【犬のしつけ】その「噛みグセ修正法」はデタラメです。

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「いぬのきもち」ウェブマガジンの噛みグセ対策を見てみよう

犬の甘噛みについては過去に何度も取り上げてますが、古い記事はどんどん埋もれて読まれなくなっていくので、これからも内容に多少のアレンジを加えつつ書いていくことになると思います。

俎上に上げるのはコチラ。

「いぬのきもち」を冠した情報サイトで、しかも「専門家」を自称する先生が教えてくれています。このページでは、甘噛みする理由として以下の7つを挙げています。

①習性によるもの
②遊び・好奇心から噛めそうなものならなんでも噛みたがる
③留守番中の暇を紛らわせるため
④うれしい気持ちや楽しい気持ちが高まって噛む
⑤相手をしてほしくて噛む
⑥乳歯がむずがゆい
⑦ストレスによるもの

①を「習性によるもの」としているということは、②~⑦は習性ではないということでしょうかね?まあ、「より基本的な本能によるもの」と読み替えておきましょう。

①~⑦、「甘噛みする理由」としては別段間違っているところは見受けられません。まあ、そうだよね、と。

 

決定的に間違っている点が2つ

ただ全体を見た場合、この「専門家」先生が犯している間違いが2点あります。それは、

・最終的に甘噛みをネガティブに扱っていること
・甘噛みの理由にもしつけ法にも「ワンプロ」(プロレス)を入れていないこと

です。

当ブログの読者さんであればお分かりですね。

 

「専門家」先生は「ワンプロ」をどう捉えているのか?

まず、この先生がいわゆるワンプロをどう捉えているのかが大きなポイントです。

ワンプロとは、子犬同士がやる、ケンカとは違う「プロレスごっこ」のことで、幼犬のうちであればほとんど犬種を問わずに見せる本能的な遊びです。

犬は普通1匹で産まれてくることはありません。少なくとも3~4匹、多ければ7~8匹を同時に出産します。この赤ちゃんたちはほぼ同じペースで成長し、いずれワンプロを始めます。ペットショップで複数の犬を入れている広いケースを見ていれば分かりますが、健康な個体であればワンプロをやるのが自然な姿であり、人間に飼われるということはこの当たり前の行動を取り上げてしまうことになります。

ワンプロの際、子犬同士は間違いなく噛み合っています。私はこのワンプロを、犬の成長過程でなくてはならない、極めて重要な行動だと認識しています。ただし、成長過程と言ってもこの行動は継続的で、犬によっては何歳になってもやることがあります。

専門家であればワンプロを知らないはずはないし、その際に噛むという行動が伴うこともご存知のはず。ではなぜ、「甘噛み」を語る時にワンプロの説明をしないのでしょうか。

何の知識もなく犬を飼い始めた人がこんな説明を読んだら、犬がワンプロを始めようとした時に「ダメでしょ!」とやめさせてしまうだろうし、実際にそんな飼い主さんがたくさんいるんですよ。

早い話、「専門家」を自称する人、あるいは実際に犬でメシを食っている人が、こういう根本的なところも理解しないまま、人間目線の「お行儀の良いしつけ方法」=間違った接し方を流布させているわけですよ。

 

消極的噛みグセ対策は本気噛みを誘発する

当ブログでくどく説明しているように、ワンプロは運動である前にコミュニケーション能力のトレーニングなんです。人間のプロレス同様に、相手と呼吸を合わせ、「派手で余計な動き」を交えながら甘噛みしたりさせたりするわけです。

犬仲間でちょうど良い相手がいなければ、飼い主自身が相手になってやるべきで、その際は「甘噛みをやめさせる」どころか「積極的に噛ませる」必要があります

犬の歯は咀嚼の道具であると同時に、武器であるわけですが、「甘噛みをやめさせる」ことに成功しても、手術で抜いてしまわない限り、その武器は残ってるんですよ。「うちの犬は甘噛みはしません。やるなら本気噛みです」という笑い話のような本当の話があちこちにあるんです。

それは他でもなく、このサイトのように、人や犬との接触に対して消極的なしつけを奨励するようなしつけ論が蔓延し、犬が「噛み方」を教わらないまま無暗に神経質にさせられているからだと私は確信しています。

 

積極的に甘噛みさせる=犬にルールを教える

積極的に甘噛みさせる=プロレスを実施することは、
「どういう場合に」
「誰に対して」
「どの程度の強さで」
噛むべきかを教えることに他なりません。うちの犬には、全力疾走で突進、飛び跳ね、ぐるぐる回り、仰向けになり、禍々しい声で唸り声を上げながら散々噛みつかせました。犬に慣れている人でも、一見すると、制御できないほど本気で暴れているようにも見えると思いますが、実際は声や指、あるいは目線一つで完璧にコントロールできています。それはどこまで行ってもシミュレーション(お芝居)であり、派手に見せてはいるけど犬は決して本気では噛みません。

その結果、犬は自分から甘噛みをするようなことは一度もありませんでしたし、当然よその人や犬にも噛んだことがありません

例えば、剣道を教えるということは、道具を揃えて、ルールを教えて、礼儀を教えることになりますが、くだんのサイトのような甘噛み絶対悪論者のしつけ論に従うと、ルールも礼儀も教えずに竹刀だけを持たせるようなものなのです。

 

「散歩で犬の噛みたいエネルギーを発散」?

思春期の男の子に「性欲が沸いてきたらスポーツで発散しよう」みたいな保健体育の理論を思い出してしまいました。たしかに、十分な散歩はストレス解消になりますから、「ストレスによる噛みグセ」の軽減には役立つでしょうね。しかし「噛みたい」という本能的欲求がなくなるわけではないのです。

 

「犬の歯が当たったら無視して手を引っ込める」?

手への甘噛みをそのままにしていると、「手は噛んでもいいものなんだ」と犬が錯覚してしまいます

私の経験(観察)から言えば、犬は犬種によってあるいは個体によって知能の差はあれど、「噛んで良い場合」「噛んで良い手」を区別できる程度の知能はどの犬にも備わっています

最初から犬はバカという前提でしつけていれば犬もバカになります。そういう前提だから、「噛ませない」という消極案しか出てこないし、皆いざと言う時のコントロールが効かなくて困っているわけですよ。

犬を興奮させてはいけない?

最近書いた記事なんですが、
「犬にとってそれが楽しいものであっても興奮はストレスになる」
という実に奇怪な論説を唱える自称トレーナーさんの主張を取り上げました。もしこれが本当であれば、子犬同士が楽しそうに遊んでいても止めなければならないことになりますが、もちろんそんなことはありません。大嘘です。

人間だって遊びやスポーツで興奮し、アドレナリンを分泌し、心拍・血圧を向上させ、最終的にそれが落ち着いたら、健全な精神状態を作ることができます。犬も同様。遊びたい時にとことん遊ばせてやらないと、精神が不安定になり、それが固定化すると歪んだ性格(怖がり、凶暴)になるのです。

 

まとめ

「噛ませるから噛み癖になる」というしつけ論は完全な思考停止。もしそれが本当なら、うちの犬は殺処分になってもおかしくないほど何もかもを噛み倒しているはずだけど、実際はその正反対です。積極的に噛ませてきたから、自分からは決して噛まない犬になりました。

その逆に、「うちは甘噛みなんかさせたことがないのに」よその人や犬を噛んでしまう犬はたくさん見てきました。

大事なのは動作の習慣ではなく、犬のコミュニケーション能力をどう育成するかです。

「いぬのきもち」を分かったつもりでいると危険ですよ。

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コメント

  1. 野次馬 より:

    なんだか、人間の躾にも通じるところがある話ですね。
    まともに叱られたり、喧嘩せずに育った人間が
    大人になっても他人に謝れず、喧嘩の止めどきもわからない感じ。

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