【お悩み相談】フレンチブルの問題行動

犬種

「体重60キロのオバサン」さんからご相談を頂きました。ありがとうございます。

全文を確認したい方はこの記事のコメント欄をどうぞ。ここでは概要と質問だけを抽出します。

8か月のフレンチブルを飼っているが、アグレッシブ過ぎて困っている。
普段は呼び戻しが出来てもドッグランではできない。
よその犬と遊びたがるが荒っぽくて嫌がられる。

 

さて、

(1)ドッグランで呼び戻しをするにはどうすればいい?
(2)怖がる相手にまで接触しようとするのはどうすれば治る?

というのが、今回のご質問です。

 

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フレンチブルドッグの特徴

実はフレンチブルについては、過去記事で「問題行動を起こしやすい犬種」としてちらっとだけ書いたことがあるんです。

平均的なフレンチブルの特徴としては以下のような感じ。

性格:基本的に陽気でアグレッシブ。成犬になっても幼稚さが抜けず、物事の加減を理解しづらい。

身体:成犬は10kgを超え、ブル系ということもあって筋肉質。もちろん顎の力も強い。

この性格と身体の特徴が合わさると……あまり良い想像はできませんよね。「大きなパグ」と思って飼い始めると痛い目に遭う可能性大です。パグは温厚で非常に飼いやすい犬種ですが、フレブルは正反対だと考えてください。他に見た目が似ている犬種にボストンテリアがいますが、ハッキリ言いますと、ボストンテリアに比べてフレブルはかなり幼稚です。

威嚇している犬の場合はしばらく様子見をしますが、たいていうちの犬が即座にひっくり返り、隙をみてまた遊んでポーズで付きまとってしまいます。

犬好きからすると堪らない光景ですが、これが相手によると迷惑行為になっちゃう、というわけですね。

 

まずはドッグラン入場時の儀式

ドッグランに入ってテンションが上がりすぎて問題行動を起こす犬について、共通のルーティーンを紹介します。

やることは実にシンプル。ドッグラン内で「いつもの散歩」をするだけです。

リードを繋げたまま、リーダーウォークを意識してスタスタ歩き回って下さい。まずは内周を2~3周。その後、敢えてよその犬に近づけます。その際、愛犬がよその犬に強い執着を見せても、前を向かせてスタスタ歩き続けて下さい。強い力で引っ張っても構いません。

その時使うべき拘束具は当然スリップリードですが、ヘッドカラー付きリードはさらに効果てきめんです。


ヘッドカラーは物理的にマズルを拘束する力はほとんどありませんが、意識を飼い主に集中させる効果はかなり期待できます。これを使った途端、リーダーウォークがスムーズにできるようになったという人は直接の知人でも複数います。

視覚・聴覚・嗅覚が強く刺激され続ける環境の中、これでドッグラン内を「散歩」させてみて下さい。

 

ドッグランで呼び戻しができない

そして呼び戻し。そもそもドッグランで呼び戻しをする必要性を感じるのはどんな時か、なんですよね。もちろんうちの犬はできますが、基本的にドッグランに入れたら帰る時までは完全にフリーなので、犬を呼ぶという行為そのものがほとんどないのですよ。

で、相談者さんの場合、よその犬への接触を制御したいからということだと思うのですが、

毎日短時間呼び戻しの練習はしていますが、実践で使えない呼び戻しの練習でも続けるべきでしょうか。

とのこと。まず、この練習自体は大事なことなので続けて下さい。ただし、目下の問題の解決法にはなりません。それは、状況が違うと犬のモードが切り替わってしまうからです。この問題の根本部分は後述しますが、ここでは一旦直接的な回答をご用意致します。

 

まずドッグランでフリーにする場合も、リードを付けたままにします。最適なのはしつけ用のショートリードですね。

これはいざ愛犬が逃げた際に捕まえやすくするのと、飼い主の意思表示(感情表現)に使います。

 

で、フリーにしてみて呼び戻しを試みる。全く帰ってこない。
その時、飼い主さんはトーンを少しずつ上げながら3秒間隔で名前を呼びつつ、近づいていきます。
最後の最後まで飼い主さんを無視するようであれば、リードを強めに引っ張って、犬の意識をこちらに向けます。
両手で顔をしっかりホールドして何かしらの言葉で意思表示してください。「なぜ来ないんだ!」とか何とか。
そしてその後、3分間はそこにじっとさせます。リードは軽い緊張状態を保ちます。

3分経った後、再度フリーに。

しばらく遊ばせてみてもう一度名前を呼んでみましょう。

さっきと同じであれば、「顔のホールド」ではなく、首輪を持ってその場で押し倒します。顔の片側を強めに掴んだ上で、お腹も軽く掴みましょう。
その状態を維持したまま飼い主さんが自分の顔を犬の顔にくっつけます。
そして「さっき言ったよな?あぁっ!?」とすごみます。

ここからが少し難しいと思うんですが、その状態から手を離します。犬が動こうとしたらその瞬間再度ホールドします。そして「動くな!」と。何度か繰り返して、手を離しても犬が動かないのであればOK。10秒ほど維持できれば「よし」でも何でも良いので合図を与えて、再度フリーにします。

 

以上を繰り返してみて下さい。

 

より発展的な対策

それでも治らないという場合、まずは、

よく見る口輪を使ってみます。これで少なくとも口による接触はできなくなりますから、相手方の飼い主さんもそれなりに安心してくれるでしょう。

もちろん、これでも手(前脚)による接触や体当たりまで制御できるわけではありません。
私がこういった問題行動を起こす犬を3日だけ預かって何とかしてくれと頼まれたら、これを使います。

音、振動、微弱電流といった刺激を与える特殊な首輪です。多くの人が抵抗感を持つアレですね。

イメージはともかく、犬の問題行動の修正に「不快な刺激を与える」のは当たり前のことなので、どうしてもという場合は、思い込みを捨てて使ってみるのも良いと思います。シーザー・ミランだって使ってますからね。

もし使う場合は無駄吠え対策に特化した「全自動型」ではなく、任意のタイミングで刺激を与えられるリモコン型でなければいけないので注意して下さい。

 

他者の感情が読めないのは交流経験の差?

あと他犬の顔色を伺う技能が不足しているのは、愛犬が他犬との交流経験値がまだまだ足りてないからでしょうか?

成犬の性格は、

先天的要素 × 経験

で決まると考えてください。

「先天的要素」は、犬種の個性や個体の個性ってことになりますね。経験が交流やしつけとなります。

犬種の個性については最初の見出しに書いた通り、フレブルは決して賢い部類の犬種ではなく、かつアグレッシブです。つまり、ご相談のような件については「扱いにくい」犬種となります。

だったら後天的要素=経験で修正していくしかありません。

その経験とは、しつけと、まさに交流です。しつけの方は後回しにするとして、交流について。

 

ワンプロの相手は?

まずは交流の絶対量を増やすこと。当然ですね。

散歩に費やす時間が十分にあるなら、その内容を濃くしなければいけません。できるだけよその犬が集まる公園を見つけて積極的に近づける。ワンプロを始めそうなら自由にやらせる。

このワンプロなんですが、実は一番良いのが「最適な相手を1~2匹特定する」ことなんです。「ワンプロ大好きだけど相手になれる子がいない」というのは結構あるあるです。で、「この子!」という個体を見つけたらとにかく時間を合わせてお手合わせしてもらう。これをやってると、「ワンプロをやって良い相手とそうでない相手」の区別がつくようになってくるんです。ただし、言うまでもなく偶然的要素の強い話で、もしそういう相手が見つかったとしてもしょっちゅう会えるかどうかも分かりませんね。

 

初めて会う子、おとなしい子と接触させる時

初めて会う子、幼犬、内気な子。こういった相手でもフレブルは容赦なく顔を突っ込んでいくことがあります。相手がそういう子である場合、犬を先に接触させてはいけません。必ず飼い主さんが先に相手の子に触れて、愛犬は後ろに回しておきましょう。そして、自分が間に入る形で接触させます。

これは信頼できる人間が「仲介」になることによって互いの犬を紹介する効果があります。愛犬からすると、自分のボスが先に触って愛でているのだから、最低限相手の人格(犬格)は保証されていることになるので、興奮度の上限を下げることができるわけです。

 

しつけの基本、「飼い主の存在感」

さて、ここで一度基本に戻ります。

当ブログでは幾度となく「飼い主の存在感」の話をしてきました。これは、犬の頭の中で飼い主がどれほどの比重を持っているかという話です。下の円グラフを見て下さい。

もちろんこれはただの概念図で、多少極端に描いています。うちの犬の場合、飼い主である私の存在感が“過半数”を占めています。ということは、犬に何があっても私の存在感を上回ることがないので、完全制御できる関係にあるということです。例えば、よその犬にちょっかいをかけられてキレそうになった場合でも「おい!」と言えば、うちの犬は行動を控えます。つまり「鶴の一声」が効くということですね。

 

次に、フレンチブルの場合です。

もう一度言いますが、これは極端に描いた概念図ですから。

ご覧のように飼い主の存在感は20%にも満たないため、その他の要素に簡単に負けてしまいます。飼い主の存在感が低くよその犬に対する執着が強いというのがトラブルの原因になります。犬種で言えば、他にはジャックラッセルなんかもこういう図になりがちです。

「うちの犬の場合」のグラフも、私が子供の頃から育てた個体と、途中から引き取った個体では、また微妙に割合が変わってきます。言うまでもなく、後者の方が少しよその犬に対する関心が強くなります。

 

飼い主の存在感

しつけの根幹にあるのは、飼い主が常に50%以上の存在感を維持することと、よその犬への関心を薄めることに他なりません。

そのしつけを象徴するのがリーダーウォークで、要するにこれは「飼い主が常に犬の視界に入る」歩き方というわけです。さらに、過去にマーキングを取り上げた際には「電柱を匂わせるな、とにかくスタスタ歩け」と書きました。これはよその犬の情報に対して関心を薄めさせるためです。で、いざ犬の“現物”を前にしたら積極的に接触させる。

もちろん、飼い主と愛犬の関係構築の手段はリーダーウォークだけではありません。過去に書いてあるのでここでは割愛しますが、玄関の扉を開ける時、おやつを与える時、そして撫でて愛でる時でさえ、犬は人間を査定しています。

 

といったところで、有効な回答になったでしょうか。

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コメント

  1. 60キロの主婦 より:

    まさか私の読みにくい文書を最後まで読んでくださったうえに、こんなに早く解決策を示してくださるとは思ってなかったので、感激しています。
    フレブルの頭の中の図を見てズッコケそうになりましたが、これは目を背けてはいけない事実だなと、改めて納得しました。
    扱いにくい犬種を飼っているという自覚を持って、再度きちんと自分の犬と関わって良い関係を築いていきます。そして、他人から見たフレンチブルドッグのイメージを少しでも良くする飼い主になれればと思います。
    イメージに囚われず、教えてくださった犬具も試してみたいと思います。
    こんなに丁寧に回答して下さってありがとうございました。

    • 小ライス より:

      こちらこそご相談頂きありがとうございました。
      このブログはこういったご相談でもないとめったに更新しないので……。
      フレブルちゃんのしつけ、根気よく頑張ってください。

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