犬はホールディングされるとストレスが軽減する
さて、ここに犬の行動についてのひとつの論文があります。
攻撃行動などの問題行動を呈する犬の神経機構 : 食餌療法と新たな行動修正療法の有効性
この論文中で私が着目したのは、「ハンドリングとホールディングを用いた行動修正療法の有効性」。「ハンドリング」とは犬のしつけのために触ること、「ホールディング」とは同じく犬の体を抑えつけて制御することです。
「犬を抑えつけるなんて可哀想ムキー!」
「そんなことをしなくても犬はしつけできるムキー!」
って言ってた人を以前にこのブログでも紹介しましたね。
ところがこの論文では、血中のストレス関連成分を調べることによって、「ホールディングでストレスは軽減される」と結論づけています。
私がこの論文を発見したのはつい数日前(注:この記事を書いたのは2019/6/6)でしたが、「犬を抑えつける」ことの重要性ははるか昔から感覚的に分かっていました。
攻撃性を剥き出しにして吠えまくる犬に「〇〇ちゃん、ダメでしょ!」なんてやってる飼い主を見るとイライラするんです。
「それで改善されましたか?」と聞いてみると、飼い主は「はい」なんて答える訳がありません。だって何年も同じことやっててそれですからね。
叩くのはダメ?
私は人間にしろ犬にしろ、【体罰】肯定派なので、叩くこと=絶対にダメなどとは言いません。
※ここでは「体罰」と「暴力」/「虐待」の違いについて詳しくは触れませんが、全く違うものです。
問題は、どのような方法であれ、犬が理解しないと意味がないということ。
「ココア、ダメでしょ!」と何度叫んだって、それが「悪い事」であると犬が理解しない限り全く意味がありません。どれだけ叩いたり蹴ったりしても、やはりそれが「悪い事」であると犬が理解しない限り、ただの暴力であり虐待なのですよ。
「体罰」を行うにしたって、その体罰はどこまでなら安全で、どこからが犬に不快感を覚えさせられるかというのは、飼い主が犬をどれだけ理解しているかにかかっています。そして、多くの人はその理解ができていません。適正な体罰というのはそれなりの技術が必要なのです。だから私は初心者に「叩く」なんて方法を決して教えません。
それでも、例えば、「ソファーで寝てる時に近づいたら噛もうとしてきたから怒鳴って叩いたんです」なんて報告をしてくる人が結構います。
例によって、「それで直りましたか?」と聞くわけですが、直っていないことが分かってるから聞いてるわけでして、直ってないからわざわざ私に報告(相談)してきてるわけですよ。
こういうケースのほとんどが間違いであるのは、その体罰が飼い主の感情の発露でしかないからです。
結局体罰の前にホールディングは必要
そもそも、私が体罰を行う際だって、その前にホールディングをするのですよ。でもこうやって相談してくる飼い主は決してホールディングなんてしてません。それができないから、「叩く」という安直な行動に出てしまうのです。
動いている犬に平手を当てるのはかなり難儀で力の加減もできません。犬が怖がりもしない程度の弱さだったり、逆に強すぎて犬を傷つけてしまったり、下手したら目などに当たってしまうかもしれません。
また、犬側の心理としては、自分が構えている状態で飼い主が叩こうとしてきたら、そこには無条件の反発と嫌悪感が生まれます。主従関係ではなく敵対関係になってしまうのです。それはもはや、しつけではなく、中途半端なただのケンカです。
ホールディングして一旦動けなくしてしまえばもうこちらのもの。体罰なんて「叩く」ほどの力も要りません。私のやり方は、裏拳を物凄く弱ーい力でマズルを横からコツンと当てるというもの。これで犬のプライドは完全に打ち砕かれ、「死んでもこの人には逆らっちゃいけない」ということを学習させることができます。
この場合の体罰はあくまで補助的な手段であり、主たる手段はやはりホールディングなのです。
そのホールディングができなければ?
ある程度成長して自我が完成し、体も5kgを超えたあたりからは、女性の力では抑えつけることすら難しくなってきます。
その時点でホールディングすらできないとしたら、もう貴方にはどうすることもできません。
ホールディングによるコントロールは、成犬になるまでにやっておかなければならないことです。
じゃあ私にも無理か?と言うと、私なら何とかしますよ。
もちろん、ある程度の大きさになってしまうと、成人男性ですら抑えつけることができなくなります。その場合は、首輪もしくはスリップリードをつけて、リードさばきで落ち着かせることになります。
当たり前の話ですが、その犬を私が子犬の頃から育てていればそもそもこんなことすら必要ありません。成犬になる前にしつけることの方が1万倍くらい楽なのですから。
そのめちゃくちゃ楽な期間ですらしつけられなかった貴方が、リードさばきでしつけられるわけがありませんよね?
素直にプロのトレーナーさんにお願いするのが吉です。
まとめ
犬のしつけの基本は、犬を落ち着かせることです。
ホールディングとは、体罰のように犬を傷つけることなく、そしてむやみに興奮させることなく、落ち着かせた状態で、主従関係の認識を強める行為です。
犬とケンカして勝ち、飼い主の方が強いんだと言うことを分からせる……なんてことは無理です。本気を出した犬は小型犬でも人に大けがを負わせることがありますし、それに正面からぶつかって勝とうとしたら今度は犬に大けがをさせてしまいます。
とにかく、まずは、犬を動けなくすること。抑えつけてしまえば、犬は落ち着きます。
抵抗は無駄
ケンカはアホらしい
自分の生殺与奪権はこの人にある
ということを理解させることができるのです。
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