犬1匹の生涯にかかるコスト
ペット保険のアニコムのウェブサイト「ペットにかける年間支出調査2019」です。
調査対象の犬の平均年齢は5~6歳、犬種、サイズの区別はなしのようです。
ってことで見てみると、超小型から超大型までひっくるめての平均年間支出額はざっと30万円ちょいだそうで。全年齢の平均ですから、これに犬の寿命をかけると、犬の生涯にかかるコストがざっくり計算できてしまうわけですね。
で、平均寿命を15歳だとすると、その額実に450万円。
いやいや、驚きです。子供を一人大学卒業まで育てようとすると2000万円程度かかると言われていますが、犬1匹でも450万円とは。
結論:貧乏人は犬を飼うな
ということで、また明日。
……いや、いくら何でもこれで1本の記事にはできないので、もう少し。
うちの犬は金がかからない
うちは小型犬2匹を飼っていますが、「極限まで金をかけずに犬を育てる」ことをモットーにしていおります。
例えば食費は6~7割が手作りで、これがめちゃくちゃ安い。ちゃんと計算したことないけど、2匹合わせても2万いかないんじゃないでしょうか。
しつけ・トレーニング料、要りません。
シャンプー・カット・トリミング料、全部自分でやります。一度も業者を利用したことはありません。
洋服。年間平均にすると150円くらいでしょうかね。基本的に服は着せませんから。
たまーに病院には行きますが、ほとんどはワクチン代であって、病気もめったにしません。
どう計算しても、うちの犬は1匹あたり、全部ひっくるめて2万円程度に収まっちゃうんですよ。逆にどうやったら30万円も金が使えるの?と聞きたくなるくらいです。
本当に金がかかるのは老犬になってから
とは言え。
うちの犬もシルバー世代に入って、本格的に医療費がかかるのはここからです。
件の統計では、その30万円ちょいの内訳を見てみると、「病気やケガの治療費」「ペット保険料」「ワクチン・健康診断等の予防費」これらをひっくるめて「医療費」と見た場合、医療費だけで12~3万円程度はかかる計算で、この医療費こそに最も金がかかっているわけですよ。
日本に人間として生まれてくると、その医療環境のありがたみを認識するのはなかなか難しいものです。健康保険と言ったって、その実、半分は公金が負担してくれる公助の度合いが強く、アメリカなんかとは違って、「利用しなきゃ損」というくらいに人間の医療費は安くつきます。しかも高額医療制度なんてあって、一定の上限以上は利用者は負担しなくても良い。日本は医療天国なんです。
ではペットの医療はどうなっているかというと、これが大変。
骨折しました、ハイ35万円。
股関節形成不全が発覚しました、人工骨頭入れますね、ハイ40万円。
あ、ガンですね。抗がん剤投与しましょう。ハイ150万円。
オリンピックで不名誉な話題の主役になった森喜朗氏は全身にガンが回っていたのに、ガンの特効薬であるオプジーボのおかげであんなに元気になっちゃいました。でもあの薬、実費で負担すると1000万単位のお金がかかるんですよね。今はもうちょっと安くなってると思いますが。
このオプジーボは犬猫に応用する研究も進められていますが、じゃあ実際使えるとなって我々飼い主は一体いくらのお金でそれを買えるのでしょうか。想像するのが怖いですね。
ペット用の保険もあります。あるんですが、我々人間サマが加入している公的保険や民間保険のようにはいきません。アレやコレやと条件がついていて、ひとたびガンになったら保険に助けてもらってもとんでもない額の医療費が必要になります。
うちは雑種で丈夫そうなので保険には入らず、自分で積み立てていますが、弱い血統種を飼っている人なんか恐くてしょうがないんじゃないでしょうか。そりゃ保険には入った方が無難だと思いますよ。
いざとなったら人に頼る?
こういう脈絡でリンクを貼るのも多少気が引けるところがありますが、絶好の実例なので勘弁してください。
最近ツイッターなんかでよく見る、ペットの治療費をクラウンドファンディングで集めるという手法です。
ご本人も書いておられますが、10歳のグレートピレニーズが癌にかかったとて、その費用をクラファンで集めようと言う神経が私には理解できないんですよ。
保護犬だったのか買ってきたのかは知りませんが、過去の思い出の写真を多数貼り付けているところを見るに、保護犬だったらそう書いているでしょうから、多分買ってきたのでしょう。
で、その病気は股関節形成不全に10歳での癌。
妥当です!!
プロジェクト内容に記載されたその治療費、ざっと160万円ほど。
妥当です!!
大型犬に股関節形成不全は付き物ですし、比較的若いうちに癌になるのも大型犬の特徴です。そしてグレートピレニーズの平均寿命はまさに10歳前後。治療費も、探せばもっと安くしてくれる病院はあるでしょうが、だとしても相場からかけ離れているとは思えません。何もかもが想定の範囲内です。
で、お金がないから恵んでくれよ、と。
一体、どういうつもりで犬を飼っていたのか、不思議でなりません。
やはり医療費は犬の飼育のネックになる
私が今いる犬の後に二度と犬は飼わないと決めているのは、単純に自分の年齢のこともありますが、ぶっちゃけこの医療費が問題なのです。
改めて申し上げますが、犬には人権がありません。「犬は家族♪」と思っているのはまさに家族だけで、公的にはまだまだモノなのです。人間には手厚い保険もあるし、それがなくなっても最後には生活保護で一切コストゼロで最新の医療サービスを受けることができますが、犬にそんなものはありません。正味、飼い主の財産で何とかしなければ、病気で死んだり、殺処分されてしまうことになるわけです。
判断力の乏しい人間は困窮に陥りやすいものですが、困ったことに判断力がないがゆえに何も考えずペットを飼い始めたりするものです。私が実際に知っている例も複数あります。それどころか、今うちにいる犬2匹だって、そういう飼い主から救済した個体なんですよ。
後先考えない人間に飼われた犬は…?
人間には恐ろしい人がいるもので、何かに凝り始めたら自分の財産を考えずに蒐集してしまう病気の人がいます。誰とは言いませんが、SNSのフォロワーで、〇〇にハマったと思ったら数か月間で何十点というアイテムを買い漁り、それに飽きたと思ったら次は△△に手を出しまた何十点というアイテムを買い漁り、それを数か月繰り返して乞食になっちゃった人もいます。
この蒐集の対象が犬やネコだったら?これまた実際にいるんですね。それまで動物に一切興味がなかったのに、犬を1匹飼い始めたと思ったらあっという間に8匹に。だけでなく、その他珍しい動物までたくさん買い漁って、総額いったいいくらなのかも分からないほど。いやいや、維持費だけで生活費が飛んじゃうでしょというレベルでした。その人の概ねの収入は知っていましたが、結局手離したり、親のすねをかじったりして何とかなったようです。
飼い主が生活保護に!その時ペットはどうなる?
頼る相手のいない人はどうなるでしょうか。
何かしらで財産を失い、生活保護を受けるようになったとしましょう。その時点でペットを飼っていたらどうなるか知っていますか?
実は、生活保護受給において、ペットの扱いは法的に定まっていません。ただひとつ言えることは「ペットの分は出ない」ということだけです。
逆に言えば、ペットの分は出ないけど、ペットを飼ったまま生活保護は受給できますよ、ということ。
しかし、そのペットがヨーキー1匹ならまだ良いでしょう。じゃあボルゾイならどうでしょうか。シェパードとドーベルマン2頭なら?グレートデン5頭飼っていたら?
実際には、小型犬1匹程度の常識的範囲内ならお咎めなしだけど、多頭飼いの場合は「指導」という名の圧力がかかるそうです。ま、当たり前ですね。
そもそもヨーキー1匹だってその分我々の税金で負担しているわけであって、納得のいくものではありません。
と言って、そのヨーキーがどうなっても良いと言っているわけではなく、だからこそ「保証金制度」や「ペット税」といった解決法を私は提示しているのです。ペット税であれば自分が納得した上で支払っているのですから、どこの誰とも知らないヤツが飼っている犬に使われたって良いわけですよ。
まとめ
人間のように人権が保障されていないペットは、あなたがいなくなったら基本的にはそこで終了です。
いや、万一あなたがいなくなったとしても、お金さえ残していてくれれば何とかしてくれる人はいるかもしれません。
さてさて、犬を買う際の初期費用に加えて、紹介した統計に基づくランニングコストはどこまで削れますか?言っておきますが、私が極限まで節約しているのは、「自分で同じことが、あるいはそれ以上のことができるから」であって、放っておいてるわけではありませんからね。
犬に予防接種を打たなくなってとりあえずは生きていきます。栄養を考えずに人間の残り物をやっておけばとりあえずは生きていけます。そうすればよりコストは下げられるでしょうが、言うまでもなくそれは「正しい飼い方」ではありません。
計算の立つランニングコストだけではありません。不慮の事故や病気に備えて保険に入れますか?それだけで年間5~6万のコスト増になりますし、いざ大病を患ったら保険でさえ負担してくれるのは一部です。
450万円とは言いません。150万円+不慮の事態に備えるお金が用意できていますか?そしてこれは犬が1匹の場合の話です。多頭飼いだとこれに頭数がかけられることになります。
さて、改めて結論を。
貧乏人は犬を飼ってはいけません。
金持ちだから犬を飼えるというわけでもありません。家と最低限の貯えを15年あまり維持できなくてはいけないのです。
不公平ですね。でもこの不公平はペットを飼う際に生じるものではなく、もっと社会の深いところにある問題なのです。
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