選挙特番を観るのにそんな前提が視聴者に求められるのでしょうか。これがいかに的外れなことか、視聴者の反応が示していますね。
最悪なのは太田夫人である太田光代氏です。(極めて難解な日本語で)どこか他人事のように書いていますが、彼女は事務所の社長でもあり、売り込んだかどうかは知りませんが、この仕事にゴーサインを出したのは彼女でしょう。TBSの要望には応えたのでしょうが、視聴者の要望には応えられませんでした。TBSの要望通りの仕事ができたと思うのなら、それで良いではありませんか。地獄のドン滑りで視聴者を不快にさせたとしても、クライアントのオファーには応えたのですから。それを事務所の社長がわざわざ擁護するというのは、みっともないことこの上ありません。
じゃあどうすれば良かったの?
生放送の選挙特番においてMCに求められるのは、リアルタイムで予定が流動する中、タイトな時間割でインタビューの相手から必要なことだけを聞き出す技術です。そんなことは、芸人の皮をかぶりながら何一つ面白いことを言わないくりぃむしちゅーの上田にでもやらせれば良いのであって、太田の出る幕ではないのです。
太田がやるべきは、生放送ではなく収録番組で、その相手は1人もしくは少人数限定のトークです。これであれば相手が政治家であってもそのつもりでオファーを受けるだろうし、収録なので太田のだらだらトークも編集で生きてきます。こういう舞台でこそ彼の(政治思想を含めた)面白さは発揮される……なんてことは、本人もその周辺の人達も重々分かっているはずなんですけどね。
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