ワイドナショーで紹介された読解力問題
今、論理的思考力について書こうと思ってるんですが、いろいろ思い出すことがあって、最近ではこれなんです。フジテレビ『ワイドナショー』で紹介されていた読解力の問題。
ついでだからこれをネタにひとつ投稿しておきます。
まずは問題を見て頂きましょう。問題は2つあります。
【問題1】
より引用。
これは注目すべきポイントさえ間違わなければ5秒で分かる問題です。
メジャーリーガーの28%は外国人=アメリカ人は72%
アメリカ人が72%となっているグラフは何をどう見たって②しかありません。
これ以外の要素には一切目を向ける必要がないのです。
「35%?外国人のうちの35%?それとも全体の35%?」
とアタフタしてしまいそうになりますが、これも全く関係がありません。この部分の正解は「外国人のうちの35%」なんですが、意地悪なことに問題文には「全体の」というような限定的な表現を省略しています。そもそも外国人全員合わせて28%しかいないのに、ドミニカ人が全体の35%いるわけがないのです。
言っておきますが、この問題文そのものが文章としては低品質なんですよ。でもそれは、読み手を混乱させるためにあえて「能力の低い」ふりをして書いたもの。それとは関係なしに回答はできるんだというのがこの問題の本質なんですよ。
よって「問題文に不備がある」という指摘は的外れなんです。回答には関係ないんですから。
【問題2】
( )に当てはまる適当な語句を選択肢から選ぶ問題。
セルロースは( )と形が違う。
<選択肢>
A デンプン
B アミラーゼ
C グルコース
D 酵素
これも問題文から余計な要素を取り除いて簡略化してみれば簡単です。
アミラーゼは、デンプンを分解するが、【形が違う】セルロースは分解できない。
となります。そもそも「デンプン」と「セルロース」という、立場が似ていて性質の違う2つの対比を表したものがこの文章であり、「酵素」や「グルコース」といった単語はノイズです。このノイズをちゃんと除去できるかどうかがポイントです。
この文章を書き換えると、
アミラーゼはデンプンを分解する。
アミラーゼはセルロースを分解できない。
デンプンとセルロースの違いは形である。
ということになります。ここまで読めば答えが「A」であることは誰でも分かりますね。
言葉のプロ達がこの問題を理解できない…?
さて、この日の出演者である松本人志、古舘伊知郎、武田鉄矢という、国民からかなり頭が良いと認識されているであろうこの3人、ボロボロでした。
松本は「読解力を養うためには大喜利をやれば良い」と主張しますが、大喜利は「想像力」や「連想力」であって、ここで言う論理的読解力とは違うものです。
「若い人は4文字熟語を使わないのが問題」という武田は、文学的リテラシーと混同しています。この論理的読解力テストには、感情・情緒・詩的表現といったものは一切関係がありません。「1つの事実から確定される別の事実」を見極める、いわゆる「論理国語」の能力を問題にしているのであって、物語を読み解く「文学国語」の話ではないのです。
中学生では約8割が不正解
ちなみにメジャーリーグの方の正答率は中学生12%、高校生が28%だそうです。高校生で28%なら大人でも40%はいかないでしょうね。だとしたら、日本人のうち6割以上はこの文章が理解できない人ってことになるわけです。
話が変わっちゃいますが、言葉によるコンテンツ事業で成功しようと思うのなら、当然ながらこの6割が理解できないものを作らないと話にならないんですよネー。
やっぱりプログラミング教育は必要
この問題の作成者である国立情報学研究所社会共有知研究センター長の新井紀子教授は、この結果を受けて「プログラミングを教えてる場合じゃない」と主張されていますが、私は逆だと思っています。
私が学校でのプログラミング教育に賛成なのは、コンピュータを扱う技術そのものではなく、論理的思考力を養うことにつながると思っているからです。コンピュータは「何だかよく分からないけど、きっとこういうことだろう」と言うような斟酌(しんしゃく)はしてくれません。どこまでもシビアに論理と数値以外は理解してくれない機械です。
自分の思った通りに動いてくれればそれは「論理的」と評価を受けたということだし、不測のエラーが返されたら「論理として間違っている」というマイナスを評価を受けたことになる、非常に分かりやすい教材なのですよ。
今回紹介した読解力問題も、機械的に導出できる事実の見極めの力が試されているわけですよ。
論理的な国語なんて曖昧なことを言わず、論理しか分からない機械を相手にした方がよほど論理的思考力を育成するのに役立つだろう、と。
コンピュータが嫌ならせめてフローチャートだけでも
どうしてもプログラミングとかコンピューターみたいなものに抵抗があるとか、教材に金がかかるといった問題が生じるなら、せめて「フローチャート」を教えてほしいものです。
フローチャートとは、問題解決のための思考(工程)手順を簡潔にまとめたもので、プログラミングの初期段階でも必要だし、コンピュータとは関係なしに考えをまとめるために大きく役立ちます。例えば、議論をしていて話が噛み合わない時は、問題の整理ができずに論点がずれてしまうことが障害になるわけですが、議長がこのフローチャートを作成すれば簡単に論者同士の主張の相違点が導き出せます。
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