元々エネルギー系家電(「エネルギー系」って何ですか)が好きで、ずっと気になってた冷風扇。でも今まで買わなかったのは、あまり評判がよろしくなかったから。
ところがこの物価高騰、特に電気料金の値上げ、さらには子供の部屋を増やしてその分エアコンの使用頻度も増える、なんて状況になると光熱費の節約は考えないといけません。
ってことで買って使ってみました。
私が購入したのはこれ。買った当時はもう少し安く、1万円を切っておりました。このサイズとしては最安レベルの品ですね。
クーラーはどうやって冷却してる?
せっかくなので生活の科学を学びましょう。そもそもクーラーはどうやって冷気を作り出しているのでしょうか。それはこの記事に書いてあるので是非読んでください。
はい、読みませんでしたね。なので簡単に説明します。
クーラー(エアコン)には、室内機と室外機という2つの装置から構成されています。その2つの装置の間で冷媒と呼ばれる熱交換媒体(昔はフロン、今は二酸化炭素)をやり取りすることで「熱交換」を実現しています。
例えば気温が35℃だとして、冷媒を圧縮して液化することで高温(多分55℃とかだと思う)にし、それを室外機で冷却すると周辺の気温に近くなります。すると、「高圧で常温」の物質が出来上がります。これをダクトで室内機に送り、このタイミングで圧力を抜いてしまいます。すると冷媒は一気に気化し、急激に温度が低下します。周辺から温度を奪います。スプレー缶を一定時間使い続けると缶が冷たくなるのと全く同じです。
で、エアコンが電気代を食うのは、冷媒を圧縮するコンプレッサーにすんごいエネルギーを使うからです。同じ「空気を操作する」のでも、うちわを仰いで風を作り出すのと、自転車に空気を入れるのとでは労力は全く違いますよね。クーラーに比べると扇風機がただみたいな電気代で動いてくれるのは「うちわ」だからです。
冷風扇の仕組みは?
さて冷風扇はというと、「気化」という物理現象は利用しているものの、コンプレッサーは使いません。真夏に屋外の観光地や遊園地に行くと、ミストを噴出して涼しくさせていたりしますが、あれと同じ。水を蒸発させて冷気を作り出しています。いわゆる「打ち水効果」です。
さっき紹介した私のブログでは冷房の効率向上のための提案をしているのですが、私のアイデアはまさに冷風扇と同じです。
んじゃ冷風扇は具体的にどういう仕組みなのかと言うと、風を送るファンの手前に水を置いておくだけです。でも普通に器に水を入れて置いても冷気を作れるほどの蒸発はしてくれませんから、水の表面積を増やす工夫が施されます。私の持っている冷風扇をよく見ると、小さいらせん状の棒が無数に立てられていて、そこをゆっくり水が落ちていく仕組みになっているようです。他の機種は知りませんが、多分粗目のスポンジを使ったりしているものもあると想像できます。
表面積が十分あるところに水が滴り、そこを空気が通過することによって水が蒸発、気化熱を奪って排気口から冷気が出てくる、ということですね。
使用感
この手の商品は買ってみないとわかりません。なぜなら、これが売られている家電量販店はすでに冷房が効いているからです。
ということで、使ってみました。そして、全く同時に扇風機と並べて風の具合を体感しました。
結論を言うと、冷風扇イイ感じ、です。
実際、冷風扇からは何℃の風が出てくるのか
測ってみました。
この時、ウェザーニュースによると気温31℃、湿度64%でした。室内の実測でも気温は31℃。
まずは普通の扇風機の風に温度計を当ててみます。「強」にして1分待っても全く変わりません。当たり前ですね、温度計は汗をかかないので涼しくなる要因がありません。(犬に扇風機があまり効かないという理由もこれです)
次に冷風扇。私の持っている機種では「何℃下がる」みたいな表記はありませんでした。で、実測してみると、29℃。見事に2℃下がっています。
ちなみにエアコン(冷房)の吹き出し口からは、気温マイナス10℃前後の冷気が出てきます。これも昔測ったことがあるのですが、気温31℃の時にうちのエアコンからは19℃の冷気が出てました。マイナス12℃ってことですね。
気化熱を利用するということは、湿度に依存するということ。別の日に気温は同じ31℃でも湿度が50%だった日があり、
また、この冷風扇には専用の保冷剤が付属しており、それを冷凍庫で凍らせてタンクに入れることができます。ところが、ハッキリ言って全く効果がありません。吹き出し口の温度を計測してみましたが、温度計は1ミリたりとも動きませんでした。意外と思われるかもしれませんが、少々保冷剤を入れたところで大したカロリーではないのです。冷凍庫のキューブ型の氷を直でドバドバ入れてしまえば、あるいは多少の冷気増強ができるかもしれませんが、あっという間に溶けてなくなりますね。
結局、冷風扇はどんな風に使うべきか
例えば私なんかは、寝る時は冷房必須ですが、昼間作業に集中している間は暑さはあまり気にならず、猛暑の中でも扇風機だけでOKだったりします(書類仕事がメインの時は書類が飛ぶし、汗でくっつくので冷房を使いますが)。そんな私には冷風扇で十分だったりします。
私とは逆で、昼間は冷房なしだと耐えられないけど寝る時は要らないなんて人もいます。
そもそも冷房が苦手って人もいますよね。体がだるくなったり痛くなったりとかで。
冷房は苦手ではないけど、夏の入りや出の境目で冷房を点けるかどうか迷うことがあるって人も多いでしょう。
そういう人達にはこの冷風扇がお勧めできます。
ただし、扇風機と同じで空間を冷やす効果は全くありませんから、基本的に1人でいるか、至近距離内に2~3人いるかという状況でないと使えません。
使い方としては、
●部屋の窓は開けて換気しておく
●上半身に風があたる位置(なるべく近いところ)に置く
というところがポイントになります。
冷風扇は疑似科学?
どうでもいい話をします。
よそのサイトでネガティブな意味で冷風扇を紹介するところが結構あります。
わざわざ部屋を閉め切って「ほら、湿度がぐんぐん上がっていきます!」とか、「汚れたタンクの水をまき散らすのは肺炎の原因になる」とか。挙句「ニセ科学」などと言うワードまで飛び出してきます。
湿度が上がるのは当たり前の話。だから換気しながら使わないといけないんです。お年寄りなんかは本気で分からずに冷房と同じようにこういう使い方をしてしまう可能性があるので要注意です。「肺炎の原因」は加湿器であろうとエアコンであろうと同じで、タンクやフィルターの掃除は定期的にする必要があります。
わざわざセンセーショナルなフレーズを使って否定することがカッコいいと思ってるんですかね?
この小見出し部分は今回の内容に必ずしも必要ありませんが、「ニセ科学」とか「疑似科学」という言葉はそこまでカジュアルに使っていいものではないと思うのですよ。それこそ科学リテラシーの低い人がそういう情報を見ると「冷風扇ってニセ科学らしいわよ」なんて広めるかもしれない。
エアコンの風量問題
ニセ科学と言えば……というと広すぎますが、冷房の風量はどのくらいが良いのか問題。冷風扇とは関係なくなってますが、ついでなので。
最近はようやく常識とされるようになりつつありますが、冷房の風量は強めにした方が燃費が安く(消費電力が低く)なります。って、前にもブログで書きましたけどね。
冒頭の冷房のメカニズムで説明した通り、エアコンのヒートポンプという仕組みにおいては、そのほとんどの電力をコンプレッサー(ポンプ)で消費します。そのコンプレッサーで熱を上げ下げして、その表面に風を当てることで熱移動が実現します。当てる風はただの扇風機なので、消費電力は非常に低いもの。風力を強くすることによる消費電力の増加分より、強い風によって向上する熱交換効率の方が大きいのです。
なので、エアコンで節約したければ、「設定温度は高め、風力は強めが良い」ということです。
まとめ
冷風扇はこんな人にオススメです。
●広い部屋に1人でいることが多い
●エアコンの電気代を節約したい
●扇風機の強い風もクーラーの冷たい風も苦手
●比較的暑さには強い
私が買ったのは1万円前後の商品ですが、床置きタイプでもさらに安いのはあるようです。高いのは3万円超え。でも高いと何が良いのかは分かりません。エアコンなら消費電力が大雑把な性能になりますが、冷風扇はそうではありませんからね。おそらくは水を吸う媒体の表面積が大きくて冷却能力が高いものだと思われます。一定条件下での単位時間当たり蒸発量とか出してくれれば良いんですが。
あとは、ストレートにミストを噴出させるものも。涼しそうですが、パソコンとか錆びそうで少し怖い気もします。
てなことで、この辺で。
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