『24JAPAN』がダメな理由。

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24japan テレビ

テレビ朝日が60周年記念ドラマとして世に放つ『24JAPAN』。

ほーら、皆さん、怖いもの見たさで観たくなっちゃいますよね。

というわけで第一話を観た感想を。

 

その前にこんな説明いる?というところから説明を。

この『24JAPAN』はあのアメリカの『24』の日本版リメイクです。『24』は、テロリストから狙われ続けるアメリカの大統領や市民を一人のタフガイが守り抜くというお話。並みの人間なら躊躇するようなことをする思い切りの良さ、決断の早さ、腹を撃たれても平気で動き続けられる超人的タフさが売りのイカレ野郎が主人公です。

この『24』は後に日本で「海外ドラマ」という括りとして扱われるブームの火付け役となり、スーパーヒット作品になりました。第1シーズン放送が2001年と言いますから、随分古い話になりましたね。私もファンの一人で、いろいろと海外ドラマを観てきましたが、『プリズンブレイク』よりも『ウォーキングデッド』よりも、やはり『24』です。

 

さて、このスーパーヒットドラマを今頃になって、しかもこともあろうに日本でリメイクするという意欲作が『24JAPAN』です。

日本版がダメであろうことは分かり切ってるんですが、一体何がどうダメなのかを考察していきます。

 

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主役が唐沢寿明

本家『24』において主役ジャック・バウアーを演じるのがキーファー・サザーランド。このキャスティングは実に絶妙だったのですよ。それまでのキーファーは親の七光りでとりあえずドラマ・映画界にはいたものの中途半端な存在で、飲酒運転などのトラブルも起こしていました。そしてジャック・バウアーと言えば、任務のためなら手段を選ばない、何を考えてるか分からんヤバいヤツです。この演者と役柄のマッチング具合がバツグンに良い。常識的なのか非常識なのか、正義なのか悪なのか、一体何考えてるのか、キーファー、ジャックどっちも良く分からない不気味さを持っているんですよ。

ジャック・バウアーは第1話から、「普通の人が経験していないことをいろいろと経験してきた、みょーな迫力を常に放つタフガイ」という雰囲気をぷんぷん醸し出していましたが、一方の唐沢寿明と言えば、こりゃもう全然ダメです。

唐沢が悪い役者というわけではなく、唐沢にはできない役どころなのですよ。彼の代表的な出演作品と言えば、『愛という名のもとに』『利家とまつ』『ルーズヴェルトゲーム』『白い巨塔』『ラヂオの時間』等々ですが……どれもこれも「普通の人」なんです。

今ちょうど大河ドラマの『利家とまつ』を観ているところなんですが、これなんぞ非常に良いサンプルです。秀吉役の香川照之は、最近では『半沢直樹』の大和田役のイメージが非常に濃くなってますが、もはや怪物と言える演技力です。モンスターと化していく秀吉を親友の立場から諫める利家。主役ってだいたいそうなんですが、この利家役に演技力なんて要らないのですよ。「傾奇者」とは言え、むちゃくちゃ常識的な純粋まっすぐ君ですからね。この利家と秀吉の配役を入れ替えるとどうなるかと言うと、見た目はともかくとして、香川は演技はできる。ところが唐沢に秀吉はできないのです。戦国時代の中でも秀吉役というのは特に難しくて、出世街道序盤はどんな人をも油断させてしまう陽気さと人懐っこさを持っていなくてはいけませんが、信長の死後、天下を獲った秀吉はその権力の増強と維持のために傲慢さ、狂気、精神的不安定に陥っていくことになります。これを1人の人間が演じることになるのですから、そりゃ並大抵の俳優ではできません。香川照之の秀吉は見事の一言でしたが、唐沢には逆立ちしてもできません。

…おっと、『利家とまつ』については改めて書くとして、話は『24JAPAN』。本家のジャック・バウアー役であるキーファーのようなキャラクターを再現したいのであれば、唐沢はなし。彼は普通の人として視聴者はそこに「安定感」を期待し、そして唐沢も安定感しか出せない俳優なので。「こいつ何するか分からない」という不気味さだが出せる俳優でなければいけないのです。しかも今、唐沢寿明って57歳、還暦目前ですよ。第1話を観てましたが、まあいかにもパワーがない。正義のために法の裏側で暴走するテロ対策職員をやるにしたって10年以上は遅い。

じゃあ、誰が良い?ってなると、今目立つところでは、ベタに堺雅人でも良いでしょうし、目下大河で地味な主役をやっている長谷川博己も良いかもしれません。長谷川博己と言えば、『シン・ゴジラ』であまり表情のない主役を演じていましたが、あれ結構ハマってましたよ。ああいう薄味の顔は何考えてるか分からない役には適しているでしょう。何考えてる分からない系で演技力が高いと言えば山田孝之ですが、彼はすでにかなりエキセントリックなイメージに染まっている上に、体が少しだらしない。やはり長身で細身、少し不健康なオーラを出していなければならないのでダメ。

別に有名どころを使う必要もありません。「何を考えているか分からない」「何をやらかすか予想できない」役は、視聴者の目に馴染んでいない役者を使うのが手っ取り早い。役者なんていくらでもいるんだから、40歳前後で活きの良い役者をそこらへんから連れてくればよかったのではないでしょうか。

 

え?「CTU」ですって?

笑っちゃったのは、主人公・獅道が務める職場がその名も「CTU」で、職場のデザインが本家の丸パクリという点。

そもそも『24』はある意味でアメリカを象徴するようなドラマなんですよ。移民が原住民を迫害して成立し、その後も世界各国から移民や奴隷がやってきて今のアメリカが出来ている。極めて複雑な人種のるつぼ国家であり、かつ世界最強の超大国。と同時に、敵は多く、アメリカには常にだれかと戦っている国であるわけです。

一方日本はと言うと、単一民族の島国で、世界でも圧倒的に治安の良い国。北朝鮮による拉致やオウムの地下鉄サリン事件なんて事件はあったものの、グローバルな宗教テロとは無縁です。日本にもテロ対策組織は存在しますが、それがアメリカのCTU(これも架空の組織ではありますが)と同規模で職場のデザインまで同じなんてことになると、それこそ「ごっこ遊び」でしょう。

第1話では、獅道がいきなり上司に麻酔銃を食らわせていましたが、「お前最近いつそれ使ったんだ!?」と突っ込みたくなります。ジャック・バウアーなら「先月も別のやつ撃ちましたけど?」って言っても「あー、あるかもな」と説得力を感じるんですが、日本のテロ対策組織の職員がいつそんなもん使ったんだ、と。それを何の躊躇もなくぶっ放してるんだから、マンガですよ。

 

デジタル撮影?

昔のテレビドラマって、テープ撮りとフィルム撮りの2パターンがあって、例えば『水戸黄門』は長らくフィルム撮りだったのが里見浩太朗の代からでしたっけ?途中からテープ撮りに代わりました。今はテープという媒体が存在しないので、「デジタル撮影」なんて呼ばれています。こんな説明がなくとも、『24』をはじめとする海外ドラマと日本のドラマの画質の違いは明らかですね。今の日本のドラマはデジタル撮影が当たり前で、クッキリしています。フィルム撮影は映画と同じで少しカサついた感じで、その画質だけで作品性が増したような気になります。最近は映画でもデジタル撮影が普及してきて、両者の境目がよく分からなくなっていますが、例えば日曜朝のスーパー戦隊シリーズと仮面ライダーシリーズで画質が違うのは、同じデジタル撮影でも前者は「フィルムっぽい加工」をしているのに対し、後者がそのまま使っているからだそうです。

で、『24JAPAN』はと言うと、これまたデジタル撮影(未加工)なんですね。いやいや、ここはフィルム加工すべきだったでしょう。出てる役者が安っぽい上に、映像もめちゃくちゃ安く見えますからね。

 

本気で日本版『24』をやるなら…?

これ本気でやるとなったら、結構やりがいのある仕事じゃないでしょうか。なんせリアリティーが全然ないものを日本でやるわけでして、「もしも日本にテロの脅威が迫っていたら」というifをリアリティーを演出しながらやることになるのですよ。

となると、大前提として「日本でテロなんて起こるわけないじゃんww」というユルユルの状態から始めないといけないんですよ。それがどうやら現実に起こるらしい、と徐々に緊張感が高まっていく。市中に当たり前のように銃が出回っているアメリカとは正反対の平和な日本。そういう舞台においては銃も特別です。そこから演出しなくてはリアリティーなど生まれようはずもありません。

仲間由紀恵演じる日本初の女性大統領は、どうやら民主系議員がモデルのようですが、これも話になりません。『24JAPAN』は基本的に本家のガチリメイク、つまり「できるだけそっくりそのまま」を目指しているようですが、国家首脳の部分だけはそのままというわけにはいきませんから、総理大臣になる。そこは良いとしても、民主系女性首相を暗殺しようとする動機って何なんでしょうかね。女性首相は良いとしても、暗殺されるとなるとやはり自民系でしょう。その理由として相応しいのは、日米同盟を動揺させようとするイスラム原理主義者か中国あたりになるでしょうが、仮にそうだとして、日本版がどこまで実在の国名を出せるかも怪しいものです。…となると暗殺理由って難しいよなぁ…。

ま、暗殺理由についてはプロにお任せするとして、『24』日本版を本気でやるとしたら、多分『踊る大捜査線』のチームなんかだと上手いと思うんですよ。

ちなみに『24JAPAN』の脚本家は長坂秀佳という先生で、御年なんと79歳。経歴見たら『帰ってきたウルトラマン』なんかを担当していたおじい…いや、生き字引です。いやいや、業績はあるにしても、他におらんかったんかい!

 

…などといろいろ突っ込みながら、最後まで観ることを誓います。

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