後に『俺の維新史』シリーズに統合する前提で、備忘録的に書いておく。
悪魔扱いされる維新大阪市議団
大阪知事・市長不意打ちW選から続く維新のゴタゴタは、何が酷いかと言うと、いろいろなものを失っている点だ。
例えば、ピーポコな信者によって、維新市議団が悪魔のように叩かれている。どう考えても統一地方選で一斉に民意を問うというやり方こそが正道であり、明らかに都構想住民投票だって可決の可能性が高くなる。何より、余計な税金も使わずに済んだ。それをこのような、党内で情報共有すらせずになぜか【知事・市長だけが民意を問う】不意打ち選挙で出てしまったため、市議団はどうして良いか分からなくなるのも当然だ。本来の正道から外れたことをやったのは吉村氏なのだが、吉村まんなか主義の信者は市議団に容赦ない攻撃を浴びせ始めた。
その中には「そんなに身分を守りたいのか!」というヤツもいたが、いやいや、どうせもうすぐ選挙があるのに1年やそこらのズレで身分を守るもクソもないだろ。何より、都構想が決定したところで実務的に大阪都になるのは何年も先で、今の府市体制はしばらく続く。次の選挙のためならまだしも、そんな先まで考えて今反対してると本気で思ってるのか?ということはその市議団は、都構想賛成のふりをしながらのらりくらりと永久に反対するとでも言うのか?まったく、正気を疑うレベルだ。
吉村氏やその信者によるこういう無秩序な行動は自爆テロに等しい。自分たちも市議団も評価を下げてしまうのだ。
横山英幸の無駄遣い
もうひとつ、非常に深刻なのは、横山市長についてだ。
まず、あの何の大義も道理もない大阪W選に付き合わされたという点で、生涯にわたり大きな黒歴史が残ることになる。さらには、都構想住民投票を府域に拡大するという吉村氏の妄言については、
「都構想住民投票を府にまで広げることについて、大阪市民にはどう説明するか」という質問に答えない横山市長。ついに吉村構文を受け継いだらしい。 pic.twitter.com/FhzQ9tXTED
— 小ライス (@shorice_hitotsu) April 1, 2026
と、このように、吉村節を継承して、質問から逃げる始末。あの、聡明だった横山さんもこんなことになってしまうのだ。横山さんの優秀な頭脳は今、何かを構築するためではなく、蒙昧なボスがあちこちに開けた穴を塞ぐために使われているのである。もっとも、今の状況だって横山さん自身の選択の結果なので、遠慮なく批判はさせて頂くが。
同様のことは、立場は違うものの国会議員の新実彰平氏にも言える。彼はW選に大義はないと言いつつも、リーダーが決めたのなら応援するという姿勢をとった。当事者ではないから言いやすいというのはあるが、ハッキリ言うだけ随分マシだ。
人の評価は周りの人と環境次第
以前、「人の能力はその人単体で決まるものではない」と言うようなことを、ブログだったかXだったかツイキャスだったかは失念したが、言ったことがある。すなわち、「田中さんは優秀」「鈴木さんは愚鈍」なんてことはあまりなく、「田中さんは渡辺さんと組んだことで能力が発揮できた」とか「鈴木さんは入る会社を間違えて出世できなかった」といった具合に、誰と組むか、どういう環境に入るかで、成果に差が出てくるわけだ。
維新旋風が巻き起こるさ中においては、その能力以上の成果(当選)を上げる人もたくさんいただろう。逆に、党勢が下落傾向にあるさ中においては、十分な能力を持っているにも関わらず落選してしまう候補者もいる。
維新では馬場政権下が分かりやすかった。松井・吉村政権の調子が良く見えたのは明らかにコロナ禍のおかげで、馬場さんはその勢いを受け継いだため、就任直後の統一地方選では大躍進した。ところが、当然その上げ調子など一時的なものでしかなく、墜落していくことになる。
私から言わせれば、これは松井さんも馬場さんもリーダーとしての役割を果たすことができなかったせいだ。これは当時から私は予見しており、注意喚起していたことだが、ここでは詳しくは割愛する。
大事なことは、これからの政治を担う政治家候補生が維新と言う新興改革派政党に期待して身を寄せたとしても、肝心の党幹部が無能だったりやる気がなかったりすると、その芽が摘まれてしまうということだ。
ぶっちゃけ、吉村さんが代表になって維新はどうなった?
吉村さんが大阪維新代表をやりながら日本維新の代表にも就任し、知事と合わせて「三足の草鞋」を履くことになった。こんな状態に「持続可能性」などあるわけがない。のだが、短絡的ピーポコ支持者は、あの好感度抜群で”能力も高い”吉村さんが維新の全てを仕切るんだから、これからの維新はすごいことになるぞ!しかも万博もあるぞ!と言うことで、目が真っ白になってしまった。
で、どうなったかと言うと、それまで以上に離党者が増え、支持率も下がり続け、大型選挙のたびに見るも無残な結果となり、「大成功」だった万博閉幕直後の支持率は歴代最低レベルにまで落ち込んだ。
もちろん、信者たちにとっては、吉村尊師を称賛し、終わった万博をしがみ続けることこそが勤行なので、幸せだろう。そしてピーポコは、何か大きなものを失いつつあっても、失っていることに気が付かない。
軽薄に扱われる「大阪での実績」
そして何より、大きなものを失いつつある。それが「大阪での改革実績」だ。
大阪での実績と言うのは確定した過去のことなので、失いようがないように見える。過去は変えられないからだ。しかしそんなことはない。事実は変えられないが、物語は変わってしまうことがある。
先のW選において、吉村氏は「大阪綺麗になりました!地下鉄民営化しました!万博成功させました!」と自画自賛していた。
ざっくり「政治」と言っても、その「政治」は、「狭義の政治」つまり立法と、行政実務に分けられる。狭義の政治とは、自治体内でのルール・法律・予算編成を司ることであり、改革の根幹はこの「狭義の政治」の部分にある。概ね今までどおりのことをやるなら、官僚出身の中央派遣型首長で十分なのだが、本気で改革をやろうとするなら、殺される覚悟で仲間を集めて権力を行使しなければいけない。
で、吉村氏の言う「あれ、ワシがやった。あれも、ワシがやった」“功績”の、狭義の政治プロセスの部分はそのほとんどを橋下徹がやったのである。大阪改革や万博の設計図を作り、公的な権力のハンコを押したのは橋下なのだ。万博だって、吉村・松井、そして阿部・菅という改革派の協調という尊い政治プロセスがあったからこそできたものである。
この政治プロセスと行政プロセスをごっちゃにし、全部自分の手柄にしようとしているのが吉村氏だ。これをやってしまうと、大阪改革の何が凄かったかも、そして何より吉村氏自身の行政プロセス上の功績すらも、ボヤけてしまうことになる。
数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う
吉村氏は後に、「僕が知事になってから1000億円貯金を増やした」とも自慢していたが、これまた本当の功績は橋下徹にある。大変なのは、慢性赤字状態の組織を黒字体質に改造するという変化の過程であって、一旦黒字体質を作ってしまえば、それを受け継いだ首長は余計なことさえしなえれば、箕面のサルでも黒字になる。
それをわざわざ「僕が知事になってから」などと言うのは、「事実ではあるが真実ではない」「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う」の典型である。思い出されるのは、2回目の大阪都構想住民投票の際に毎日新聞が出したいわゆる「218億円」デマ記事だ。あれだって、嘘をついていたわけではない。【ある条件で】資産を出せば218億円かかりますよというのが「主旨」であり、「大阪都構想を潰す」というのが「趣旨」だったのだ。
その点、ユリアン・ミンツは……
『銀河英雄伝説』より引用する。知らない人のために簡単に説明すると、はるかな未来の宇宙で、超優秀な皇帝が収める帝国軍と、超優秀な軍略家が率いる民主共和勢力の戦いを描いた物語だ。後者側のリーダーであるヤン・ウェンリーは、歴史学者志望で戦争に全く興味がなかったが成り行きで軍に入隊し、その天才的な頭脳で歴戦において数々の功績を収めた。だが、残念ながらテロリストによる暗殺により、この世を去ってしまう。

それを受け継いだのが、養子であり愛弟子でもあった、これまた超優秀なユリアン・ミンツという青年だったのだが、ある時、匿名の第三者から「ユリアンの言動や戦略は全てヤン・ウェンリーの真似でしかない」という批判を受ける。
それを聞いた、ユリアンのこともヤンのことも良く知る古参軍人アッテンボローが見事に打ち返した。
「ヤン・ウェンリーが作曲家ならユリアン・ミンツは演奏家である。どんな名曲も演奏家がいなければ人々を感動させることなどできない」
「彼はそうありたいと望んで、もっとも優秀な演奏家に、また翻訳家になったのである」
「彼は出典を隠したことは一度もなかった」
1本(30分)観れば名言が3つ出てくる『銀英伝』だが、その中でも私のお気に入りがこれである。
今回の話に当てはめると、ヤンの特性は「政治家」であり、ユリアンの特性は「行政マン」になる。ユリアンは天才が作り出した理念や手法を後世に伝えることを自らの使命とした。そしてユリアンは、決して「これは自分が作曲した」などとは言わなかった。この分別を持っていたからこそ、ユリアンはリーダーとして尊敬を集めることができたのである。
そしてこのヤンとユリアンこそ、相互に能力を向上(あるいは発揮)させていく理想的な関係だった。
おまけに言っておくと、これはかなり脇役のセリフだが、「盗賊の中でも最も悪いのは、人の手柄を盗る盗賊だ」というのもあった。
まとめ
橋下徹が「創造神」であったことに疑いを持つ人はいないだろう。なんせゼロから維新を作り上げ、彼の起こした旋風によって新規の政治家だってたくさん生まれたのだから。
では一方の吉村さんはどうか。私には「破壊神」にしか見えない。


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