脱走癖のある犬の対処法

走る犬 しつけ

「脱走癖のある犬をどうにかしてほしい」

実際に相談を受けたのは10年くらい前の話です。

その犬はミニチュアダックスで、たまたま玄関が開いてたからフラフラっと外に出る、といった可愛いものではなく、隙あらば走って逃げる、まさに脱走とのことでした。うち1回は私も捜索に協力しました。

そういったお悩みに対して私の提示できる解決案は、例によって基本的なものです。

 

コミュニケーションをおざなりにするな

私から言わせれば、多くの飼い主は犬とのコミュニケーションの機会をみすみす見逃しています。

私は当ブログで「米粒ひとつを犬に与える場合でも、“よし”の合図は必要」と主張しています。その理由としては、

・食べて良いものと悪いものはボスが決める
・つまり、誰かが食べ物を持っているからと言って飛びついてはいけないし、拾い食いなんてもっての外

と言ったことなんですが、これらはまとめると「主従関係の維持および強化」です。この「主従関係」という言葉にアレルギーを持つ人がたくさんいて困ったものですが、これは言い換えれば「上下のある信頼関係」であり、人間が主体的に犬を飼う以上当たり前の話です。さらに言い換えれば、「人間は行動原理を示してくれる存在でなければいけない」ということです。

しかしですね、これもっと根本的な理由がありまして、それがコミュニケーションなんです。犬は本来、常にコミュニケーションを欲している動物であり、呼べば応えてくれるのです。

公園に散歩に行けば、どういうわけかしつけが下手な人ほどよその犬におやつをやりたがるものです。以前にも書きましたが、鯉にエサをやる感覚で漫然とおやつを与えてしまうから、せっかくしつけを施している犬までが飛びつこうとします。そして「まったく行儀が悪い」なんてほざくんですよ。

私がおやつを手にしても犬は飛びつこうとはしません。座って「よし」を待つのです。しつけが出来ない人は、ただおやつを手にぶら下げているだけ。

私の場合は、おやつが犬の口に入るまでにいくつかのステップのコミュニケーションが間に入るわけですよ。

 

玄関ドアを開けるのもひとつのイベントである

家を出る時も同じ。犬にハーネスをはめてリードを付けたら玄関ドアを開ける……なんてことをしてはいけません。

リードを付けてドアを開けるまでの間に大事なコミュニケーションポイントがあるんですよ。

と言ってもめちゃくちゃ簡単。

「待て」をさせた状態でドアを開けるだけです。

これがどれだけ大事かを説明するには、なぜ「待て」をさせずにドアを開けることがいけないのかを説明した方が早いでしょう。

リードをつける⇒玄関を開ける⇒犬が飛び出る

犬の立場に立つと、この過程において飼い主は存在しません。犬からすれば「玄関が開く」のを待つだけなのです。よって、飼い主と犬との間にしかるべき関係性が築けないということになるわけです。

 

「一旦落ち着かせる」ことの重要さ

シーザー・ミランの番組を観ている人にとってはすでに常識ですが、彼のしつけ方法の基本は、問題行動のきっかけとなる事象、つまりよその犬との遭遇や自転車とのすれ違い、来客時といったイベントを、犬が落ち着いた状態で迎えさせるということです。

ダメなことをただ「ダメ!」と叱って制止させるだけではなく、犬が落ち着きを取り戻すのを待ちます

アンチパックリーダー論の言うような虐待などかけらもありません。飼い主自身が威厳と落ち着きを持って接し、そして犬も同様に落ち着くまで待つことこそが大事だと説くわけです。

玄関の前でドアを開く前に待てをさせる

待ての状態でドアを開ける

これを3度でも繰り返せば、「玄関ドアが開く」という犬にとってテンションが一気に上がるイベントも、落ち着いて迎えることができる犬になります。

だって、落ち着いて座っていれば、大好きな散歩がスタートするんですから。

 

「なんでそんなに犬が言うことを聞くんですか?」

とよく聞かれるのですが、逆に、なぜあなたの犬はあなたを無視するんですか?と聞き返したくなります。あ、理由は分かってて聞いてるんですけどね。

そういう人は犬を「可愛がって」はいるんです。でもコミュニケーションにはなっていないのです

例えば、公園から帰る際に「さあ、帰ろう。ね、帰ろう?まだ遊びたいの?」なんてしつこく犬に話しかける飼い主。

一見、コミュニケーションを密に取っているような気がしますが、全くコミュニケーションになっていません。

犬はこういう飼い主の発する言葉を、意味のない鳴き声としか認識していません。人間側が一方的に言葉を投げつけているだけで、キャッチボールになっていないのです。つまり、ただの自己満足なのです。

例えば、犬の歩き方がちょっとおかしいだけで、「どうしたの?痛いの?脚が痛いの?どの脚?」……いやいや、聞いて分かんのかよ、と。

そこで本当にコミュニケーションを取りたいなら、黙って観察することなんです。抱っこしてみて触ってみて、原因が分からないまま症状が続くなら病院に連れて行きましょう。

「どうしたの?」と聞いてくるような飼い主を犬は頼ろうともしませんし、その言葉を耳に入れようともしません。

 

「自分の犬が可愛い」と「犬が好き」は大違い

このようなことを書くと、どこかマッチョイムズの匂いがするかもしれませんが、全く逆ですよ。

玄関でのやり取り、おやつをやる時のやり取り、プロレスごっこ等から、飼い主と犬とは互いに何を考えているかを感じ取れるようになります。

それができない人は、自分の犬を可愛いとは思っていても、犬そのもののには興味を持っていない人なんです。

だから、以上のようなことをやってみなさいと指導しても、言われたことをするという意識しかないので、面白がるどころか面倒くさく感じているわけですよ。

私とそういう飼い主の違いは、犬に心底興味を持ち、犬と触れ合うことに喜びを感じているかどうかです。

本当、これって感覚の問題なので、言葉で説明しても伝わらないんですよ。

だから相談されたら「人格を入れ替える覚悟をしてください」なんて言うわけです。

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