NHK大河ドラマ『いだてん』は何がいけないのか

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NHK大河ドラマ『いだてん』は何がいけないのか

『いだてん』が記録的低視聴率なんだとか。
『独眼竜政宗』が平均視聴率ほぼ40%を記録したことを考えると、「テレビ離れ」を勘案しても、毎週一桁というのはやはり相当な不人気ですね。バラエティーや情報番組と違って、ドラマの視聴率は下がるのは簡単でも上がるということはかなり難しいので、今年は「大河の冬」になりそうです。

さて、『いだてん』は何が悪かったのでしょうか。

『いだてん』の概要

『いだてん』のお話は、日本人初のオリンピック選手である金栗四三と、東京にオリンピックを招致するため奔走した田畑政治の2人を主人公に据えた物語で、それを古今亭志ん生が架空の演目『オリムピック噺』に乗せて語っていくというもの。

脚本はあの宮藤官九郎。大河ドラマのイメージとかけ離れた人選ですが、ウィキペディアによると、実際戦国時代や幕末に思い入れがないとのこと。

出演は、金栗四三役に中村勘九郎(ちなみにお父さんは『元禄繚乱』で大石内蔵助を演じてましたね)、もう一人の主人公・田畑政治役に阿部サダヲ、嘉納治五郎役に役所広司など。

敗因(1)近現代物語

どんなに新しくても幕末という大河ドラマにおいて、明治後期というのは時代が新しすぎて大河ファンが求めるロマンみたいなものは感じにくいでしょうね。

敗因(2)金栗四三て誰やねん

そもそも大河ドラマは、織田信長や坂本龍馬など、日本人なら誰でも知ってる歴史上の人物をベタベタなシナリオで演じるものであって、イレギュラーなものは求められません。皆ある程度知ってるか、歴史に詳しくない人でも何した人かくらいは知ってるような人物について、1年かけてじっくり観ていくものです。

例えば坂本龍馬であれば、江戸留学→黒船→勝海舟への弟子入り→脱藩→薩長同盟→寺田屋事件→暗殺というポイントは視聴者はある程度分かっていて(人によっては知り尽くしていて)、そのシーンをどう描いているか、その間をどうやって埋めているかを、原作者や脚本家にケチをつけながら楽しむわけですよ。

映画の予告編に2分も3分も使うのも、ある程度どういうものかを知っていないと十分に楽しめないからで、全く内容が分からずタイトルだけで「是非この映画を観たい」なんて思う人はまずいないでしょう。

さてさて、「金栗四三」なんて言われても、多くの日本人にとっては「誰それ?」な人物です。「あー、あの初めてのオリンピック選手の!」くらいを知ってる人がいたとしても、先述のようなポイントを知る人はよほどのマニアでしょう。皆、観方を知らずに観ることになります。これは大河ドラマの楽しみ方としてはかなり変則的です。

敗因(3)宮藤官九郎のセンス若すぎ

脚本は宮藤官九郎のオリジナルで、これまた大河とは相性がよくありません。同じNHKでも朝ドラの『あまちゃん』の成功は、主たる視聴者が女性で、かつ大河よりは平均年齢がぐっと低かったからだと思われますが、大河のメイン視聴者はおそらくジジイ。今どきのクドカン脚本はなかなか受け入れがたいところがあるでしょう。

そもそも歴史に興味がなさそうなクドカンですが、やはり『いだてん』の作風も大河っぽくはありません。場面転換が多すぎてジジイの頭には入らない可能性があります。

特に、ナビゲーター(ナレーター)として登場する古今亭志ん生は、明治末期の若い志ん生と昭和30年代の老志ん生とがコロコロ切り替わり、これも混乱の原因になっています。時空が半世紀ぽんっと飛んだことにジジイはついて行けないでしょう。また、この志ん生の老若の入れ替えは今のところ必然性を感じません。どちらかに統一すべきだし、統一するならジジイ志ん生でしょう。さらに、後述のように別の大きな問題も生じています。

敗因(4)ビートたけしはどう考えても邪魔

老志ん生を演じるのは志ん生おたくでもあるビートたけしなんですが、年齢こそ当時の志ん生と近いものの、金髪という風貌にしろ、喋り方にしろ、本物の志ん生に似ても似つかないものです。いや、似てるかどうかは大した問題ではないでしょう。本物の志ん生を知る人なんぞ今はかなりの少数でしょうから。

問題は、たけしが演技も喋り方もシンプルにヘタクソだということです。落語家の話は軽妙でなくてはいけません。軽妙でない落語家もいますが、少なくとも志ん生は軽妙な話し方が売りの落語家です。ところがたけしは麻痺の残る口でガサガサザーザーとしんどそうに喋ります。そもそもたけしはマシンガントークを売りにした毒舌漫才師ですが、速いだけで、トーンやスピードに抑揚をつけて喋るタイプではありません。声そのものにも魅力はありません。

ここは現役プロの落語家を使う以外に選択肢があってはいけなかったはずです。古今亭一門には志ん彌も志ん輔もいます。百歩譲って落語家でないにしても、それに準ずる技術を再現できる俳優でなければいけないでしょう。

若い人がなまじ志ん生を知らないために、ヘタなたけしなんて使ってしまうと、志ん生におかしなイメージが刷り込まれてしまいます。何より、たけしが登場すると、それはどこまで行ってもたけしでしかなく、ドラマが中断してしまうんですよ。

本当はきっと面白い『いだてん』

個人的にこのドラマは好きですし、今後も楽しみです。敗因(1)~(3)は、あくまで「大河ドラマとして戦略的に」間違っている(あえて茨の道を行った?)ということであって、放送枠の問題です。しかし、敗因(4)については条件なしに間違ってると言わざるを得ません。

クドカンのご指名なのか、NHKのプロデューサーの意向なのかは知りませんが、金栗四三役の中村勘九郎やその父役の中村獅童、嘉納治五郎訳の役所広司などたけし以外のキャストが皆かっちりハマってるのに、なんとももったいない話ですよ。

おまけ『真田丸』は面白かった

大河の作法の範囲内で個性を発揮した秀作が『真田丸』だったと思います。ジジイが観ても面白い。脚本がウィットに富んでいて、若者が観ても面白い。戦国時代の、しかも真田幸村と言う暑苦しい話を、三谷幸喜は見事に現代的な脚本に仕立てた作品だったと言えます。まあ、バリバリの戦国モノなので、『いだてん』との比較対象としては相応しくありませんけどね。

一方で、去年の『西郷どん』は、何の捻りもない、悪い意味でタイガタイガした、見どころのない作品でした。しかもあのラスト……。
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