強制殺処分までの手続き
飼っていたグレートデーンが家族である11か月の幼児を噛み殺してしまうという痛ましい事故が発生しました。
50代のお祖父さんと11ヶ月の孫がエサをやりに行ったところ、2匹のグレートデーンが孫に噛みついて、2時間後に死亡が確認、と。
この犬が殺処分になったかどうかはまだ報道がないので知りませんが、多分なるんでしょうね。
そもそも、こういった事故に基づく殺処分の手続きはどうなっているのかというと、まず自分の犬が誰かを噛んでケガさせると、保健所に通報する義務がわるわけです。その上で各都道府県の知事に情報が上がり、知事の裁量次第で殺処分されることになります。
実際に殺処分になるのは稀だそうですが、このグレートデーンのケースは微妙なところになるんでしょうかね。
まず、犬の咬傷事故について、行政による殺処分以外の法的な扱いを整理してみましょう。(あ、正確じゃないかもしれないので、本気で知りたいなら専門家のサイトで確認してくださいね)
刑法
自分の飼い犬がよその人を咬んで怪我をさせたら、業務上過失致死傷罪に問われる可能性があります。つまり、あなたは「犯人」になり、逮捕されて罪状が確定したら「前科1犯」(人によってはこの数字も変わりますが)となるわけです。
民法
当然ながら自分の飼い犬が与えた損害については賠償責任が発生します。現実問題として刑事立件よりこちらの方が怖いですね。賠償額に上限なんてありませんから。よその子を咬み殺してしまったりなんかすると、そりゃもう大変なことになります。
「怪我」と言っても10kgに満たない小型犬ですら、後遺症の残る怪我をさせることはあります。
これをまとめますと、自分の犬が人を咬んで怪我させてしまった場合、
あなたは「犯人」となってヘタすりゃ牢屋にぶち込まれ、
被害者からは場合によってウン千万という損害賠償を請求され、
犬は都道府県の権限で殺されてしまう
可能性があるということです。
このグレートデーンは何が問題だったのか
さて、このグレートデーンの話に戻しましょう。
と言っても私はこの犬や飼い主の知り合いでもなければ、現場を見たわけでもありません。ただ最低限の事実を報道で知っただけで、そこから「何がどうなってこうなったのか」という予測を想像の範囲で語るだけです。
グレートデーンの犬種としての特徴
まずこの犬種の特長ですが、見た目は顔が怖い上に体がめちゃくちゃでかい。「体高」で1mに達する個体もいます。犬のイベントなんかで見かけるとその異様な存在感で他のどの犬よりも来場客の目を引いています。私が「うわ!でか!」と思った子でもたしか体重は60kgとかそんなもんだったでしょうか。でも最大級になると90kgにもなると言うんですから、まーデカい。
性格は温厚で人懐っこい。
……はい、ここがポイントです。
超大型犬が人に危害を加える事故の場合、多いのが闘犬です。闘犬は身体能力がものすごく高い上に、性格がアグレッシブですから、そういう事故は起こるべくして起こっているわけですよ。個人的にはその感覚は全く分からないんですけど、金持つといかつい車に乗りたがるタイプの人の心理と同じなのでしょう、大きく、顔が怖く、性格も凶暴という個体を好む飼い主がいるようです。
性格が温厚=安全、ではない
こういうのは論外として、今回のグレートデン。
温厚で人懐っこいのに、子供を噛み殺してしまった。
「温厚で人懐っこい」は本当です。でも信用してはいけないのです。
犬と言う動物は高い社会性を持ち、本来どの犬でも人懐っこくさせようと思えばさせられます。その中でも大型犬は、小さい犬種に比べて神経質である必要性が薄いので、「温厚で人懐っこく」なるのは当たり前の話です。
が、
「温厚で人懐っこい」=「人に危害を加えない」
ではないのです。
これまた物凄く当たり前の話でして、今愛玩犬とされている犬種も元を質せばほとんどが、その身体能力と攻撃性を活かした使役犬です。グレートデーンだって、小動物を狩る狩猟犬だったり、家畜や農場をイノシシなどの害獣から守ったりする番犬の血が混ざってできた犬種です。
もちろん、どのような犬種も、ここ数十年はほとんどが愛玩目的なので、できるだけ温厚で飼いやすい性格の個体の血が残されてきてはいるでしょう。しかし、だからといって狩猟犬の血がなくなるというわけではありません。
可愛いヨーキーがボールを追いかける光景は微笑ましいものですが、あれだって元々は小動物を捕まえて食べようとする行為のシミュレーションですからね。
抱っこされている動物を引き摺り下ろそうとする習性?
これね、不思議なんですが、落ち着きのない犬の中には、人間に抱き上げられた別の犬に飛びついて引きずり下ろそうとする習性が時折見られるんですよ。私の知ってる犬は、身内の犬はもちろん、よその犬がよその人に抱っこされてていてもこれをやりました。当たり前ですが、めっちゃ危ないです。うちの犬もこれをやられて、あやうく大けがするところでした。
これがどういう本能に基づく行動なのかは私にも分かりませんが、もしあなたの犬がこれをやるのであれば、即刻修正させてください。自分で治す自信がないならプロのトレーナーに頼みましょう。
↓つづく
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