飼い主が犬を怖がりにしてしまう例
散歩してるとちょいちょい見かける小型犬オハギくん(仮名)。
半径2mくらいの範囲を10分以上もウロウロしてて、たまにオハギとその飼い主がチラチラこちらを見るんです。
で、こちらから近づいてみると、オハギは飼い主のお尻に回って死角に入ろうとする。
「もう、この子は怖がりで、いつもこんな感じなんです」
違いますって。
もちろん先天的に持つ個性というのはあって、生来怖がりという子もいるでしょう。
が、「怖がり」に関しては生まれつきの要素などどうとでもなるんです。
特に、オハギの場合は、どう見ても生得的な性格ではなく、むしろ接し方によっては図々しいほどに人とも犬とも社交的でいられるんです。
つまり、飼い主がその子を怖がりにしてしまっているわけです。
その飼い主のやってはいけない行動こそが「同じ場所をウロウロ」なんですよ。
犬に聞いちゃダメ
別のテーマを扱う場合でもこのことはあちこちに書いていますが、これって主導するはずの飼い主が、犬に判断を委ねてしまっているってことなんです。
「あっちにおじさんと犬がいるけど、どうする?行く?怖い?」
こう聞かれたら犬は怖気づくに決まってるんです。あ、聞かれたと言っても口に出すか出さないかはどうでもいいんですよ。このウロウロという行為こそが、犬に聞いてるってことですから。
その時に犬は、
「え?聞かれるってことは怖いことがあるかもしれないってこと?ボクに判断しろって?行くわけないじゃん!怖いんでしょ?誰もいないとこに連れてってよ!」
となるんです。
そんなことを考える間を与えることなく、飼い主が主導してスタスタ歩いて近づいてしまえば良いのです。
これは他の場面でも同じです。シャンプー、ブラッシング、爪切り、これらは多くの犬が嫌がるものです。シャンプー、ブラッシングまでは飼い主でもできるでしょうが、爪切りとなるといきなりハードルが上がって、多くの飼い主さんはトリマーまたは獣医に完全委任していると思います。
じゃあなぜトリマーや獣医だと爪が切れるんでしょうか。
当ブログの読者さんなら思い出してください。思い出しましたか?
そうです、プロには迷いがないからです。プロは犬に「爪切ってもいい?」なんて聞いたりしないからです。
犬が嫌がるのは、人間がわざわざ「これ嫌?」って聞くのが最大の原因なのです。
「嫌なことがあったから抱っこすると怒る」という勘違い
また別のケースなんですが、散歩仲間の犬で私のめちゃくちゃ懐いてくる子がいるんです。会えば飛んでくるし溶けるほど顔も舐めてきます。抱っこしようが顔をクシャクシャにしようがされるがまま。
ところがこの犬、飼い主が抱っこしようとすると唸るんですよ。
「多分、ブラッシングで痛かったことがあって、それからだと思うんです」
と飼い主さんは仰います。しかしそれは「小さな一因」ではありますが、「大きな要因」ではありません。仮に私がブラッシングして同じような負の体験をさせてしまっても、私が抱っこして唸られることはまずないはずです。
それこそが「迷い」があるかどうかの問題なのです。
犬が唸るのは、自分のアクションで相手をコントロールしようと言う意思の表れです。でも犬だってバカではないので、唸ったところでこいつは行動を変えることがないと悟れば、わざわざそんなアクションを取ることもありません。どうしても耐えられないほど嫌であれば「逃避」という行動に出るでしょう。
私はもちろん犬が唸ろうが噛んでこようが行動は変えませんし、犬にもそれは伝わります。
この飼い主さんの場合、ブラッシングがきっかけではあったかもしれませんが、そんなきっかけなどどうでも良いことで、本当の要因は、犬に「俺ならこいつをコントロールできる」と思わせてしまっているところにあるのです。
無理やり抱っこすると犬はどうなる?
で、このオハギの場合、私はこの子の先天的性格を見抜いてますから、たまに隙を見て無理やり抱きかかえるんです。(つまり、稀なケースではあるけど犬によってはこういう方法を採らないこともあるってことです)
そんなことしたら犬が嫌がる!トラウマになっちゃう!
と、あちこちのインチキトレーナーから声が飛んできそうですが、そうはなりません。
実際にそれをやったら、次の日にはオハギは自分から近づいてくるんですから。
「犬が嫌がることを無理やりさせてはいけません!」
だったら犬は何もできません。
経験のないことを怖がるのは人間も犬も同じで、本能です。未知のものごとに対して少しの勇気、あるいは少しの強制力をもって経験することによって、理性と判断力が身についていきます。
私が抱っこして叩いたりヒゲを引っ張ったりするなら別ですが、当然ながらそんなことするわけがありません。
もっとも、シャンプーやブラッシングや爪切りなどは、犬にしてみればそれが自分の役に立っていると認識できない、ともすれば「人間の不条理な行動」とも思えるでしょう。しかし、犬には人間が発する善意やリーダーシップを感じ取る能力があります。
「これが何の役に立ってるのか分からないけど、この人の言うことを聞いて損はない」
そういう観念を犬に植え付けることを目標とすべきです。
怖がりの【よその犬】の抱っこのやり方
言っておきますが、犬についての理解が薄いと自覚される方は、よその犬に対してこういうことをするのはやめておいてください。以下に方法を記しますが、これはその理屈を心得てほしいからであって、マネしてくださいということではありません。
犬の怖がりを治すために無理やり抱っこする場合、犬が抵抗しても絶対に離さないでください。怖がって手から離れた場合、犬は大慌てになりますから受け身が取れずに怪我をする可能性があります。慣れていない犬を抱っこする場合は、首輪に軽く指を引っかけた上で、お腹から優しく、かつ素早くホールドし、多少暴れても大丈夫という態勢を作ります。そして犬がじたばたしても動いてはいけません。諦めて落ち着くまでは撫でてもいけません。
これによって犬には「抵抗はムダ」ということと「抱っこされてても害はない」ということを同時に教えることになります。
ひたすら待って、落ち着いたところで顎の下でもなでなでしてあげます。
まずは飼い主の怖がりを治す必要がある
話は戻りまして。
オハギはこの作業によって次の日には平気で近づいてくるようになるわけですが、困ったことに毎日会う訳ではありません。まだまだよその人や犬に免疫がないので、数日会わないだけで元に戻ってしまいますし、日を空けずに会ったとしてもそこに見知らぬ犬が1匹いるだけでまた怖がりを発症してしまうのです。
まだ成犬になったばかりの犬で、しかも(私が見る限りにおいては)先天的な要素によらないものですから、いくらでも修正は効きます。が、その飼い主はどうやらお母さんとその娘さんで、どちらもめちゃくちゃ優しく、犬に遠慮してるんですよ。娘さんの方にはトレーニング法を教えたら聞いてくれるかもしれないので、一度お話してみようとは思ってるんですが。
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