今回は目新しいことは何も書いていません。
過去に何度も書いていることの、新しい一例をご紹介するだけです。
恐がりの犬……?違います!
最近、公園に来るようになった小型犬の幼犬リュウビくん(仮名)の話です。
5ヶ月の子犬ですが、人間が触ろうとすると逃げて飼い主の背後へ隠れようとします。身体能力は高めですばしっこく、なかなか捕まえられません。同様に、犬のことも怖がるため、プロレスはもちろん、接触すらなかなかできません。
そのリュウビの飼い主家族のひとりであるママが、
「この子、本当に怖がりで……何とかなりますかね?」
と私に相談してきました。
私は、
「リュウビくんは怖がりなんかじゃありません。生後5ケ月で公園デビューも最近なのであれば、全く正常な反応です。この子の細かいリアクションを見ていれば、怖がりどころかむしろ図々しいくらいの性格をしているのが分かります」
と回答しました。
子犬であるがゆえに家の中でも十分運動ができるため、公園への散歩は週に1~2度程度とのこと。
「何かやるとすれば、散歩の頻度を上げてください。最低でも2日に1回の散歩は必要で、1週間もしないうちに、今心配されてる『怖がりに見える反応』はなくなりますよ」
実際は1週間もかかりませんでした。
1日だか2日を置いてリュウビに遭遇、その散歩中にほとんど怖がりは治ってしまったのです。
以下、ポイントを説明します。
散歩中に私がいた
普通、犬を飼っている犬好きと言っても、触ろうとして逃げてしまう子に無理やり接触しようとはしません。
私はします。
リードを手繰り寄せてマッハで首輪に指をかけ、お腹を覆うようにして抱き上げる。そこまではその子も暴れますが、抱き上げられるとじっとします。そうなったらこっちのもの。
よそのおじさんでも敵ではないんだぞ、ということを教えることができます。
ボールが好き
リュウビはボールを投げると追っかけます。
恐がりかどうかの判定はこれが最も分かりやすいんです。本当の怖がりであればボールを追っかけてる場合ではありませんから。
好奇心と運動欲求の強い、健康な子犬である証拠です。
おやつが好き
本当に怖がりだとか警戒心の強い犬は、よその人間がおやつを与えようとしても食べなかったりします。しかしリュウビは食べます。
「怖がり」と言っても一時的なもので、かつ食欲には敵わない程度のものなんです。
散歩の頻度、これ大事
散歩の回数を増やすというのは、「散歩は安全、散歩は楽しい」という記憶が薄れてしまうからです。家にいる時間が長いと、「外は怖い」という観念の方が強くなってしまうのですよ。
ま、めちゃくちゃ当たり前のことを書いてるんですが。
ただし、です。
ずーっと前に当ブログで取り上げた違う犬ソンケンくん(仮名)の例です。
今回紹介した子と実に似通ってて、やはり飼い主が「この子は怖がりだ」と心配されていました。
しかし、私が少し時間をかけて触っていると、慣れてくるんです。で、好奇心もすごく強い子だということが分かりました。
会った直後と、分かれる直前では犬の態度がかなり変わってるんですね。つまり、進歩しているんです。
ところが、散歩の時間が合わなくてなかなか会えないんですよ。
次に会うまでに2週間3週間と空いてしまう。
すると、その子の頭はリセットされてしまい、また私や他の犬を避けるようになってしまうわけです。
じゃあ散歩の頻度の問題じゃなくね?
「散歩の回数を増やせ」と言うのは、その前提に「適切な散歩」があるんです。
ソンケンの場合、散歩と言っても、「私が絶対にやってはいけない」というやり方をしてしまってるんですよ。
具体的に言うと、ソンケンは他の犬の気配を感じると公園の入り口から入ってこようとせずマゴマゴするんです。その時飼い主はと言うと、ソンケンが動くまでソンケンをじっと見ながらその場を10分でもウロウロするんです。
こんな散歩だと、やればやるほど犬の精神状態は悪くなる一方です。
犬を見るな!
行動を犬に任せるな!
スタスタ歩け!
まずは飼い主が人間に挨拶しろ!
犬好きを見つけたら自分の犬を委ねろ!
これが散歩のやり方です。
犬が本当に怖がりかどうかをどう判定するか
犬の成長過程を生後の月齢で追っていく方法がありますが、これはあくまで生物学的(肉体的)な成長です。
「もう5ヶ月なのに」と言っても散歩デビューが遅かったのなら心配する必要はありません。
何度も書いておりますが、私がかつて飼っていた犬ピサロは完璧でした。唸らず、吠えず、ケンカせず、犬も人間も全く怖がらず、いつも穏やかで、誰でも呼べばテクテク寄っていく…という理想的な犬だったのです。
しかしそんなピサロはペットショップの売れ残りで、うちに迎え入れた時にすでに生後7ヶ月でした。生後7ヶ月だからすでに精神的にも成長し始めていたか?と言うと全くそんなことはありません。とんでもなく怖がりだったのです。
リードを繋いで外に出ようとしても体が固まり、やっと外に出たと思ったら3cmほどの段差を跨げずまた固まり……という有り様。
しかしそんな「怖がり」もほんの一時的な、一過性のものです。
恐がりに見えるのも当然で、産まれた後何か月もの間ケージに閉じ込められて外の世界を知らなかったわけですよ。それが訳も分からないままある日突然知らない家に引き取られて、さらにその後見たこともない外の世界を歩かされたら、堂々としている方がおかしいのです。
恐怖の源泉は無知なのですから、この「怖がり」は経験によって消失していきます。生後の生物学的成長ではなく、社会観念の育成こそが「普通の犬」を育てるのです。
「犬が怖がってるから」と公園の入り口で一緒にマゴマゴしている飼い主は、しかるべき経験をさせないまま犬の肉体だけを成長させ、「怖がり」を慢性化させてしまっているわけですよ。
コメント