『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』感想。

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ドラクエやFFの映画はなぜ駄作になったのか

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』。観ていない人は、マリオがクッパを倒しにいく話だと思われているかもしれないが、その通り。そしてそれ以上のことが起こらない。が、小生はかなり感動した。

この手の版権モノ映画は、「お前らどうせこんなシーン入れてほしかったんやろw」的なわざとらしいファンへの媚び方をしたり、あるいは映画スタッフが元々の話やキャラクターを無視して勝手なことをやったりすることが多いが、マリオムービーにはそれが全くない。

 

人気ゲームが原作の映画で成功例と言えば、『トゥームレイダー』『バイオハザード』シリーズなんかがありますね。なんだかとってもジョヴォヴィッチです。

一方、酷かったのが『ドラゴンクエスト』と『ファイナルファンタジー』。ここまでメジャーなタイトルだと逆に作りにくいってのはあるでしょうが、それにしても酷かった。

『ドラゴンクエスト・ユア・ストーリー』はこのブログでも取り上げましたが、映画館に観に行ったことを後悔した作品です。マリオほどではないにしろ、多くの国民が知り尽くしている感のあるメジャータイトルを、おそらく特にゲームにもドラクエにも思い入れがないであろう、でも人気監督でしっかり売れる映画を撮れるクリエイターにオファーして作ったらなんだかよく分からない映画になっちゃったという感じ。

題材はドラクエの中でも最も映画にしやすいであろう=元々ストーリーが完成されている『5』。親子3代にわたる壮大な物語で、途中には「結婚イベント」があり、勇者を探していたら実は自分が生んだ子供が勇者でしたという分かりやすいオチ。

ベースのストーリーは完成され過ぎてて「いじりしろ」がない。でもクリエイターのプライドは見せたい。そこで山崎貴監督が考えたのは、「よっしゃ、ラスト10分で“メタ”やったろ!今まで見てたの、全部ゲームやったんやでって観客驚かしたろ!」というトンデモ展開でした。

私がもし「ドラクエで映画を作れ」と言われたら『4』を選ぶでしょうね。あれほどキャラがバラエティーに富んでいて、話がアレンジしやすい作品もありません。

これがどれほど酷いものだったかはこちらをご覧頂ければ。

もう一つの『ファイナルファンタジー』は逆のパターンで、作者である坂口博信氏が自らメガホンを取ったものの、自分の作った世界に陶酔してしまい、出来上がったのは完全なマスターベーション映画。ファンですら全く付いてこれず、とんでもない大赤字を出してしまいました。私も観ましたが、ハッキリ言って苦痛でした。

 

マリオムービーはマリオとファンへの愛に満ちている

マリオの生みの親・宮本茂氏を含む任天堂スタッフと映画製作スタッフが綿密な打ち合わせを繰り返したそうで、「媚びてないのに置いていかない」誰が見ても満足できる自然なマリオワールドがスクリーンに再現されていた。

この2作との対比でよく分るのが、『マリオ・ムービー』が素晴らしいバランス感覚を保ったまま制作されたということです。ドラクエ映画では、ドラクエやゲームに思い入れのない映画マンが勝手なことをやって失敗、FF映画は原作者が「自分の思い」だけで映画作品であることを忘れて観客を置いてけぼりにして失敗。

その点マリオ・ムービーは、ツイートで書いた通り、ゲームクリエイターと映画クリエイターが綿密な打ち合わせをしながら(しかも相当な時間をかけて)作られたらしく、見事に結実しています。

キノコを食べて巨大化、あるいは特殊能力ゲット、被ダメで元通りというのも、物凄く自然に再現されている。

こういう本来のゲームの要素を映像で再現しようと思ったら、何ともわざとらしくなるのが普通なんですが、マリオ・ムービーではめっちゃ自然にやっちゃってるんですよ。

そしてこの映画で、改めて、ゲームとしての『スーパーマリオ』の熟練者によるプレイが、実はパルクールであることも認識できる。

さらに、この手のお子様向けアクションアニメであっても絶対途中でだれるところがあるもので、私は『ミニオンズ』でも寝てしまったのだが、マリオムービーには一瞬たりともだれる間がなかった。どのシーンにも必然性と勢いがあり、『トムとジェリー』を観ている感覚で1時間半が終わる。

私のような、まだ名前の付いてなかった頃からマリオを知っているジジイのファンからするとなおのこと感慨深い。音楽担当は全く知らない外人さんだが、任天堂の近藤浩治氏による楽曲(つまり、例のあの曲をはじめとするマリオシリーズの作品)がベースになっているのも熱い。

この後続きはブログで。

 

はい、今書いてます。

ここからツイートでは語らなかったハイライトを。

ここからネタバレ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーチ姫がマリオに修行をつける

どういうわけかリアルな世界から【ちょっとだけ繋がってる】別世界に放り込まれたマリオとルイージ。マリオはクッパ襲来の危機が迫ったキノコ王国を救うべく立ち上がるのですが、なんせ実力不足。そこで修行をつけてくれるのが、なぜかピーチ姫です。

ピーチは最初から基本スペックが高く、素の状態だと多分最後までマリオより強いキャラのはず。「それでも僕はやる!」とマリオが言うので、ピーチがトレーニングを始めるのですが、そのトレーニング空間こそ、はてなボックスやブロックで埋まった、我々の目に焼き付いているあの『スーパーマリオ』の世界でした。

お手本を示すべく、ピーチはやすやすと障害物だらけのコースをクリアするのですが、ただのおっさんであるマリオには難しい。で、ピーチは頭上のブロックを叩いて怪しいキノコを取り出し、マリオに与えます。つまり、スーパーマリオですね。キノコの力でパワーアップはしたものの、それでも何度も何度も失敗します。

これ、要するにゲームとしての『スーパーマリオ』を遊んでいたプレイヤーの目線なんですよ。それを「ココ見て」感を出さずに、非常に自然にやっちゃってるんです。そりゃ私の世代だと嫌でも琴線に触れるものがあって、『マリオ2』が脳内で再現されしまいましたよ。

ちなみにピーチ。大昔から謎だったんですが、「みなしごだった人間の女の子がキノコ族に拾われる」以前の出自はこの映画でも不明です。この人、マリオ兄弟が来なければ、ずっと「キノコ族の中でたった1人の人間」として人生を送るつもりだったんでしょうかね。

 

元々敵だったドンキーコング

若い人だとすでにピンと来ないかもしれませんが、マリオとドンキーコングは元々敵対関係にありました。そもそもマリオはいきなり主役としてデビューしてるんですが、そのデビュー作が『ドンキーコング』で、その時点ではマリオという名前も付けられていませんでした。その続編『ドンキーコングJR』では、今度は主人公と敵が逆転、マリオは悪役として登場し、その時初めて「マリオ」という名前を付けられています。で、初めての冠ゲームが「スーパー」の付かない『マリオブラザーズ』となります。

映画では、クッパ襲来に向けてジャングル王国に協力を依頼してきたピーチ一行に長老クランキーコングが課したのが、「息子であるドンキーコングと対決して勝て」という条件でした。元々のゲームの設定とは違いますが、ここで一応の敵対関係になって、ケンカして勝利し、仲間になるという少年ジャンプ的経緯が出来上がるわけです。

 

小ネタ

冒頭の1シーンでは、アーケード版『ドンキーコング』が映り込みます。『ドンキーコング』と言えば、先述したようにマリオにまだ名前がなかった時代のデビュー作。要するにメタネタですね。

さらに、マリオがいじけて自分の部屋でゲームに興じるのですが、そのプレイするゲームがNES(北米版ファミコン)の『パルテナの鏡』。任天堂作品で、音楽が素晴らしい名作ですが、ここではあからさまにマリオのゲームを持ってこないところが良いですね。

『ドンキーコング』をほんの少しだけ映り込ませるのはギリギリ許せるおふざけでありファンサービスなのですが、マリオが『Dr.マリオ』とかやってしまうと、それはもう台無しなのです。実に微妙な加減ではありますが。

 

クライマックス、俺ならこうする!

映画の最後はご期待通り、マリオとルイージがクッパをやっつけてくれます。これといって文句のないマリオムービーですが、しいて言うならこのラストバトルだけはもう少し工夫があっても良かったかなとは思います。

「スーパースター」をゲットしてパワーアップしたマリオ・ルイージ兄弟がダブルパンチでクッパにとどめを刺すのですが、いやいや、それはちょっと安直すぎやしませんか?

マリオとルイージは双子の兄弟。息がぴったりのはず。息がぴったりだからこそ、ここは連携技を使ってほしいところです。

ゲームとしてのマリオシリーズでクッパとの決戦が最も印象的なのはどれでしょうか……と自問してみると、私なら『マリオ64』なんですよ。旧来のファイヤーボールをペッペッペ!と吐いたり、3回踏んづけておしまい、ではななく、『64』ではマリオがクッパの尻尾を掴んでジャイアントスイングで投げ飛ばします。

この、「小さなマリオが巨大なクッパを豪快に投げ飛ばす」という画は相当インパクトが強く、痛快です。マリオが投げ飛ばしたクッパを、空中で待ち構えるルイージが地面に叩き落とし、バウンドしたクッパを兄弟のダブルパンチで吹っ飛ばす。つまり、マリオブラザーズによる連携メテオスマッシュですね。

 

クッパのキャラクター

マリオ達に吹っ飛ばされてしまうクッパですが、このクッパと言うキャラクターも素晴らしい。ルイージ達を殺そうとし、強引にピーチを妻にしようとし、それが適わないからとキノコ王国を襲撃する酷いヤツ。でもピーチへの思いをピアノの弾き語りでラブソングを歌ったり(しかも、ピーチに聴かせるのではなく、独りで、です)するようなロマンチストでもあり、憎めません。マリオ兄弟から受ける仕打ちも、命を奪われることなく、小型化されて鳥かごに閉じ込められるという可愛いもの。

 

日本語版と英語版は違う?

洋画を観ていると、字幕と吹き替えで微妙に表現が違うことはよくありますが、マリオムービーはかなり違います。

と言うのも、この映画においては「英語脚本を日本語に翻訳」したわけでも「日本語脚本を英語に翻訳」したわけでもなく、最初からセリフを日本語と英語を同時進行で作成していたのだとか。

このあたりにも制作者のファンやマリオへの愛が感じられます。

 

と言うわけで、マリオが好きな人やお子様には文句なくお勧めできる作品です。

あ、点数を付けるとしたら、87点です。



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