ノーリード論その3~では犬はどこでリードを外せば良い?~

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拘束される犬は神経質になる

私のしつけ論においては、「家の中にケージを置くな」と主張しています。

これなんでかって言うと、ひとつは「閉じ込めると可哀想だから」。もうひとつはその逆で、「犬が好んで入りたがるようになっても困るから」なんですよ。

前者はともかく、後者がなんで困るのかを犬を飼っている人でさえ理解していません。

わざわざ自分からケージに入りたがる犬にとって、そのケージは「城」であり「最後の砦」です。そこを侵されそうになったら、犬は逃げるのではなく、「迎撃」しようとします。逃げないのも当たり前で、ケージって物理的に袋小路ですからね。自分の安全を確保しようと思ったら、「敵は排除」となるわけですよ。

で、問題なのはこの「敵」の認識でして、「普段は大人しくて可愛くていい子なのに、ケージに入っている時だけはそこに手を入れようとすると、あるいは近づくだけでも噛み付こうとしてくる」と相談してくる飼い主さんが非常に多いんですよ。

シーザー・ミランは「あらゆる物について犬に所有権を認めてはいけない」と教えていますが、ケージは犬にとって「自己所有の不動産であり、最大の財産」です。ちゃんとしたしつけが出来ているなら良いんですが(というか、ちゃんとしたしつけにケージは不要なんですが)そうでない場合、犬にとってケージと言う聖域に足を踏み入れようとするものは何者であれ敵と認識してしまうわけですよ。

リードというのも基本的には同様の効果をもたらします。動きを制限された犬は逃げようがありませんから、極端な例で言うと、過剰に「敵」を認識するようになり、いざ敵と認識した相手には命がけで排除しようとしてきます。

ケージにしろリードにしろ、動きを制限するというのはこういうことなんです。

えーーーっとね……。どの記事だったか忘れてしまったのですが、以前に、「ケージ越しには殺そうとばかりに別の犬に吠えかかる犬が、ケージを外した途端大人しくなって相手の犬の匂いを嗅ぎ始める」という動画を貼ったことがあるんですよ。人間は犬のこういう行動原理を理解しないといけないんです。

 

初めてノーリードにするのは怖い?

まとめに入る前に、ついでなので、初めてノーリードにする時はどうすれば良いかという話を。

と言っても、家の外でノーリードにできる場所と言えばドッグランくらいのものですね。後は、田舎の原っぱとか。それでも法律持ち出してギャーギャー言う連中はいるでしょうが、とりあえずそういう場所があったと想定して話をします。

私が自分の犬のリードを外す場合、特に気にすることは何もありません。信頼関係ができているという前提で実行するので。

でも普通の人は怖いものです。

そういう場合はロングリード(できるだけ軽いものが良いので、長いビニール紐とかでも可)で様子を見ましょう。まずは通常のリードで、リードを外したい場所を好きなように探索させます。ひとしきり情報が収集できれば犬は安心するので、リードを外すのもその後の話。

で、ロングリードに切り替えて、通常のリードを外してしまいましょう。せっかくロングリードにしているんだから、犬を追いかけたりはしないように。3mなり5mなり、通常のリードでは離れない距離まで離して、名前を呼んでみましょう。呼び戻しの訓練です。できなければ失格。しつけの基本からやり直しです。

…なんて話も近くにドッグランがない場合のこと。たとえ他に人や犬がいなくても、犬がどこかに行って戻ってこなかったら大変なので呼び戻しの訓練が必要なのです。元々フェンスが設置されているドッグランであればそんな心配もありません。飼い犬に攻撃性がない、他に攻撃的な犬がいないということが確認できれば、とっととリードは離してしまいましょう。

実はこの話の肝はここにあります。

いかにも犬のしつけに厳格な人、我こそは常識人であると言わんばかりに上から目線で語る人に多いのは、「ドッグランでノーリードにするのはしつけができてから!」という主張です。

しかし私から言わせれば、それは半分。あとの半分は因果が逆で、フリーの状態だからこそ犬は社会性や感情コントロール術を学べるんです。

大事なのは簡単な話で、他の人や犬を傷つける能力のない幼犬のうちからドッグランに慣らしておくこと、なんですよ。

なぜドッグランが増えないのか?

さて、ではその肝心のドッグランは増えたでしょうか?

高速道路のサービスエリアでは格段に増えました。東名高速の主要なSAだとかなりの割合でドッグランが設置されています。が、これは言うまでもなく高速道路利用者だけが使えるドッグランであり、我々は高速料金という形でお金を支払っています。

では下界ではどうかというと、20年前に比べると減ってはいないにしても、ほとんど増えていないというのが実情ではないでしょうか。あるとしても、ショッピングモールなんかの小さい上に高い料金が伴うドッグランです。自治体に要望を出しても先述の通り。

10軒に1軒の家庭が犬を飼っているにも関わらず、です。

その原因の一つは、自治体にドッグランを設置するというインセンティブが生まれづらいからです。ドッグランがなくてもクレームが来るわけではなく、来るのは「要望」だけです。要望は要望でしかなく無視したところで役所は差し支えありません。

私が市長ならドッグランをいくつか新規設置して流入者を増やしますけどね。これ割とニッチなやり方でひょっとしたらコストをほとんどかけずにかなりの効果があるかもしれないのでお勧めなんですけどね。

それともう一つは、間接的な原因になりますが、当の犬の飼い主自身がドッグランを決して強くは求めていないというのがあると私は思っています。それは「ドッグランがあったらいいな」と「犬のしつけのためにドッグランは必要である」の違いであり、この2つの考え方には大きな距離があるんです。

結論、「犬は飼うな」

「ドッグランがあったらいいな」程度の人が集まって連名で役所に要望書を送りつけるなんてことはまーないでしょう。そもそも数も揃わないでしょうし。

そして社会は犬を理解してくれません。そりゃそうです。犬の飼い主だってその多くは犬の習性や心理を理解していないのですから。

うちの近所にある自治体所有の広大な原っぱは、そのほとんどがデッドスペースで、ドッグランに最適なのですが、いつまで経ってもドッグランは設置されません。それどころか、なんとロングリードすら禁止です。物理的に犬と接近することすら難しいほどの広さなんですが、たまたま犬嫌いの人が役所にクレームを入れたのでしょう。ヘタすると、特に何もなかったのにロングリードで犬を走らせる飼い主を見かけただけでクレームを入れた可能性だってあります。

年に1度の小学校の運動会ですら、「音がうるさい」というクレームに馬鹿正直に応じて、スピーカーを使わずに実行してしまったりするんですから、それが犬であれば何をかいわんやです。こういう「個々が『嫌い』を主張する権利」を認めるヘイト社会において、犬は被害者でしかないのです。

身も蓋もないような結論ですが、私がかねてから「犬を可愛いと思うのなら犬を飼うな」と言うのは、まさにこれらの事情からです。

どうしても飼いたいならドッグランのそばに引っ越すことでしょう。

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