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インボイス制度なんて要らない!

金お札1万円札 政治・経済

とりあえず最初に、いつもの私のツイートまとめを載せていますが、後に書く詳細と内容が重複します。時間を無駄にしたくない方は、2つ目の小見出しから読んで下さい。

 

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ツイートまとめ

インボイス制度について、(私の知る限りの著名人では)橋下徹氏や高橋洋一氏が「本来払うべきものを払うようにするだけ」と言う原理原則論を持ち出して肯定するが、この意見については「正しいが、おかしい」と言わざるを得ない。

売上1000万円以下の零細事業者は「不正していたけど見逃されていた」訳ではない。元々「払わなくて良い」という制度だっただけであり、その制度を作ったのはお上である。

事業主にとって、免除されている消費税の原理原則などどうでも良い。事業をする者にとっては、その制度があるならその制度を前提に損益分岐点のグラフを作る。それで商売が成り立ち、生活ができるかどうかが全てだ。

消費税納入義務なしという制度が「不正」だったのだとしたら、その不正を公的に認めてきた財務省の事務次官なり麻生さんなりが前へ出てきて「間違っておりました。申し訳ございません!」と国民の前で土下座したらどうだ?

これまでの制度に則って商売してきた零細事業主があたかも不正してきたかのような空気を作るのはいかがなものか。零細には零細なりの事業計画があるだろうし、零細だからこそ一気にウン十万円のコストが上乗せされるような、恣意的な制度変更をされたらどうなるか、考えてみるべき。

アニメ・漫画のフリーランスは2割が廃業するかも…とは言え、多くは続けるものだと思われるが、本当にやめてしまう人も一定数いるだろう。そうなるとアニメ・漫画文化全体に影響を及ぼすかもしれない。もちろんこの業界自体にも問題はあろうが、それはまた別の話だ。

単に、「零細だろうが消費税の支払い義務を課す」のであればまだ良い。官僚がやるのはもっとゲスく、どうでも良い書類を作らせ、民間業者にも自分達にも余計な仕事を作ることだ。民間には負担になり、行政にとっては予算をつける言い訳になる。本当に腐っている。

インボイス制度で語るべきは「消費税の原理原則」などではなく、それによって民間企業がどう変わるか、だ。「本来の姿がこれであって正しいことをしているのだから、潰れる零細は潰れてしまえ」と言うことなら、それは暴力に等しい。

消費税をきっちり取りたいなら免税枠を無くせば良いだけだし、そうなったら零細には大きな負担になるので、何らかの救済策をセットにすべきだろう。ただでさえベンチャーが育ちにくい日本でこんなことをやる意味がどこにあるのか。

零細事業主にとって消費税支払い義務免除は、【実質的な補助金】として機能してきた。脱サラのスタートアップの背中を押す効果もあった。ここで「お前らの金ではない」と原理を持ち出すのであれば、「そもそも商取引をしただけでなぜ財務省に金を取られにゃならんのだ」となる。

最悪なのはタイミングで、今輸入資源インフレで庶民の生活もままならない時に、こんな施策をやってしまうとどうなるか。サラリーマンだから関係ない、では済まされない。巡り巡って、長期的にじわじわ国民全体を蝕んでいくのではないか?

ということでインボイス制度の意義は全く見出せない。

 

インボイスって何?

そもそもインボイス制度の「インボイス」とは、特定フォーマットに則った請求書(適格請求書)のことなのですが、これを発行するには事業者にある“資格”が必要です。その資格は「適格請求書発行事業者」として登録するだけで良く、これ自体はただの登録でしかないので簡単なのですが、この登録にはある要件を満たす必要があります。それが、「税務署に消費税を納める」ということ。

これ、サラリーマンとかだと知らない人が結構いらっしゃるのですが、小規模事業者は、消費者から預かった消費税を税務署に納める必要がありませんでした。その基準は売上が1000万円以下。ちなみに昔は3000万円以下だったのですが、枠が縮まり、1000万円以下になっていたのです。

さて、インボイス制度が実施されてもこの枠自体は変わりません。

では何の問題があるの?

行政が考えることはもっとイヤラシイのですよ。

 

消費税納めたくない人は納めなくて良いですよ。ただし、その事業者はインボイスを発行できません。インボイスがなければ、その事業者から何かしらのモノやサービスを購入した別の事業者について、消費税相当分は経費として認めませんからね!

というのがインボイス制度の根幹です。

これを、話題になった漫画業界で説明するとこうなります。

 

これまで漫画家X先生は、AさんとBさんという2人のフリーランスのアシスタントを雇っていました。AさんBさんの仕事量は同じで、共に年間200万円の報酬が支払われていました。

ここでインボイス制度が実施されます。するとこの3者にはそれぞれに選択肢が用意されます。

Aさんは適格請求書発行事業者(以下、「登録事業者」)になってインボイスを発行することにしました。当然、Aさんは税務署へ売上の5%(このパーセンテージは業種によります)を消費税として納める義務が生じます。つまり、今のままの報酬であれば無条件に10万円のコストが増すことになります。

Bさんは登録事業者にはならず、消費税納税免除を恩恵を受けることにしました。ところがX先生からすると、インボイスを伴わない支出には消費税分が経費として認められません。つまり、200万円の報酬を支払っても、経費として認められるのは、

200万円/110*100=約182万円

だけであり、消費税分に相当する

200万円/110*10=約18万円

には税金がかかってくることになります。

さて、Aさん、Bさんはどういう選択をするのが正解なのでしょうか。そしてその後、X先生はAさん、Bさんとの契約を続けるでしょうか。

 

これがですね、消費税率引き上げの際だと、中小企業庁なる行政機関が「おたく、取引先から消費税引き上げ分を値切りされたりしてませんか?それ違法行為だから、ちゃんと通報しなさいよ。アタシらが守ってあげますから」とわざわざ封書で何度も企業に送り付けるんですよ(もちろん、この取り締まり行為にも多額の税金が使われています)。理念としては、消費税は消費にかかる税金であり、それは買い手が負担すべきものなのに、立場上優位にある買い手が本体価格をコントロールするようなことがあってはいけない、ということですね。ふむ、分かります。

 

ところが、インボイス制度ではそういう介入ができません(のはずです)。

というのも、インボイス制度に伴う免税枠の撤廃は、考え方を整理できないからです。

強いて言うなら、高橋洋一氏の言うように、「消費者から預かっていたのに税務署に納めていなかった消費税をこれからは納めるようになっただけ」と考えれば、一応はスッキリします。

しかし、おかしい。

 

零細事業者の事業が成り立たなくなる

まず、ツイートにも書いたように、免税枠は制度として存在したのであり、脱税をしていたわけではない、ということ。当然ながら、小規模の起業家は、その免税枠ありきで、小規模ながらも事業計画や生活の算段を立てるわけで、途中から「はい、廃止」などとされたら、事業計画も生活も無茶苦茶になってしまいます。なんせ、多い人だと、利益(売上からコストを差し引いた自分の年収)が250万円であっても、売り上げが1000万円あったら、ある年から有無を言わさず50万円(漫画家アシスタントのような仕事の場合の実質税率です)のコストが上乗せされることになるわけですから。200万円でも10万円。そりゃ、成功のチャンスを窺いながら細々と漫画家のアシスタントをやってる人は、廃業も考えるでしょうよ。

そして、政府もこの小規模事業者の大幅負担増については何も言えないのです。先に書いたように、理念がハッキリしないから。「負担が増えた分、料金を高く設定し直しなさい」なんて言えませんよね。だって、それまでだって消費税はもらっていたことになってるんですから。

 

消費税は「消費者から預かっている金」なのか

「消費者から預かっている税金」という考え方もどうなのか、と。と言うのも、そもそも消費税って誰が払ってる税金なのか?って話です。「消費税って言ってるんだから、消費者だろう」と言うのはごもっとも。しかし、消費税って実施前は「売上税」って呼ばれてたんですよ?ってことは、納税するのは事業者ですよね?

さらにおかしいのは、それが「消費税」と呼ぼうが「売上税」と呼ぼうが、企業(事業者)は自身が支払った消費税分は自身が納付すべき消費税から控除されるという点です。

あれ?では我々消費者が支払った「消費税」って結局何なの?って話ですよ。

つまり、こんなのは言葉遊びであって、政府からすると、商取引の規模に比例して確実に税金を取りたいだけなのです。その呼び方を「売上税」にすると納税者は事業者になり、「消費税」にすると納税者は消費者になる、というだけのこと。

ちなみに司法においては「消費税は預り金ではない」「事業者に消費者の消費税徴収義務はない」ことが認められています。つまり、物価にいちいち「税込み」だの「税抜き」だの「消費税〇〇円」だのと表記されているのは、演出に過ぎないのです。そもそも、税込み110円の商品を目の前にして、「消費税分10円をどう処理するか」なんて選択肢は消費者にはありません。あくまで事業者が価格設定をし、その売り上げから複雑な処理をされた上で事業者がお上に消費税を支払うことになります。さらに、我々が「消費税という名目で支払った」10円は国税局には届きません。複雑な処理を施された結果、実際に財務省に納められるのは一部です。我々が支払った「消費税」はそのまま財務省に渡るわけではない=預り金ではない、ということ。

 

免税枠は実質的な零細事業者への補助金

この「売上税の免税枠」は、小規模事業者にとっては【実質的な補助金】という性質を持ちます。その額は、定額ではなく、売上=事業規模に応じてフレキシブルに施されます。インボイス制度は、実質的にこの補助金を切ってしまう制度改革ということになるのですが、さて、これって良いことでしょうか?

例えば、何かアイデアを持っていて起業したいと思ってるサラリーマンがいたとして、この免税枠があるかないかはどのような影響を与えるでしょうか。言うまでもなく、インボイス制度はそのサラリーマンに起業を思い留めさせる負の効果をもたらすでしょう。

ただでさえ、国民のサラリーマン信仰が強く、規制がガチガチで、起業がしにくく、GAFAのような企業が生まれにくい日本の土壌において、今こんな制度改革をすべきかどうか。

では消費税免税枠をなくす代わりに、起業のスタートアップを支援する制度を作ってはどうか?って考えると、起業に無条件に定額の補助金を施してしまうと、事業実態のない企業が出てくるでしょう。法人税にある程度の累進性を採り入れて零細事業者を救う……というのも、それは利益が出て初めて恩恵に預かれるわけで、どれほど効果があるか分からない。

と考えると、消費税の免税ってものすごくちょうど良かったんですよ。事業規模に完全に比例する補助金を施すのと同じですから。むしろ、今やらなければならないことは、免税枠をなくすことの逆で、免税枠を昔の3000万円まで拡大することじゃないでしょうか。

 

そもそもなぜインボイス制度は必要?

さて、そもそもなぜインボイス制度なんてものが必要なんでしょうか。名目としては、「巷の商取引においては、商品によって10%と8%という2つの消費税があってややこしい。それを正確に把握するためにインボイス制度を開始しまーす」ということらしいです。

ね?

だから言ったでしょ?

「軽減税率」なんて響きの良い言葉を使ってますが、結局はいたずらに仕組みを複雑にし、行政の仕事を増やし、民間の負担も増えるだけ。行政の仕事が増える分には良いんですよ。あいつらは、「仕事が増えたから人も予算も増やして」と総理大臣に言えば増やしてくれるんです。それでさらに権力が増強し、余計な事務局や機関を作っては天下り先を確保する。

しかし、民間にとってはただただ金の巡りを悪くし、事務作業の負担が増え、その負担は【自費】になるのです。

公明党支持者の皆さん、どう思いますか?

 

さらにタイミングは最悪

インボイス制度の問題点は、とりもなおさず、それが実質的な増税であるということです。「消費税の正確な把握」などと言っても、結局小規模事業者には「簡易税率」と言って、例えば漫画家アシスタントのような仕事であれば、「売上の5%」などと大雑把に決められて納税することになります。要するに、正確な数字なんて本当はどうでもいいから納めろよ、ということです。

目下、30年の不景気が回復しないまま、輸入資源の価格高騰という悪いインフレに突入。今、日本経済は大きなターニングポイントに立たされています。円が安くなったのなら、これを利用して製造業を復興させよう!という逞しい政府ならともかく、今の自民党政権はあろうことか、国民負担率をどんどん増やして「防衛費GDP2%」などと寝ぼけたことをぬかすわけですよ。いやいや、経済成長しない国が防衛費のGDP比増やしてどうするの?と。一見、右の連中が喜びそうな話ですが、GDP比増やしてそれを名目に増税してGDPそのものが減っちゃうようなことがあったら意味ありませんからね。逆に、GDP比は今のままでも毎年確実に3%成長していれば、防衛費も勝手に20年で1.8倍になります。GDP比率を上げるのなんざ、経済成長が軌道に乗ってから考えるべきことで、今このタイミングでやるべきことではありません。

インボイス制度も同様。零細事業者にダメージを与え、国民の起業モチベーションを下げるようなことを今やってはいかんのですよ。

 

 

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