犬同士の「相性」は人間が作り出している。

攻撃性

私が受ける犬についての相談は、その多くが「犬の攻撃性」についてです。

見知らぬ犬に、自分の愛犬を近づける際は、多少なりともの緊張感が走ってしまうという人がほとんどでしょう。そしてやはりほとんどの人が、近づけ方を間違っているんです。

自分の犬がたまに見せる攻撃性。それを心配して、自分は後ろからリードを引き、犬同士を「大丈夫かしら…?」とゆっくり向かい合わせで近づける。

これ、絶対やっちゃダメなんです。

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やっぱり犬に相性ってあるの?

避妊(去勢)手術の有無という要素を含めて、「犬同士の相性」というものがあるのは間違いありません。しかし、その「相性」を問題になるレベルにしてしまうのは、多くが人間の責任です。相性が良くなくてもそばにいられるのであれば問題などありません。

逆に、「相性」という要素そのものを人間の力で小さくすることもできるんです。

飼い主が心配しながら近づけるのがダメ

先述のやり方は、リーダーウォークの基本を心得ていないことが原因で、犬を前に出すのがそもそもの間違いなんです。

このやり方は犬からすると、飼い主から「私を守って」というサインを送られたのと同じです。

ましてや目の前に犬がいる場合にこれをやると、本来相性が悪い犬でもないのに、「敵」と認識してしまいかねません。

で、飼い主はその方法でケンカを始めてしまった犬同士を「相性が悪い」として、次から二度と近づけなくなるんです。

ヘタすると、いつもの公園でその対象となる犬が入ってきた途端ものすごい勢いで吠え立て、飼い主でも制御できず、どちらかが離れて行くという、なんとも切ないことになってしまうわけです。そんな光景、よく見ますよね?

「ケンカをしないかしら…」と心配しながら犬同士を近づける。すると必然的に犬同士の目が合います。

犬は目が合うと本能的に緊張感が走り、その相手に良い印象を持ちません

構図としては、人間が緊張して、その緊張が犬に移ってしまう、ということになります。

では初対面の犬にどうやって近づければ良い?

まずはすれ違い方

はい、リーダーウォークの基本です。

リーダーウォークは「犬を後ろにすれば良い」と言うものではありません。

飼い主が堂々と、真っすぐ、歩調を変えず、スタスタ歩くというのが肝要です。

それを意識してやっていても、見知らぬ犬とすれ違う時には、無意識に歩調にブレーキをかけてしまうもの。犬はその瞬間を見逃しません。飼い主が歩調を変えたり立ち止まったりすれば、それは「何かある」という信号になって犬に伝わります。

見知らぬ犬が近くにいようが、歩調を変えてはいけません。心配なら犬を外側にして、スタスタとすれ違ってしまえば良いのです。

友達にしてしまう方法

自分の犬や相手方の犬の攻撃性が心配な場合は、自分の犬のリードを極限まで短く持って自分の後ろ側に回します。その上で、飼い主が対象の犬に近づいて触ります

(これは相手方の犬がある程度アグレッシブで、人を怖がってないことが前提です。そもそも人に近づかない犬は別の方法で近づきますが、ここでは割愛)

互いの犬にとっては、相手の犬の手前に人間がいることになります。飼い主が相手の犬と触れ合っているということを見せ、安心させます。

犬からすると、飼い主が視界に入っているか入っていないかは大違いです。多くのダメ飼い主は、「不介入が良いこと」のように思っていますが、これは人間の存在感を小さくしてしまうことになります。リーダーウォークの基本も、「引っ張るか引っ張られるか」より「人間が視界に入っているか」の方が重要なのです。人間がしかるべき場面で適切に介入すればこそ、ドッグランという人間不介入の場でも自制の効く、のびのびとした犬になるのです。

私の場合だとさらに、片手で相手方の犬をホールドする感じで触りながら、もう片方の手で自分の犬にも同じことをします。形としては両方を愛でているのですが、犬に対しては「お前らオレの前でケンカなんか始めたらどうなるか分かってんだろうな」というメッセージが送られます。

…こういう表現を使うから当ブログのしつけ法はなかなか理解されにくいのですが、「強くて信頼できる存在」が介在することによって、犬が安心できるのは事実なのです。

こうやって少しずつ物理的な距離を詰めていき、相手の匂いや音(動き)に慣れさせていきます。その相手が近くにいることは非常事態ではないということを頭に刷り込んでいくわけです。

「メンチの切り合い」をさせてはいけない

逆に、やってはいけないのが「メンチの切り合い」、関東方面で言うところの「ガンの飛ばし合い」です。

ただ相手を観察しているだけかもしれない

と思うのは多くの場合、あなたの観察力不足です。自分の犬が過去どういう行動パターンを取っていたかを観察していれば、それが「見ているだけ」か「ガンを飛ばしている」かが分かります。

と言っても、先述の通り、犬の感情も複雑でして、「好感」と「嫌悪感」は表裏一体で、簡単にひっくり返ります。これを二つ合わせたものが「興味」なのです。

その興味から「嫌悪感」だけを取り除くのが飼い主の役目です。

 

いずれにせよ、犬同士が一定時間以上目を合わせるのは良いことではありません。その時間は概ね3秒です。「前科」のある犬であれば、2秒の時点で顔を背けさせて下さい。その上で先ほどの近づけ方を実践すれば、「悪い相性」の問題を回避できる可能性はぐっと上がります。

逆に3秒経ってしまうと、悪い相性同士の犬はケンカを始めます。そしてその関係は固定化されてしまいます。これが最悪のパターン。

まとめ

人間の介入は、犬同士の「相性」の問題を小さくするのが理想であり、それがしつけというものです。

しかし実際は、相性を増幅したり、あるいは本来相性の問題なんてないのに、間違ったやり方でわざわざ「悪い相性」を作り出してしまっていたりするのです。

わざわざ「悪い相性」を作ってしまう飼い主が、それ以降に修正できるはずもありません。ちなみに修正の仕方はここに書いていますが、直接人間からの指導を受けないと簡単にはいきません。

人間が間違った介入をして、犬同士の仲を悪くしてしまうくらいなら、幼犬の頃からドッグランに放り込んでしまった方がよほど「良いしつけ」になります。

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