謎の口腔炎症
今年に入ってから舌や歯茎、頬の内側なんかが炎症を起こすという謎の病気に罹ったんです。都合4件医者をはしごしましたが、原因は分からず。以前から、体調が悪くなると虫歯でもないのに歯茎が腫れるというようなことがあったので、それのデラックス版だろうとは思うのですが、とりあえず歯科では「唾液の分泌量が少ない」ことを指摘されました。だろうなとは思うし、であるならそこに無理やり理屈をつけるなら「自律神経の乱れ」とでもなるのでしょう。
いや、それは良いんです。今回は健康について語りたいのではありません。
「用法・容量を守れ」とどの口が!?
問題は、はしごした病院のうちのひとつ、ある耳鼻咽喉科でのことです。検査をしてもらったら「口腔カンジダ」が検出されたのでとりあえずそれを片付けておこうと。あ、ちなみにカンジダ菌は結構多くの人の口の中に常在している菌であって、私が何か変なお店に行ったとかそういうことではありませんよ。免疫が弱くなると症状として発現してくるタイプの病気です。
で、カンジダ除菌のために口腔洗浄剤を処方されたんですが、これが問題。まず医師の診断時に薬の説明を聞きます。「10ml口に含んでゆすいで吐け」と。ふむふむ。そして隣の薬局に行きます。「10ml口に含んでゆすいでから吐いて下さい」と。ふむふむ。さっき聞きましたけどね。
帰宅後、早速1回目の口腔洗浄を試みます。どれどれ………ん?「用法・容量」欄に「10倍希釈」とある。え?医者も薬剤師もそんなこと言ってなかったけど10倍に薄めないといけないの?「内容物」に「10倍希釈済みナンチャラ」と書いてあるなら分かるけど、「用法・容量」?量的に考えても10倍にすると多過ぎるが……でも一応薬だから確認しておくか、と薬局に電話しました。
すると回答は「あ、それは10倍希釈した薬剤が入ってます」と。さすがにクレームと言うか説教をしました。今回の症状がそれほどのレベルではないにしても、医療って人の健康や命を扱うものでしょ?医者や薬剤師や薬剤メーカーはやたら「用法・容量守れ」って言うでしょ?でもこれ、読んだら勘違いしますよね?と。すると不思議なことに、相手は一応謝罪はしたものの終始「?」みたいなトーンなのです。とりあえず次の説明書からは記述が変わりはしましたけどね。
何のための院外処方なの?
厚生労働省の指導で「医薬分業」理念のもと、今は病院に行っても薬は院外処方というやり方がスタンダードになってきました。一応名目としては、医者が過剰な薬を処方して儲けるというケースを減らすためだとかそんなんでしたよね。しかし、患者側からすると、「処方料」だの「調剤料」だのなんだのかんだので薬に関するコストは膨れ上がってます。場合によって4倍程度になることもあるそうで。
いや、それもここでは少し違う話。
「医薬分業」で、どうせ「処方」と「調剤・販売」を分けるなら、もっとちゃんとやれよって話です。胃が痛くて内科に行って「胃が痛いんです」「シクシク?キリキリ?バクバク?ズンドコ?」などと聞かれて全部答えてようやく処方される薬が決まって薬局へ。薬局へ行ったら「〇〇という薬が出てますが…医が痛いんですか?どのように?シクシク?ズンドコ?」
なんで2回説明せなあかんねん!!診察室にカメラ置いてそれ見といてくれよ!!
それってDXですか!?
結論に行く前にもう一つ違う話を挟みます。
もらう薬でも、ただの胃薬や鎮痛剤であれば大体どの薬局でも置いていますが、ややマイナーな薬になるとその薬局では置いてないなんてケースがあります。その場合は、大きめの薬局に行くことになります。昔はわざわざ薬局に足を運んで、「すみません、うちこれ置いてないんで数日かかるんです」とか言われることもありました。結局マイナーな薬は大きな薬局に行く必要があって、マイナーなので結構待たされたりしたものです。
それが後に便利になったもので、病院から薬局にファックスで処方箋を送っておくと、待ち時間は大幅短縮♪………って、ファックス!!
いやいや、ファックスなんて昔の話。今ではスマホのアプリから簡単に調剤予約できるんですよ。アプリを開いて「調剤予約」を選ぶでしょ?その後、もらった処方箋をカメラで撮影するだけで……って、カメラ!!
情報を軽視し過ぎる日本人
菅政権下では「ハンコ廃止」「デジタル庁発足」で一応DX(デジタルトランスフォーメーション:情報の電子化による業務・生活の効率化)が進みつつあります。が、それも「一応」です。
先に書いた医療現場での情報の取り扱いを見ていると、本当に日本はダメな国だなと思わざるを得ません。
私の苦情を聞いた薬剤師(かどうか知りませんがとにかく医療従事者)が「?」になっていたことが象徴的で、「今までこれでやっててクレームなんて来たことがないし、言われたことをやってるだけ」てなもんなんです。これDX以前の話で、基本的なリテラシーと「薬局や薬剤師は何のために存在するか」というさらに基本的な分別の問題なのです。
「胃が悪いんですか?」と余計な情報のやり取りはするけど、肝心の薬の説明は杜撰。そして当事者には自覚も責任感もない。「医薬分業」は余計な仕事を増やして国民の負担を増やしているだけなのです。
インターネットは今や基礎的な情報インフラで、誰もが利用するもの。そのネットを使って何をするかと言うと、「処方箋を写真に撮って送る」という実にバカげた手間を増やすわけです。処方箋に書いてある情報なんて、テキスト情報だとせいぜい1KB(キロバイト)かそこらなんですよ。これを写真という画像ファイルにした途端、その情報量は千倍オーダーで膨れ上がります。言うまでもなく「カメラで撮る」という作業も必要になります。
だったら何かしらの医療用電子ネットワークを構築した上で、病院の受付で「どちらの薬局に行きますか?」と聞いて、そこにほんの小さな情報を送ってもらうだけで済む話なのです。あるいは、タブレット一つ置いといてピッピッピっとやればOKってな感じで。
そりゃ経済成長しませんわな
そりゃね、コロナ禍であれだけ話題になったのに未だにファックスがやめられない病院がかなりあると言うんですから深刻ですよ。救急車が患者の元へ駆けつけた後に電話で病院に問い合わせるというのもナンダカナーって話です。
例のマイナンバーカードの不祥事(紐づけ口座が本人ではなく家族になっていたというアレ)だって、根本的なルールを共有しないまま人の力でやろうとするからあんなことが起こったわけですよ。
国民一人ひとりが「自分が社会に提供する生産は何か」という意識が薄弱で「今までこれでやってきたから」「皆やってるから」「上司に言われたから」と言うだけで仕事をする。さらに、業務を効率化されて仕事が減ったら困る公金利権勢力の存在。
こんな国、経済成長するわけないでしょ。
……と、薬の説明書からやや大きな話に持って行きましたが、私は本気でこの光景が今の日本を象徴しているように感じました。
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