なぜ犬に「行ってきます」を言ってはいけないのか
シーザー・ミランは、「出かける時に犬に挨拶をしてはいけない」と言っています。そして出かける際に落ち着かなくなる犬は、所定の場所にとどまるよう指示する、と。
ではなぜ、犬に行ってきますの挨拶をしてはいけないのでしょうか。
答えは簡単。犬は程度の差はあれ、皆分離不安症を抱えているからです。
「行ってきます」は飼い主が家にいる時と家にいない時の明確な境目を作ってしまいます。
「行ってきます」=別れの挨拶は、いずれ飼い主が帰ってくることを保証してくれません。
人間であれば「ママは〇〇商事の経理の仕事をしていて通勤時間含めて10時間会えないが、夜には帰ってくる」と分かりますが、犬にそんな事情を理解できるはずもありません。
「行ってきます」を言われた犬は、それが別れの合図とだけは理解できるのですが、それ以上のことが理解できないため、常に「今生の別れ」の恐怖に苛まれます。
これが猫と違って「人につく」犬の生来の習性なのです。
よって、飼い主は常に「犬が不安がらない」態度を心掛けなくてはなりません。
犬を戸惑わせてはいけない
この犬の困惑や不安は、散歩から帰る時の「交渉」と同質のものです。
すなわち「どうすればいいの?」と悩んでしまうことになるわけです。
犬は飼い主の指示に従っていれば良いし、指示がないなら好きにしてて良い、これを徹底して安心させてやる必要があるんです。
出かける際は何も言ってはいけないし特別な態度を取るべきでもありません。
庭にガーデニングのネギをちぎりに行く3分も、仕事に出かける10時間も、同じでなければいけないのです。
すると犬の頭の中で「飼い主が家の外に出ること」と「飼い主は必ず家に帰ってくる」がセットになり、不安は薄まっていくことになります。
トイレに行くだけで「今生の別れ」をする友人
犬友達と出かけた際、ま、女性なんですが、
「トイレ行きたいんで、ちょっとうちの子見ててもらえますか」とリードを託されます。その際に彼女は、
「ごめんねココア、すぐ帰ってくるから。大人しくできるでしょ?なるべく早く済ませるから。小ライスさんの言うことをちゃんと聞いて。吠えたりしないでね」
って、くぉらあああ!!そんなこと言うてる間にさっさと出すもん出してこんかい!!と説教です。
そんなこと言うから犬は逆にクゥーンクゥーン、時にはキャンキャンとうるさくなってしまうんです。
この犬は無駄吠え・噛みつき・分離不安の3セットを持つ子でして、常々指導してるんですが、飼い主さんはほぼ病気で全くその態度を直そうとしませんでした。私の目から見れば、本来はかなりしつけのしやすい犬です。
ところが普段から飼い主の接し方がこんな感じで秩序がありません。
散歩する際は犬を前に歩かせ、犬の方をじっと見ながら、犬が行こうとする方向に自分がついていきます。帰る時ももちろん「帰ろ?まだ散歩したいの?」と「提案」「交渉」。
3分で済むトイレですら今生の別れのような挨拶をするのですから、犬は慢性的な不安症に陥ってしまいます。
飼い主本人にとってみれば、それは「愛情表現」ということになるのですが、犬の方はそれを言われても理解するどころか、
「なんや分からんけど、飼い主どっか行ってしまいよる!わし捨てられる!!」
と思ってしまうのですよ。
まとめ
大事なことなのでもう一度。
犬に、犬の知性を超えた「事情の理解」や「判断」をさせようなんて思ってはいけません。それは不可能なのであり、犬が感じるのは困惑と不安だけ。強烈なストレスを与えてしまうことになります。
散歩から帰る時は帰るという意思表示をしっかりして帰路につけば良いし、出かける時は何を言う必要もありません。
犬は人間側の事情を理解できませんし、する必要もありません。
犬が理解すべきは、「人間に従っていて良いことはあっても悪いことはない」と言うことのみです。
もちろんそれを可能にするのは、飼い主が常に理性的な振る舞いをしていることが前提条件です。
コメント
うちの場合ですが、「留守番」と指示を出さない方がソワソワしだしますね。
何も言わずに出て行く家族がいると、家中探し回ったりと落ち着きがなくなります。
指示を出してるとそういった振る舞いはないのですが、
全員出て行くときはものすごくションボリします。
(不安になるというより悲しんでいる様子)
なんにせよ習慣を明確にして犬を不安にさせないことが大事なんでしょうね。