「犬を好きに歩かせろと教わった」
つい最近の話ですが、ある大きな問題行動を抱える犬(未去勢・成犬)がいました。
犬種は「さもありなん」という感じ。伏せておきますが。
問題行動とは極度の凶暴性です。私も噛まれて流血しました。(私は年に1回は犬に噛まれて出血サービスしていますね)
飼い主さんにいろいろと確認としたらいろいろと「飼い主さんの問題行動」が浮き出てきましたが、ここで取り上げるのはそのうちの一つ、「散歩の仕方」です。
「リーダーウォークはしていますか?」
これは問題行動のある犬の飼い主に聞く定番の質問です。
さて、その飼い主さんは、そもそも「リーダーウォーク」という言葉そのものを知らず、それどころか「犬は好きなような歩かせるのが良い、と聞いた」のでそうしてるんだと。
さもありなんさもありなん…。
リーダーウォークについては嫌っちゅうほど書いてますが、ちょっと過去の記事とは違う視点から解説してみます。
リーダーウォークの意義は、「人間はもっと偉そうにしろ」という上っ面の価値観によるものではありません。あくまでその目的は「犬の幸せ」以外の何物でもないのです。
で、当ブログでは、
「人間が犬の指針になってやることによって犬は安心する」
「犬に余計な情報を与えると、犬は余計なことを考える。“考える”のはほとんどが嫌なこと。犬に考えさせてはいけない」
なんてことを書いてきたんですよ。今回はそれをさらに分解しまして、
「犬を好きに歩かせると、犬は何をするか」
という点に着眼します。以下、オス犬を前提としています。
移動中に犬は何をしているのか?
飼い主が犬に付いていくようにリードを緊張させず前を歩かせるとしますね。すると犬はどうするでしょうか。
「あ、こんなところにお花が♪こんな雑草にもキレイな花が咲くんだワーン♪」
「アリさんこんにちは!お食事中かな?ボクもお腹減ってきたワン♪」
お花畑の“自称”トレーナーだとマジでこんなこと書いてそうですが、犬は決してそんな風に見たり感じたりして散歩などしません。
ほとんどの犬は、地べたや電柱、ガードレール、茂みなどをこれでもかと嗅いで回ります。この時、犬は一体何の匂いを嗅ぎ、どんな情報を集めているのかというと、
1.敵
自分が捕食されるかもしれない大型の肉食獣も想定しているかもしれませんが、それよりも同格のオスでしょう。オス犬にとって自分以外のオス犬は、繁殖の大きな障害であり、排除の対象です。「屈服させる」か「追い払う」か、さもなければ「殺戮」の対象になるのがよそのオス犬なのです。オス犬はちょっとでもよそのオス犬の匂いを感じ取れば、できるだけ脚を高く上げて自分の尿をぶっかけます。
2.捕食
「食事」、つまり自分が食べることのできる小動物の匂いを確認しています。実際に小動物を見つけたとて食べる犬などほとんどいないでしょう。しかし、これは本能。合理的な判断ではなく、「ついやってしまう」のです。
3.繁殖
当然ながらメス犬を探しています。メス犬の匂いがあればそれは繁殖のチャンス。高度な社会を形成し、年中発情期になってしまった人間に、犬の性欲がどれほどのものかなど想像がつかないでしょう。いや、私だって想像つきませんが。
移動中の情報収集は飼い犬には必要ない…どころか
さて、お分かり頂けますか?これらの全ては、野生動物にとって、生きていくため、そして繁殖するために物凄く重要な行為であり、そんな重要な情報を収集すると犬の神経は張りつめることになります。
犬が人間に飼われるということは、これら3つを犬自身が気にする必要は全くなくなるということであり、逆に好きなだけ匂いを嗅がせるということは、いたずらに野生の本能を増幅させてしまうということに他なりません。
「犬が行きたい方向に行かせ、自由に歩かせると、のびのびと落ち着いた犬になりますよ♪」なんて言うのは、タワゴトなのです。
特に今回の事例のように、「何だか可哀想だから」と言って去勢もせず、オスの本能を強く残したまま好きに歩かせると、凶暴になるのは当たり前なのです。
初心者が愚かな「教師」のタワゴトに騙されて、問題行動犬を作り出してしまった典型例なのですよ。
じゃあ一切自由に歩かせてはいけないの?
いいえ。
犬を好きに歩かせると地べたの匂いを嗅ぎまわり、マーキングする。これ自体は極めて基本的な本能であり、これを完全に止めさせるのは返って大きなストレスになります。つまり、どこかでやらせなくてはいけません。
それがどこかと言うと、決まった拠点です。その多くは公園ということになるでしょう。
例えばうちの犬は、「移動モード」の時はほとんど匂いを嗅ごうとすらしません。私の持つリードを緊張させることなく、付いてきます。ところがいつもの公園に1歩足を踏み入れると、その途端にリードは伸び切ります。公園の茂みや石垣に鼻を擦りつけて匂いを確認、マーキングを始めるのです。もちろん、私はそれを止めません。公園には、いつもの友達の匂いが染みついており、そこで匂いを嗅ぎ、マーキングするというルーティーンをさせるのは、逆に精神安定の効果をもたらします。
まとめ
犬が移動中にすることは、野生個体が生きていくために必要なシビアな情報収集であり、のびのびなどするわけがありません。
飼い主は、毅然とした態度で犬を主導し、
「敵などいない」
「食事は私が用意するからお前は心配するな」
「異性などラノベの中にだけいる架空の存在で、実在しない」
ということを教え、安心させてやることが必要なのです。
好きに歩かせたいのなら、ドッグランに連れて行きましょう。
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