『M-1グランプリ2023』感想

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漫才シルエット お笑い

よく考えたら、最後に、結果を知らずにM-1鑑賞したのがいつだったのか憶えてないんですよね。毎年録画で数時間ディレイで観るもんでして、その間にスマホ開いたら皆何も遠慮なしに優勝コンビ書いてるし、Yahoo!ニュースなんかも一時は遠慮してボカしてたくせに、ここ数年思いっきり見出しに書くようになっちゃってますね。

まあそんなことで怒る私ではないのでお前ら全員(自主規制)

ということで……

 

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1本目寸評

令和ロマン 92(90)

自分で無限にボケをかぶせていくスタイル。演技力も高く、上手い。ただボケのセンスはまだ研鑽の余地あり。

 

シシガシラ 89(88)

ハゲをネタにコンプラを皮肉るという着想は良い。だがハゲだけで4分間は長すぎる。一旦ハゲを忘れさせてそれ以外のコンプラの話に展開し、最後にハゲの天丼で大オチと言うのが良いかもしれないが、そもそもコンプラネタも最近飽和気味で優勝が狙えるレベルにはならないだろう。

 

さや香 93(89)

様々なネタパターンを持つさや香だが、このスタイルが最も安定感があり、少なくともファン側から見たらこれが「十八番」だろう。

 

カベポスター 86(88)

よく考えてみたら、カベポスターのネタってM-1優勝前にチュートリアルがよくやってたパターンだ。チュートリアルの場合はこの基本スタイルから「徳井が常軌を逸するほどテンションを上げていく」という要素を付け加えてM-1優勝に至った。カベポスターも台本を根本から見直さないと「どこかで見たことあるような漫才」しかできないし、とても優勝は狙えない。

 

マユリカ 90(91)

普通に面白くて特に欠点はないが、特筆すべき点もない困ったコンビ。出場10組中、審査員全員が90点台を付けたのは4組であり、その1組がマユリカなのだが、その割に(多分)観た人の記憶にあまり残ってない。でも見返すとやっぱり面白いのよね。M-1にはまだ2~3回チャレンジできるはずだが、このまま正面からの進化を期待される。

 

ヤーレンズ 95(93)

ボケてないと呼吸ができないタイプのボケ。とにかく口を開くたびにボケる。そして一つ一つの細かいボケのレベルが高い。似たコンビにはサンドウィッチマンやアンタッチャブルがいるが、手数だけで言えば彼らを上回る。

「恩奈残」「北京原人のDVD」「ゴスペラーズのドラム」

 

真空ジェシカ 88(92)

「映画泥棒が勝った!」は面白かったが、M-1優勝という基準で言えばネタそのものはすごく幼稚に感じられる。あくまで「M-1優勝戦略」という観点から言えば、丸腰で来た割りには良い点数獲れたよね、という感じ。

 

ダンビラムーチョ 85(87)

歌ネタはもういい。

 

くらげ  91(86)

あのネタ形式からミルクボーイが連想されてしまうのはやや酷というもの。むしろミルクボーイっぽいものからよくぞここまでオリジナリティーを創り出せたなと感心する。実はこのコンビのこのネタ、小生はNGK『初舞台選手権』ですでに生で観ていたりする。たしかにM-1という大舞台では跳ねづらいだろうが、油断しているところにこのネタをかまされるとかなりみぞおちに来る。くだんの大会でも爆笑をかっさらっていた。ちなみに、同大会で優勝したバッテリィズが敗者復活戦で目立っていたが、あのネタもチェック済み。この2組は注目株である。

 

モグライダー 86(91)

2年前と同じく歌ネタの中でも歌謡曲ネタ。審査員の誰かは「進化版」と言っていたが、何も進化していない。歌ネタで優勝というのはよほどでないと無理。

 

2本目を観て

私から見たM-1って、ざっくり「当たり年」と「外れ年」に分けることができて、過去で言えばちょうど半々くらいなんですよ。去年のウエストランド、一昨年の錦鯉なんかは当たり。その基準とは何かと言うと、評価や分析をしている余裕がないくらい笑わせてくれたらそれは「当たり」なんです。他にはブラマヨ、アンタッチャブル、ミルクボーイ、サンドウィッチマン等。彼らの漫才は観ている間笑うことに必死で、分析や評価は2回目からになります。

その基準において、今回のM-1は観ながら分析できる程度には余裕があったので「外れ年」ってことになります。が、つまらなかったわけではありません。今回最終決戦に残った3組は、いずれも発展途上のコンビだったのです。3組が3組とも、素人が見ても改善点が見えてくるわけですよ。

 

さや香は温度を下げて

まず、さや香。

去年、ようやく自分たちの漫才の完成形を見つけたのかもしれないとべた褒めしました。今回も1本目のネタではそれを見せつけてくれました。ところが2本目の「見せ算」はチンポジ病の発作ってやつですね。まだ『打ち上げ』を観ていないのですが、切り取り動画を観る限り、あれは「ダブルヒガシやコウテイに見せるためのネタ」だったそうで。

それはまあ良いんですが、問題は「優勝を狙ったのかどうか」です。強がりでエクスキューズとしてそういうエピソードを語ったのか、優勝を狙った上であのネタをやったのかではかなり違います。私はダブルヒガシでもコウテイでもなくいちお笑いファンであり、そのお笑いファンである私からすると、2本目は全く笑えませんでした。

当然ながら、黄金パターンと言えば、最終決戦に進出ってことは1本目がウケたってことなんですから、2本目も同じスタイルのネタで挑むことです。今回のさや香のように、ネタスタイルを大きく変えた上にボケとツッコミも入れ替わってるなんてことをやってると、観客のチューニングが間に合わないんですよ。「さっき3つだけ食べた餃子がまた食べたい」と思ってる、すでに餃子の口になってる観客の口にマカロン放り込まれるようなもので。

とは言え、さや香のようにいろんなスタイルのネタを試すコンビは大好きでして、その中には不出来なものも単純に自分とは合わないものもあるというだけのこと。

もし私が彼らの友人であり、彼らが本気で優勝を狙ってるのだとしたら、「温度を下げろ」というアドバイスをするのではないかと思います。餃子と違う喩えをするなら、彼らがスベる原因は、彼ら自身の漫才の熱量の大きさであり、客は39℃のお湯を求めてるのに43℃のお風呂を提供するようなものかと。やけどしないように少し水で埋めましょう。

 

ヤーレンズはテンポを落とすだけで化ける

次にヤーレンズ。笑いに魂を売った系のボケ……は素晴らしいのですが、私から見て改善点があるとすれば、「活舌とメリハリ」です。噛まずには喋っていてもあまりに早口でボケの密度も異常なレベルで高いので、結構聞き逃しによる「笑いのロス」が発生していると思うのです。客が笑い終えてないうちにまたボケるんで、タイヤの空転みたいな現象が生じちゃってるんですよね。

テンポを1割程度落とした上で(つまり、内容的には1割程度減ることになるが)抑揚をつけるだけで、私なんかは分析している暇もないくらい笑える漫才に化けるのではないかと。

才能という点では頭一つ抜けてるように思いました。

 

審査員の「ウケてた」は要らない

さて、見事優勝した令和ロマン。

…と、その前に。M-1の審査において、審査員が「よくウケてましたね」とか、高得点の根拠として「すごくウケてたので」みたいなことを言うことがちょいちょいあります。松本人志でさえあります。が、観客の反応が点数に左右するのなら、会場にデシベル計置いとけば良いだけであって、審査員なんて要らないんですよね。「アンタはどう感じたか」を語るのが審査員の仕事です。

お笑いの審査って、ガチでやろうと思ったら、究極的には「観客なし」=笑いなしでやらないといけないんですよね。でも本当にそんなことをやっても視聴者は面白いとは感じません。『ドリフ大爆笑』は観客なしなのにわざわざ笑いを足しているのは、笑いと言う感情が多分に「共鳴」という作用に依存しているからです。つまり、「皆が笑ってるから面白い」わけです。

もちろん大勢の観客の中でも最初に笑い始める人ってのは必ずいるはずですが、遠慮なく笑おうと思ったら皆が笑ってる必要があります。互いに共鳴し合って増幅していくのが笑いなんですよね。バラエティー番組でいまやテロップとスタッフ笑いが欠かせないのは、「ここ笑うところですよ」というきっかけが必要だからです。

 

令和ロマンは空気依存タイプ

それを踏まえて、今回の令和ロマンのウケ方というのはかなり【空気依存】するタイプなんだろうと思ったわけです。

先述した私にとっての「当たり年」の優勝コンビはいずれも空気依存度が低く、同じネタをやれば概ねどんな舞台のどんな客でも笑いが取れるでしょう。それがキングの持つ力です。それに対し令和ロマンは、客が変わるといっきにドン滑りする危うさを持っています。

かつてノンスタイルが優勝した際、テレビを観ていた視聴者との感覚の乖離が結構あって軽く炎上したってことがありました。その時、オール巨人だったかが、「いや、会場はウケてたんです」という言い訳(?)をしてたんですね。別にそんな言い訳いらないでしょう。あなたが面白いと思ったのなら投票すればいいだけで。

で、八百長なんてない、そして会場はウケていたってことを信じるなら、やはりノンスタイルはまだ空気依存するタイプで、説得力に欠けるのです。ちなみにですが、私はネタ番組を観ていてノンスタイルが出てきたら早送りします。

ま、そんなこんなでして、3組いずれも発展途上の(ほんの数年先が有望な)漫才師だと思ったわけですよ。

 

海原ともこ

立川志らくと入れ替わる形で今回から審査員を務めることになった海原ともこ。これで初めて、7人の審査員のうち女性が2名という体制になったわけです。あ、文句つけたいわけではないですよ。ぶっちゃけ、審査員なんて松本人志さえいればあとは水モノですから。

さて、海原ともこさん、私も好きなタレントさんですが、漫才はと言うと、「大阪と東京の違い」「オバハンあるある」みたいな、きわめて安易な、平たく言えば「ヨゴレ」漫才です。あくまでネタのスタイルがヨゴレであるというだけであって、漫才が面白くないということではありませんからね。

ここでは特に海原ともこについて語りたいわけではなく、ほんと女漫才師って少ないよなぁと思ったってことを言いたかっただけです。

女漫才師というと誰を思い浮かべるでしょうか。ハイヒール?トークは良いけど、ハイヒールの漫才は学芸会以下。あと誰?非常階段?メンバメイコボルスミ11?あ、これ4時ですよ~だメンバーですね。

いや、ほんと思い浮かばないんですよ。

私の記憶をたどっていくと実力ある女性漫才師って、春やすこ・けいこ、海原さおり・しおり、海原千里真理、今いくよ・くるよ、大助花子……あたりでしょうか。あ、個人的には高僧・野々村も好きでした。ピンと来ない人も多いかもしれませんが、野々村の方は2丁拳銃川谷のダンナで今ワイドショーのコメンテーターやってます。この野々村さんも実力者なのでそのうち審査員をやるかもしれませんね。

一旦海原ともこの話に戻りますが、今回観てみたら、「華」としてすんごく良い塩梅ですね。ムードメーカーとして極めて秀逸であり、演者芸人の方もほどよく力が抜けたんじゃないでしょうか。山田邦子の「天然暴走枠」に対して「女性ムードメーカー枠」という存在は全体としてすごくバランスが取れてるような気がします。

 

ではまた来年。

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