「寝てるところを起こすと怒る犬」?それ、しつけの失敗です!

攻撃性
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寝てる犬を起こしてはいけない?

「寝てるところを起こすと怒る?嫌なことをされて犬が怒るのは当たり前のことです」

今回、遡上に載せるのはこの記事です。(註:引用元のブログが閉鎖されているためリンク削除しました)

しかし、犬が飼い主に対して怒る時って、絶対に飼い主が何か嫌なことをした時なんです。

ミスリードする文章ですね。

読みようによっては、「犬に本能はなくて、全て学習によって行動原理が形成される」とも取れます。

もちろんそんなことはなくてですね、大事なことは、犬の本能的反応にはどういうものがあるかを把握した上で、その反応をそのままにしておいて良いのか修正すべきかを考慮することです。

例えば、お腹を触られると怒る犬がいますが、これは当然ながら骨のないお腹は弱点であって触られたくないからという本能的反応です。

しかしながら、お腹もトリミングする必要があるし、お医者さんに行けばお腹を見せる必要もあります。

「嫌なことするからでしょ!嫌なことしなければいいじゃない!」

などと言ってると、手入れもできなければ獣医に診せることもできなくなります。

こういう犬が獣医やトリマーに咬み付いて怪我をさせてしまうのです。

ちょうど今日、トリマーさんをご家族に持つ方とお話していたのですが、そのトリマーさんは入院が必要なケガを負ったことがあるそうです。

実際、他の飼い主さんに話を聞いてみると、「自分ではできないから」(言うことを聞かない、じっとしてくれない)と美容院に連れて行っている方が多いようですね。

 

犬は「起こされて怒っている」のではない

「寝てるところを起こされた犬が怒るのは、寝てるところを起こされたからであって、起こさなきゃ良い」

と言うのが瀧沢先生のご回答のようですが、先生の「ご家族」や「お友達」は寝てるところを起こされたら唸って噛むってことでしょうかね。

人間が寝てるところを起こされて不機嫌になるのはまああるとしても、だからって怒鳴ってきたり殴りかかってきたりするのはおかしいでしょう。犬の「唸る」「噛む」と言う反応は単なる不機嫌ではなく、敵意なんですよ。

もっとシンプルに言えば、あなたが自分に危害を加える可能性があると犬は思っている訳で、信頼関係が全くできていない証拠なんです。

一言で「寝る」と言っても

ここで犬が凶暴な反応を示す「寝る」という状態を2つに分けてみます。

がっつり寝ている場合

熟睡状態で何かの刺激により起こされた場合。この時、犬に判断能力はありません。めちゃくちゃ大人しいうちの1号犬でさえ、このケースでは威嚇行動を見せることがありました。若いうちは、ですが。

無防備な状態で肉体的な刺激を受けたので、反射的に反応してしまうのはある程度は仕方がありません。刺激に慣らすこと、よりリラックスして寝かせてやることなどで徐々に改善できるでしょう。

半覚醒の場合

「寝てるとこを起こされる」のは実はほとんどがこの状態なんです。そもそも人間に比べてまだ多分に野性の残る犬という動物は、人間のような睡眠の摂り方はしません

人間はベースが草食動物で消化に時間がかかる上に、かなりの大昔から「家」を手に入れて、他の動物よりも格段に安全な状態で寝ることができています。一旦寝てしまうと怒鳴っても小突いてもなかなか起きないなんて人がいるのはそのせいでしょう。

さらに、人間が90分周期で眠るのに対し、犬はの睡眠周期は20~30分と言われます。しかもその短い周期の中でも、人間のような熟睡状態は極めて短いと言われます。

これは言うまでもなく野生時代の名残で、寝ている間の“安心度”が人間よりもはるかに低いからです。

寝ている間でも警戒心を強く働かせているわけですね。


起こされたからと言って怒る犬は「異常」

私にとって、寝ている犬に近づいたり触ったりして、犬に唸られたり咬まれたりするのは「異常なこと」です。犬が「家族」や「友達」であるならなおさら異常なはずです。

うちでは子供の頃から飼っている1号犬、2号犬にはそういうことは全くありませんでした。

なぜなら、彼らにとって「人間が近づく=不吉な予兆」ではないからです。

体を触られたところで、その先に害がないことを知っているからです。

あ、心の中から舌打ちが聴こえてくることはありますよ。それこそまさに「不機嫌」ではあっても、「敵意」ではないのです。

ところが大人になってから引き取った3号犬は違いました。近づいただけで物凄い勢いで唸ってきたわけです。もちろんすぐしつけたので、それも2回で終わりましたけどね。

その3号犬の挙動は、私が立ち上がった瞬間から目はぱっちり開けており、こちらを認識した上でのものでした。

つまり、寝ているところを起こされて怒っていたわけではないのです。

3号犬は、ソファーを「自分の所有物」と認識しており、その自己所有物を他人に侵されそうになったから怒ったのです。

 

 

犬に“所有”を認めてはいけない

瀧沢先生が大嫌いであろうパックリーダー論者であるカリスマドッグトレーナー、シーザー・ミランは「あらゆる物・場所について、犬の所有を認めてはならない」と言っていますが、私もその通りだと思っています。

『サピエンス全史』においてユヴァル・ノア・ハラリは、「人間は農耕を始めたおかげで土地に執着するようになり、格段に戦争が増えた」と主張します。つまり、人間が“財産”を持ち、所有意識を持つようになったから凶暴になったのだと言うことです。

シーザーや私やハラリだけではありません。遡ること約2500年前の世界的な哲学者も「執着を捨てよ。煩悩を捨てよ。全て捨てることができれば、あらゆる煩いから解脱ができる。なーむー」と言っています。

要するに、モノや土地に執着するとろくなことがないわけですよ。

 

人が近づいてくるだけで怒る=ストレス気質の犬

その後しばらくの間、3号犬は私が近づくなりソファーを降りてしまうことになります。これも極めて原始的な本能的反応で、「リーダーに場所を譲っ」ているわけです。

しかし、これがゴールではありません。

ソファーの所有という意識は認知錯誤ですが、だからと言って譲ってくれとは言っていないし、そこにいるからと言って叱ることもなく、ただ何もせずそこにいてくれれば良いだけなのに、またしても認知錯誤をしているわけです。まあ、間違いとも言い切れませんが。

で、1ヶ月くらいでしたかね、私が近づいても特に大きな反応を示さなくなったのは。

それでも1号犬や2号犬のようにはいきませんが、「解脱」には近づいたようです。

つまり、

ソファーを守るか譲るかという判断をしなくなったということであり、

それはつまり、

ストレス源がなくなった

ということなのです。

 

起こされて怒る犬とは一緒に寝られないよね?

今これを読んでいる貴方がもし、寝ている犬に咬み付かれるということで悩んでいるとしたらですね、夜はその犬と一緒に寝ていますか?寝ているとして、ベッドの上で犬は同じような反応をするでしょうか?

ソファーでは怒るけど、ベッドの上では怒らないという犬も結構いるはずなんですよ。でなければ、寝返り打つたびに咬み付かれたりすることになりますからね。それは、ソファーは自分の物だけど、ベッドは飼い主の物と区別しているからでしょう。

 

怒らない犬こそストレスフリー

さて、何が言いたいかズバリ言うわよ。

「犬をピリピリさせるのは可哀想でしょうが!」

ということです。人間が近づいて犬が怒るのは、犬が常にピリピリしていて、全くリラックスしていないということの証拠なんですよ。だから、
「近づくな」
「起こすな」
ではなく、近づいても触っても起きないくらい厚かましい犬の方が幸せだということです。

習性を修正せよ

では、私の基本理念のリピートです。

犬を飼うと言うことは、犬と言う人間とは全く違う動物を人間社会の中で共生させるということ。それは即ち、犬の本能・習性や犬社会とは勝手の違う人間社会に犬をフィットさせるということに他なりません。

犬を引っ張らない、物を奪わない、寝ているところを起こさない、とにかく犬のやりたいようにやらせたい…これをとりあえず「謙譲主義」とでも呼ぶとすれば、謙譲主義は犬と人間社会の調和とは違うものとなります。

何度でも言いますが、謙譲主義者は犬を飼わないのが一番です。

人間が犬を飼うということ自体、決して自然なことではないのですから。

飼うと決めたのであれば、人間社会の中で生きていくために邪魔な習性は修正する必要があります。
デリケートな口に歯ブラシを突っ込まれ、
ブラッシングされ、
爪を切られ、
肛門を絞られ、
注射を打たれる
人間社会で生活すると言うことは、犬本来の生活にはないストレスにまみれているのです。

 

あなたがそれで良いとしても小さな子供は?

近づくだけで犬が唸る、咬む。……これは何でもないことで犬がストレスを感じている証拠であって、リーダーがどうだこうだという理論を持ち出すまでもなく、犬が可哀相なのです。

一万歩譲って、一人住まいでそれを良しとしても、小さな子供がいる家ではどうでしょうか。ヘタするととんでもない惨劇に繋がるかもしれませんが、それでも「犬が嫌がることをした子供が悪い!」と主張されるんでしょうか。

 

じゃあどうすればいいの?

寝ている犬に近づいて唸られるという時点でしつけの失敗です。子供の頃から飼っているにも関わらずそういう事態になっているとしたら、ほとんどの場合、貴方にはどうすることもできません

うちではどうしたかと言うと、言うのはいつも同じこと。子供のうちから、とにかく体当たりで遊んでやることです。人間は不吉な存在ではなく、楽しく安心できるものという認識を徹底的に植え付けることです。

こういう時に手本の例として出すのがムツゴロウさんです。あの人は、犬を見るや、地べたに這いつくばって犬になりきって遊びます。犬が舐めてくる勢いを超えてムツゴロウさんの方がベロベロ舐めまわして、犬の方がウザがる始末。

その先に「プロレス」があり、それらのスキンシップがあってこそ、人間と犬の相互理解が深まります。お互いに何を考えているかがよく分かるようになります。すなわち、犬はその家の中で、あるいは人間社会の中で、安心感を持って暮らしていけることになります。すると、寝ているところを起こされたからと言って怒るようなアホ犬にはならないでしょう。

 

それでもそういう犬になってしまったら…

先述のように、多分あなたには無理だと思いますが、一応書いておきます。

犬が唸ったら迷いなく犬の首元かマズルを掴んで押し倒してください。痛みを与える必要は特にありませんが、顎を軽くコツンとやると効果的です。うちの場合は、この方法を2回繰り返しただけで治りました。

が、女性の場合、これをやるのは相当難しいと思います。

まず、手が小さいし、腕力も弱い。その上女性の性格上、「噛まれたらどうしよう」「犬が痛がるんじゃないか」という心配が先に来てしまい、迷いが生まれます。

犬はそういう迷いをしっかり感じ取ります。「こいつは頼りない」「相手は俺より下だ」と瞬間的に判断し、下手すると咬んできます。

もっとも、迷いなく、力強くやっても咬まれる可能性はありますが、犬の反応によってこちらの行動を変えてはいけません。もし咬まれたら咬まれていない方の手で同じことをやるだけです。

これが中型犬や小型犬でも身体能力の高い犬や過度に凶暴な犬である場合、おとなしく外注トレーニングに任せましょう。そして、反省してください。

ちなみに、このやり方を教えて一発で修正できたという女性の飼い主さんもいらっしゃいました。

「多分無理」と言うのは「稀にできる人もいる」ということです。ただし、本当に心を入れ替えないといけません。

 

まとめ

「寝ているところを起こされて怒る犬」という認識そのものが間違いです。

「自分の所有物に近づく人間に攻撃意志を見せる犬」であり、その相手が飼い主であっても取る行動であれば、その犬は人間の中に信頼できる相手が一人もいない、物凄く可哀想な犬ということになります。

寝ている犬を起こすという行為に何の意図もなければ、つまりは「可愛いから」というだけで触ったりするのは、意味もないので止めておきましょう。犬はあまり熟睡しないとは言っても、大きかろうが小さかろうがそれは余計なストレスです。

やるなら「信頼関係ができているかどうかを試す」、あるいは「ストレスに慣らす」という意図をもって、限定的にやりましょう。

 

おまけとして

顔を近づけるという行為は犬にとって攻撃の合図なんです

なんというか、瀧沢先生のリテラシーを象徴する一文ですね。前後の脈絡を考慮しても、全くの初心者が読めば「なるほど、犬に顔を近づけてはいけないのか」とやはりミスリードする文言です。本当に馬鹿馬鹿しいレベルのデタラメしつけ論なんですが、信じてしまう人もいるんでしょう。

× 顔を近づけることは攻撃の合図である
〇 顔を近づけることは攻撃の合図になることもある

この2つの文章は似て非なるもの。意味合いは全く変わってきます。

改めて申し上げますが、こういうデタラメを書くブログは害悪です。

この犬はこれから攻撃しようとしているんですか?(笑)

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