飼い主が犬を見るたび、犬はバカになる。

攻撃性

これ、前にブログでネタにしたような記憶があるんですが、検索しても出てこないんですよね。ひょっとしたらツイキャスで喋ったのかもしれません。まあ、ネタが重複したところで誰に怒られるわけでもないし、大事なことなので改めて1本の記事にしておきます。

ということで、今回の話のテーマは「犬を見るな」です。

 

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仲間に入りたいのに入れない犬

ある時、犬のイベントに出かけたんです。犬関連のショップが並ぶよくあるやつです。

そこには自分の愛犬を連れてくるたくさんの愛犬家が集います。私の目的は、自分の子をよその犬と触れ合わせることであって、買い物はほとんどしません。

さて、私が仲間内と昼食を食べていた時、ちょっと前からずっと気になる視線がありました。4人家族で10kg前後の雑種犬を連れています。そのご家族が犬とともにずっとこっちを見ていたんですよ。私は直感的に分かっていたんですが、自分の犬をよその犬や人と触れ合わせたいのにできないでいるんです。

で、お節介な私はテクテク近づいて「さあ、おいで」と声をかけます。するとその犬はものすごい勢いで吠え立ててきました。リードを持っていたパパが「この子ダメなんですよ、噛んじゃうんです」と。そこから私の指導が入ります。

「噛まれてもかまいませんから」と言って、私は【犬の横に】近づき、顔を撫でます。ご家族はそろって目を丸くしていました。「え、なんで大人しくなるんですか」と。

「いや、今危険な状態ですよ。僕はいつ噛まれてもおかしくありません。なぜなら、ご家族が一斉に犬の方を見ているからです。この子は物凄い緊張状態にあります」

私がやったことは、その犬に直線的に近づくのではなく、横に並び、犬と同じ方向を向いて、手だけを出して触ったというプロセスです。

 

犬と目を合わせてはいけない?

犬が人と目を合わせる時、その相手との間に十分な信頼関係があればその行為は「愛情表現」になりますが、そうでない限りは極度の緊張を与えることになります。当然私はその犬との信頼関係ができていないので、側面から近づき、危険な存在でないことを少しずつアピールするわけです。

その際、ご家族には「正面を向いて。犬の方を見ないでください」と指導します。

もし自分が犬の立場なら。家族の誰を見ても自分と目が合うんですよ。家族全員、常に自分の方を向いているんです。さて、正常でいられますか?犬からすれば、家族が自分に依存していることが感覚で分かってしまいますから、「コイツらを守るのはオレ様だ!」と言うボス意識が芽生えてしまいます。もちろん、敵・味方の判断力はまともに持っておらず、家族以外は全て敵!となります。当然、家族に近づく全ての存在に対し、吠え立て、噛みつこうとするわけです。

さて、「いつ噛まれてもおかしくない」という予感は、残念ながら現実になります。何かの拍子に思いっきり噛みつかれ、私の手から血がボトボト落ちるほどの怪我を負ってしまいました。ご家族は平謝りしておられましたが、最初に言っていた通り、私は覚悟の上で触っていたので何も気にしていません。そんなことより、これからの犬のしつけの方が大事なのです。

 

敵のいないうちの犬

ご家族からすれば、犬は可愛くて仕方ないし、心配でもあるでしょうが、だからと言って犬の方を見続けていたら、犬からすれば、極めて不自然な空気の中で毎日を過ごさなくてはいけなくなります。そして、犬の精神状態はどんどんおかしなことになってしまいます。散歩の時でもそうですよね?と確信をもって聞くと「そうです」と。黄金パターンですね。犬の方をじっと見ながら、犬に行き先を任せる、あの画が分かりやすく浮かんできます。

そこで私は、自分の犬のある“芸”を見せました。

うちの犬のリードを離して、好意的に見てくれていた(と私が確信した)全く見知らぬ人を指さして「行ってこい」と命令を出します(これは正確に言うと、命令ではなく「許可」なのですが)。するとうちの犬はトコトコと、その全く見知らぬ人に向かって歩いていき、座っているまたぐらまで到達するときびすを返して(つまり、その人と同じ方向を見て)チョコンと座ります。そして身を委ねて「撫でろ」と催促します。特に女性の犬好きの人が知らない犬からこれをやられると、悲鳴に近い「可愛いーーー!」を引き出すことができます。くだんの飼い主さんも、勝手にお手本に使われたその見知らぬ愛犬家も、驚くばかりです。

そして種明かし。

私は犬に、散歩の行く先を決めさせたり、よその犬や人が安全かどうかを判断させたりはしません。散歩の途中で「異物」を検知しても歩調を変えることもありません。私の行く先は常に安全で敵などいない、犬にそう教えるのです。すると犬は神経をピリつかせることなく、相手が誰であれ穏やかな状態を維持し、信用します。犬は敵ではないし、人は安全で自分にとって得する存在なのです。

逆に、犬に何かを考えさせるということは、「何かしら悪いことを想像させる」ことに他なりません、これは犬に限ったことではなく、知識が十分でない状態で何かを考えるというのは、動物の危機管理本能として、悪いことしか想像しないように脳が出てきているからです。自然界であればそれは長生きの秘訣になりますが、人間に飼われる環境においてはそれは邪魔な本能原理なので、それを取り除く必要があります。それこそが【しつけ】の本質です。

 

まとめ

犬を見ないでください。

簡単ですよね?でもできないんですよ。

件のご家族の場合、言葉で言っても分からないことは私には分かっていましたから、できるだけ実演でレクチャーしましたが、それでも理解されたかどうかは怪しいところです。

なんせ、毎日会うようなダメ飼い主にも同じことを言い続けてきたのですが、結局その飼い主さんは治りませんでしたからね。

ほんと、言ったとおりにやってくれりゃそれだけで犬は幸せになれるんですが、なぜやろうとしないのか、不思議でなりません。

 

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