犬に「提案」?はぁ?
当ブログでよく取り上げている、あるドッグトレーナーのブログ主さんは、散歩から帰る時に「犬に提案」するのだそうな。
いやいや、これ自体は別に驚きません。
実際に、
「ねえココア帰ろ?もうご飯だよ?帰らないの?」
などとやっている人はいくらでもいます。ただ、これを犬のしつけ論として言う人は初めて見ました。
一方で、シーザー・ミランは「犬と交渉してはいけない」と主張します。
さて、どちらが正しいのでしょうか。
公園に行けば必ず目にする犬への「帰ろ」提案。
これをやる人で、私が及第点をつけるしつけを施せている人はこれまで見たことがありません。ただの一例もです。
具体的には、無駄吠え、凶暴性、怖がりのどれかを持っています。
ではなぜ犬に提案したり犬と交渉したりすると、犬がしつけが上手くいかなくなるのでしょうか。
犬は人間の感覚に同調する
犬は人間に同調します。
飼い主が恐怖や不安を感じれば犬も恐怖や不安を感じます。飼い主が楽しそうにしていれば犬も楽しそうにします。飼い主が堂々としていれば犬も堂々とするものなのです。
飼い主が犬に「提案」や「交渉」したりしようとしても、犬はその提案や交渉に乗ったりしません。
飼い主が提案や交渉をしようとするという状態は、飼い主が決断できていない、あるいは決定権を放棄している不安定な状態です。
犬はこの不安定な状態に同調してやはり不安定になります。
犬が擬人化された絵本やアニメの世界ではそれで上手く行っても、現実の犬は「え?何?どうしろって言うの?」ってな感じで戸惑います。
もちろんたまたまうまく行った人がテキトーな物語を付け加えることはいくらでもできますけどね。
もし仮に犬に交渉ができるほどの知能があるとして、その交渉が不調に終われば、つまり却下されてしまったらどうするのでしょうか。
それが朝の散歩であれば、
「すみません、犬に提案を却下されてしまって、出社が1時間ほど遅れます」
と会社に電話したりするんでしょうか。
メルヘン世界で犬を飼ったことのない私には分からない話です。
判断材料を持ってるのは人間でしょ?
当たり前の話ですが、散歩に行くタイミングも帰るタイミングも人間が決めるものです。
人間には学校や仕事や家事という生活上の義務があり、それらは時間の決められた活動です。
いつからいつまで散歩をするかという判断材料は人間が持っているのです。
「帰ろ」を連発する飼い主にだって生活上の義務からは逃れられないので、結局はどうにかして帰らなければなりません。
すると、グイグイとリードを引っ張ったり、最終的には抱っこしたりして帰ることになります。
件の自称ドッグトレーナーさんも犬を抱っこして移動したりするらしいのですが、実に滑稽な姿ですね。
健康な犬を抱っこするアホらしさ
「抱っこ」と言う言葉だけを見れば温かみのあるイメージですが、これって人間・犬双方にとって最悪ですよ。
「人間が犬の乗り物になっている」もしくは「人間が犬の移動の自由を奪っている」のどちらかですからね。
喜劇か悲劇かでしかないのですよ。
これはつまり、感覚に同調して意思が同調していない状態だと言えます。
愛情表現としての抱っこや、体調の悪い犬の抱っこは別として、健康上何の問題もない犬を抱っこするというのは、それまでに良くないことをした結果か、あるいはこれから良くないことが起こる原因になり得ます。
そこを心得てください。
さて、ここで基本のリーダーウォークのお話。
世の中の自称トレーナーさんの中にはこのリーダーウォークすら否定する人がいます。
なぜリーダーウォークを否定し、犬に「提案」しようとするのか。
簡単に推察できます。その光景が「イイ感じ」だから、これが理由です。
「命令」する飼い主より「提案」する飼い主の方が、犬が幸せに決まってますよね!(キラキラ
人間だからって犬に偉そうにする必要なんてないし、リーダーになる必要もありません!(キラキラ
だって犬は家族なんだもん!主従関係とかないんだもん!(フワフワ
と、このノリなんですよ。
リーダーウォークをしない=犬を飼い主より前に歩かせることは、「提案」と本質的には全く同じことです。
リーダーウォークをさせないとなぜ犬が問題行動を起こすようになるのか。
それは後で説明することにしましょう。
考えなくていいことをわざわざ犬に考えさせてはいけない
当ブログではかつて、このような記事を投稿しています。ざっくり内容を説明すると、
というもの。詳しく書き出したらまた長くなるので別の機会に譲ります。
ここで言いたいことは、
ということなんです。
犬に考えさせるとバカになる!?
遠くに知り合いだかそうでないのか分からない人と犬がいるとします。私がそれを仲の良い友人だと確認。「いいよ、行け」と言うとうちの犬は全力で駆け寄っていきます。
「すごーい!どうやればそんなに賢くできるんですか!?」
とよく聞かれます。これで驚く人はうちの家に来ればもっと驚くでしょう。「乗れ」「降りろ」「入れ」「出ろ」「上に行け」「下に行け」自由自在ですよ。
うちの犬が動物病院で「来い」の一言で診察室に入り、獣医を一切怖がることなく体を預けてしまう姿を見て、その獣医さんが「どういう躾をすれば犬はこうなるんですか」と驚かれた、という話は以前にもしました。
この答え方にはいくつかのバリエーションがあるのですが、そのうちの一つとして「うちの犬は考えないから」というのがあります。
「は?賢い犬というのは考えない犬のことなのか!?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
続きはこちら。
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