ちょっと古い話題ですが、麻生財務大臣の「義務教育は小学校まででいい」「微分積分・因数分解なんて大人になっても使わない」発言がちょっとバズりました。
「麻生 微分積分」でツイッター検索してみてください。まあ、賛同なんてどこにも見当たらないほど“知的な人”で溢れています。ハイ、この書き方は皮肉ですよ。
あ、と言って私も麻生さんに賛同しているわけではありませんから。その反発がアホ過ぎるだろってだけで。
実際、微分積分や因数分解をいつ使うの?
つまり麻生は大人になって微分積分や因数分解を使う人に一人も出会ったことがないくらい馬鹿の集団にしか所属した事がないと。
そりゃ指数関数的増加の意味がわかんなくて自爆したわけだ。本当にあんなのが副総理かつ財務大臣ってやっぱ日本はすごい国だよな、国というのは滅ぶべくして滅ぶんだな。
— 愛国心の足りないなまけ者 (@tacowasabi0141) May 27, 2021
フォロワー数2.8万人のインフルエンサーのツイートですが、よく考えてみたら「馬鹿の集団」とは恐ろしいくらい差別的発言ですね。
で、実際、微分積分や因数分解はいつどんな時に使うんですか?私は一度も使ったことないんですが。言っておきますが、ある程度は理解していますよ。息子にも教えてるし。でも、教える以外で実用的に使った事など一度もないのです。高校生の時に何かのプログラムを作るのに微分積分を使ったことがあるかも…?という程度です。
体積、面積を計算するのは全て積分です。
これの発想がなければ、立方体や球、正○角錐以外の体積は求められません。
また、曲線の長さも求められません。
速度、加速度を求めるのは全て微分です。https://t.co/yGLWYcksa1— ちー (@anothersky_rjdc) May 27, 2021
仰る通り、積分とは空間次元をひとつ上げることに他なりませんから、面積・体積の算出には積分が深く関わります。で、貴方は中学校で面積・体積を出すのに積分と言う「手法」を習ったんだい?って話です。積分を知っていれば複雑な形の面や立体の量を算出できるけど、いつ使ったの?って話です。
>微分積分
日常で使ってる製品やサービスの多くが作れなくなるんですがそれは🙄https://t.co/xLHVAk7Ebh— ぴょんぴょんストア (@pyongpyongstore) May 27, 2021
GPSの技術にはその補正のために相対性理論が使われていますが、その技術開発に従事する人達は相対性理論をいつどこで習ったのですか?パイロットは飛行機操縦を高校で教えてもらったのでしょうか?あるいは逆に、学校で微分積分や因数分解や三角関数などを習っておけば、いざ実用って時に教科書を読み返さずとも済むでしょうか?
現実として、全体を見れば、社会に出てから職業上、微分積分や三角関数を使う人なんて【ほとんどいない】のです。
生きた知識とは
実はこの議論、かつて橋下徹の「三角関数なんて要らない」発言によって為されていたんですよ。その時私がこのブログで書いたのが、橋下氏に賛同、だったのです。
私は少年時代、パソコンでプログラミングをやっていて、ちょっとしたゲームなんかを作ったりもしてたんです。ゲームでキャラクターにちょっと複雑な動きをさせようとすると、三角関数というのは避けて通れないわけですよ。例えば、シューティングゲームで敵の弾が自機めがけて飛んでくる。この時の動きには「任意の角度から1次関数の係数を算出」する必要があって、その時に三角関数が必要になってくるわけです。学校で三角関数を習った私は嬉しくなってすぐに家でプログラムを書きました。
職業にこそしませんでした(プログラミングを仕事にしたことはあるが、三角関数は使ったことない)が、学校で習ったことが「生きた知識」になったわけです。
が、それは特殊事例であって、多くの人にとって三角関数に興味を持てと言われても土台無理な話。結局生きた知識は、「必要に迫られる」か「興味を持つ」かのどちらかでないと身に付かないのです。
これを読んでいる皆さんも実感を持てると思うのですが、学校の授業でトップダウン式に詰め込まれる1時間と、大人になってから自分が知りたくてウィキペディアを漁っている1時間、その密度の違いは100倍以上ではないでしょうか。
私が新卒で就職活動する際、いくつかの企業のセミナーに出席しましたが、コンピュータ関係をやりたかった私は「プログラミング経験はありますが、特に資格は持っていません」と言うと、採用担当者は「専門学校出てて資格持ってても使い物にならないヤツはいくらでもいる。そんなことより実際に自分でやったことがあるかどうかの方が大事」と言われたことをよく覚えています。
実践社会では、生きた知識こそが重要視されるわけですよ。
だが、中学進学は義務で良い
じゃあ麻生さんの言ってることは正しいかと言うと、その趣旨のベクトルとしては賛同しますが、具体案としては反対です。
麻生さんいわく、「高校は義務ではないが実際ほとんどの人は高校に進学する」ことをひとつの根拠として「義務教育は小学校までで良い」と主張するわけですが、その根拠に基づくならそもそも義務教育なんて要らんだろってことになるんです。だって義務教育じゃなくたって、国や自治体から補助金が出てるならどっちみちほとんどの親は子を小学校に通わせるでしょう。
藤井聡太のような、学校に行かなくても学力が身に付くというケースは例外中の例外であり、政治は平均を主眼に置かなくてはいけません。中学校の学習はまだまだ基礎教養の段階であり、例外中の例外のために「中学校に行かなくて良い」という選択肢はあってはいけないと私は考えます。そもそも、中学校に通わせることを義務化していることで何か困ることがあるのか?と言うと、ないのですよ。逆に、義務から外してしまうと、中にはいい加減な親がいて、負の意味での例外が生じやすくなる可能性が出てきます。
人間の十代前半なんてまだ適性も良く分からない段階です。自分が何に向いているか、何をやりたいかの方向性を決めるのに、ほとんどの場合、中学校は早すぎるのです。詰込み的にいろんなことを教えて、知識を得るための知識、知恵を得るための知恵を身に付けるのが中学校の目的と言えるでしょう。
仮に中学進学を義務から外すとするなら、今の高卒認定試験の中学版とか、あるいは私がかねてより提唱している「国民検定」のような制度を設けて、その人の学力を査定できるようにしておかないと、企業は雇おうとも思わないでしょう。
そもそもそれ、高校の話なんだけどな
そもそも微分積分も三角関数も、中学校では習いません。
「微分積分は実社会で使われないから」を理由に「義務教育は小学校までで良い」と主張する麻生さんに反論したいなら、その前に「高校進学を義務化せよ」と言うべきなのではないですか?だって微分積分って必要だと思ってるんでしょ?
私からすると、数学のこのカリキュラム設定は結構絶妙だと思います。高校ではより明確な選択制にして、微分積分や三角関数を学ぶ子と学ばない子をきっちり分けてしまえば良いと思うんですよ。だって、イヤイヤやったって将来使うことがないどころか、社会人になったらほとんどの人は忘れてるわけですからね。そんなことに貴重な授業のコマを使うよりも、中学までに学んだことをどう実践で役立てるかを教えた方が良いと思うんですよ。
コロナ禍は日本人の低学力が生み出したモンスター
例えばです。
今回のコロナ禍については当ブログで無数の記事を書いてきました。それは主として大衆の学力の低さとそれを利用するマスコミや医師会についてです。
「いやいや、お前ら、統計をちゃんと見ろよ!何が足りてて何が足りてないか、冷静に見極めろ!騙されてるから!」
と言ったことを主張し続けたのですが、この場合の学力って中学レベルですからね。
いや、ちょっと利発な子なら小学校でも分かることです。
つまり、ほぼ100%の人が中学で国語や数学を学んだはずなのに、それが全く生きていないのです。それは、数学を学んでも「数学をどう使うか」を教えていないためです。
数学を教えても基本的な統計の見方すら分からない。
国語を教えても議論はできない。
英語のマニュアルは読めても英語で挨拶すらできない。
日本の教育は徹底してインプットに偏り、アウトプットを無視してきたのです。自分の頭で考えて、独自の見解を持ち、それを表現する、という能力が育たない訳ですよ。
という訳で、麻生さんは決して賢くないけど、反射的に叩いてるヤツはもっとバカ、というお話でした。
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