河野太郎防衛大臣の女系天皇容認発言でにわかにツイッターが天皇論で沸いております。
この皇統継承問題については、以前運営していたブログでちょろっと書いたくらいで、その後ほとんど言及していないのですが、その理由は「面倒くさいから」なんです。
以前書いたブログにおいては、私は「女系天皇容認」としていたはずですが、実際は男系固持派でもなければ女系天皇容認でもないのですよ。
なんだそれ!?と思われるかもしれませんが、この荒っぽい対立構造には、「国民にとって天皇とは何か」という最も大事な視点が抜け落ちており、その前提においてはどちらに属しても私にとっては意味のないことなのですよ。
そもそも「天皇」とは
科学的に歴史を辿っていけば、天皇と言えども決して清廉な存在ではなく、血生臭い権力闘争の果てに今の「皇統」が出来上がっているわけで、さらに元の元を辿っていけば、釈迦のような聖人であったかもしれない一方で、ただのヤクザだった可能性だってあるわけですよ。
でも重要なのはそこではなくて、天皇の価値というのは、その後に徐々に築かれていく(男系)血統であり伝統であるわけです。
そして武士が政をやるようになって天皇は「象徴性」を帯びて来るようになり、第二次世界大戦を境に憲法においても「日本の象徴」とされました。
その象徴たる天皇のお仕事は、第一に日本国民のために日々祈るということ。天皇は第一義的に「祭祀王」であり、「神道の長」であるわけです。被災地に慰問に回られるのも、広い意味では祭祀王のお仕事なのかもしれません。
では「日本の象徴」とは?
ここが大事なのは、天皇は単に法で「日本の象徴」とされるだけではなく、実質的にも日本の象徴だということです。
この「日本の象徴」には2つの意味があって、ひとつは対外的象徴です。つまり、外国人が天皇を見て「これを日本人だと思う」ということです。この値打ちが日本人自身にはピンと来ないんでしょうが、天皇が海外に対して持つ権威やポジティブなイメージと言うのは計り知れないものがあります。なんせ、小さく見積もってもローマ教皇(法王)と同格なのですから。地球上で最も権威を持つ2人のうちの1人が日本の天皇なのですよ。
もしこの天皇と言う存在を失ってしまったとして、こういった存在をまた作り直せるかと言うと、ハッキリ言って無理です。できたとしても最低1000年かかります。
次に対内的象徴という側面。
個人的にはこれが最も大事だと思ってるんですが、天皇陛下って怒ったりしないでしょ?談話の最後に「チャンネル登録をお願いします」なんてことも絶対に言いません。そして何より、常に正しい日本語をお使いになります。天皇がお話になるその姿には、純粋培養された究極の気品、柔和さ、知性が凝縮されているのです。
特に、個人的には「言葉」と言うのは重要なファクターで、世の中を見渡しても完ぺきな日本語を使っている人なんてほとんどいないんですよ。
学校の教師?めちゃくちゃですよ。
アナウンサー?原稿レベルではほぼ完ぺきですが、トークになるとダメ。
ゆったり落ち着いて、日本人が使うべき日本語を話す人というのは実に限られていて、天皇や皇室の方々はその貴重な人間の一部なのです。
天皇がいなくなったら「象徴」は?
「男系こそ天皇の定義。もし男系が途絶えるようなことがあったら、その時点で天皇は終わりで良い」
と主張するのが明治天皇の玄孫である竹田恒泰氏。
こういう極論はもちろん、男系が途絶えずに済むという前提なのでしょうが、それにしても「天皇は終わりで良い」と言うのは、私には受け入れがたいものがあります。
私にとって最も重要なことは、象徴という機能を持つ天皇です。外国人から最高レベルの良いイメージを持たれ、日本人には日本人のあるべき姿を見せてくれる。それが私にとっての天皇です。
この象徴天皇は、何としてでも継続すべきかけがえのない日本の最重要資産です。
ここで、「じゃあお前は女系を認めると言うのか?」って話になるわけですが、冒頭で申し上げた通り、私はどちらもでないのです。
男系固持派は過去の保守派を批判すべきでは?
右側、つまり男系固持派は、女系容認派を「天皇の何たるかを分かっていない!」「伝統ガー!」「皇統ガー!」と女系容認派を批判するわけですが、私から言わせれば、
「いやいや、違うだろ。あんた達が批判すべきは何よりまず、何もしなかった過去の保守派だろう」
なんです。
そもそも。
「天皇が側室を拒絶」
「GHQによる11宮家解体」
という2つのでっかいネガティブな条件が揃った時点で、皇統が途切れるという将来の危険性は確定していたのです。
そして、前者はともかくとして、後者の宮家解体については、終戦後まもなく日本は主権を回復したのだから、どうとでもなったはずなのですよ。
なぜ、今頃になって「男系が途絶えるギャー!」「皇統ギャー!」などと騒ぐようなバカバカしいことをするのか、さっぱり分からないのです。
それほどまでに大事な男系なら、半世紀前に対処しとけよって話なんです。
昭和40年か50年頃までに旧皇族の皇籍復帰を果たしていたら、当時としてはまだ感覚として十分受け入れられたでしょうし、今頃大騒ぎをすることもなかったのですよ。
終戦から70年以上経ち、元号が2回変わった今頃になって、旧皇族の助けを求めようというのはいかにもみっともない。
おかげでしなくてもいい論争に…
で、そういった先人の怠惰によって、今「女系を認めるか否か」なんて論争に発展してしまっているわけですが、私が「どちらでもない」と言いたくなるのは、どちらかの見解を表明した時点で、自動的にこの対立構造の中に組み込まれてしまうからなのです。
また、実際に「どちらでもない」ということもあります。
私が重要視するのは、何度も言うように「象徴としての天皇」であって、象徴という機能を果たしてくれる存在は日本にとってずっと(できれば未来永劫)必要だと考えているわけです。私にとってこの優先度は、男系よりも少しだけ高いものであり、たとえ男系が途絶えても続けて頂かなくては困るのです。
男系で繋げられるならとっととやってくれよ
……って言うと、男系固持派が「ガーーッ!!」って言い出すんですが、私は積極的に女系を容認する立場ではないのですよ。
河野大臣もそうかもしれませんが、少なくとも河野さんよりは男系を重視していると思います。女系容認はあくまで最後の手段であって、可能であれば男系による皇統を守り続けるべきだと思っているわけです。
だから、やるならとっととやってくれ!なのですよ。安心させてほしいわけです。
旧皇族の皇籍復帰となると、当事者の家にとっては一大事であり、極めてデリケートな話です。当然、結論が確定するまではその交渉の進捗具合なんて公表されるはずもなく、水面下では話がどんどん進んでいて、我々一般国民は知らされていないだけなのかもしれません。
が、そういった事情が想像できたとしても、やはり遅すぎるんですよ。
自分と違う立場だからといって軽々しくレッテルを貼るな
そうなると、私のように未来永劫の天皇の存在を望む者からすると「マジで男系途絶えた場合どうする?」と考えるのは当たり前ですし、今回の河野さんのコメントも概ね同じでしょう。
それをですね、少しでも女系容認するような発言を見つけるなり「パヨクめ!国家転覆を企む国賊め!」となっちゃうヤカラがいるわけですよ。
何度も言いますが、私は絶対男系でもありませんし、積極的に女系容認という立場でもありません。そのどちらかを言うと、「ネトウヨ」「パヨク」のレッテルを貼られるのが物凄く嫌なのです。「ネトウヨvsパヨク」の諍いは、「国民にとって天皇とは何か」という最も重要な要素を無視した、地に足の着いていない空中戦であり、そのくだらない論争に巻き込まれたくはないわけです。
皆人の話はあまりちゃんと聞いてくれませんから、じっくり考えた上での「女系容認」も、街角インタビューでありがちな「男女平等の時代だから~♪」なんて言うカジュアルな感じの「女系容認」も、それこそ国家転覆を企む反日の「女系容認」も一緒くたにされがちです。
特に反日の連中にとって、女系容認は「大きな前進」であり、彼らが喜ぶようなことはしたくありません。
本当に天皇が続いてほしいから女系容認という考えもあれば、天皇の権威が損なわれることを目論む女系容認もあるのです。
まだまだ書きたいんですが、続きはまたいずれ。
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[…] ※編集部より:この記事は、小ライス氏が運営する「知の小人ブログ」の2021年3月24日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はコチラをご覧ください。 […]