自分に都合の良いしつけ論の書き換え
しつけって、いつからいつまでって決めてやるものじゃないですよね
大胆な問いかけです。ダメな飼い主同士がお互いを慰めるための言い訳でしかありません。
シーザーだって「しつけは思春期までに」と言っています。1歳までのしつけは誰でもできますが、1歳を過ぎても残ってしまう問題行動の修正にはもはや「特殊技能」と呼ぶべきしつけスキルが必要です。
なので私が相談された場合の返答は、
「最も簡単な時期にできなかったことを、非常に難しくなってからできるわけがないので、これまでのあなたでは絶対に無理」
とまず言います。
1歳までなら子供に九九を教えるようなもの。1歳を過ぎたらその九九を教わらなかった子を相手に三角関数を教えるようなものです。「誰でもできること」から一気に「特殊技能」になります。なので、プロのトレーナーに頼るか、完全に心を入れ替えるか、しかありません。(断っておきますが、プロのトレーナーを信用しているわけではありません。その飼い主よりはマシだろうってことです)
「いつまでって決めてやるものじゃないですよね」
というフレーズは、「鉄は熱いうちに打つ」理由すら考えなくても良くなる魔法の呪文です。
トレーニングもそうでしょ(たぶん)。トレーナーさんと歩いてるときはあんなにいい子だったのに!ってよく聞きますが、獣医さんでは(爪切り)おとなしくやらせるのに!と同じことなんじゃないでしょうか。飼い主に対しては遠慮なく、甘えもでますよね。むしろ光栄なことですよ。そこから本当に、どんなことをするときも飼い主が安心を与えられる日が来ることは。
もう無茶苦茶です。
愛情表現先行の女性にありがちなのですが、いい歳こいて引きこもった青年が家庭内で暴力を振るう光景が連想されます。安心を与えてるのではなく、単に飼い主が逃避先になっているだけなのです。別の表現を使えば、根本治療をせず所謂ドラッグを与えてその時の痛みだけを取っているようなもの。
そしてそのドラッグの副作用は、「ドラッグがない時の何倍もの不安」です。
基本に立ち戻ってしつけ論のおさらいをしますと、規律の源泉は飼い主でなければいけないのです。「トレーナーに預けてる時は良い犬なのに帰ってくると元通り」なんて話はいくらでもありますが、それは犬が変わっても飼い主が変わっていないからです。「トレーニングが必要なのは人間」とシーザーがいくら言っても通じない人には通じないんですよね。
犬が抱っこをねだるということは飼い主が愛されているということ?
そんな考えを持っている人は犬なんて飼わない方が良いんです。犬にとってこういう飼い主はただの逃避先。
では逃避先では安心できるか?というととんでもない。「逃避」したその先、例えば飼い主に抱っこされている犬に手を近づけたら咬み付いてくるようなことがありますが、これは逃避したからといって安心などしていないし、飼い主を信頼もしていないということの証拠です。
犬と飼い主の間に信頼関係が築けているなら、そもそも抱っこをねだってくること自体ないのですが、抱っこをされた状態でも飼い主が接近を許した人や犬に攻撃をしかけるということは基本的にないのです。
しつけを施されない犬は規律より自分の感覚を優先してくれる人に甘える
初対面の場合、怖がりの犬は女性には懐きやすいけど男性は避けることが多いという話は多くの方が知っているかと思います。これは、オスが体が大きいことや闘争本能を持つことから男を避けると同時に、女性が優しく、自分の言うことを聞いてくれることを本能的に感じ取っているからでしょう。
しかし、だからと言って、女性の言うことを聞く訳ではないのです。むしろその逆で、「自分が唸れば女性は退く」ということを犬は見抜いている、つまり自分がコントロールしやすいのが女性ということなのです。
私の知人の例。飼い主がテーブルで食事しているところに犬がすり寄ってきた際、「ほしいの?」と言って自分のおかずを一切れ与えました。その数分後、今度はこたつの上に乗った人間の食べ物を無断で食べてしまった際は「何してるの!」と飼い主は叱ったわけです。
私からすれば、犬がすり寄ってきたからといって食べ物を与える時点で言語道断なのですが、その後にこたつの食べ物を食べたからと言って叱るのもおかしいのです。その飼い主の視点からすると、「ねだってきた犬にコマンドもなしで一口与える」は許せることで、「こたつの上の食べ物を勝手に食べる」のはNGということなのですが、これはあくまで彼女の感覚による「画的にOKかNGか」という曖昧な基準しかありません。ということで指導。
「人間の食事中に寄ってきて食べ物を与えたのなら、人間の食べ物が自分の食べ物であると犬が認識して当然。しかも『待て』や『よし』といったコマンドすらなし。そういう犬がこたつの上の食べ物を食べたからと言って叱られても理解できるわけがない」と。
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