交野市長選で維新が大敗――山本けい氏再選の衝撃
9月6日に投開票された大阪・交野市長選において、現職・山本けい氏が再当選を果たした。選挙は維新の元大阪府議・美好かほる氏との一騎打ちだったが、何が驚いたと言って、ダブルスコアに近い大差で敗北したことだ。
私はこう見えても、長期的な党勢拡縮予想や、大型選挙においては結構予想が当たるのだが、大阪都構想や、こういう局所選挙は全く予想が当たらない。
いくらなんでもあの悪名高い山本市長には勝てるだろうし、万が一負けるとしても僅差だと思っていた。しかしながら蓋を開けてみると結果はご覧の通り。
※言っておくが、美好さんという方のことは一切知らない。今維新という党はかなり批判的に見ているが、この人が「維新なんだから◯◯(自主規制)に決まってる!」というつもりもない。維新にだってしかるべき能力と志を持つ人材はたくさんいるだろう。
話を少しずらすと、このことは、今1回目2回目よりもかなり不利になると予想される3回目の大阪都構想住民投票もどう転ぶか分からないということでもある。私は45:55くらいで否決するだろうと思っているが、なんせ投票は「賛成」か「反対」しかできない。「6割賛成だけど4割疑わしい」と言う人も集計上は「100%賛成」になるのが選挙の怖さであり面白さだ。また、心が移ろいやすい庶民は、その直前にあったイベントでも簡単に左右されてしまう。支持者たちは「直前で何か良いことがありますように!」と祈るのが良いだろう。
交野市長選で維新が敗れた理由――「現職は強い」は言い訳
さて、この結果を受けての維新界隈の反応だが、ご想像通り、阿鼻叫喚に溢れている。それでもその反応の絶対数が明らかに少ないのは、あまりにも衝撃的な事実を見なかったことにしたい心理の表れ、それに「維新界隈」そのものの規模がどんどん小さくなっていることも大きいだろう。後者に関しては、橋下徹登場以来SNSを観察してきた私ががっつり感じているので間違いないと思う。
その反応の中で最もよく聞かれるのが「現職は強い」というフレーズだ。
いやしかし、そんな分かり切った一般論をここで持ち出すべきか?相手はあの山本けい氏だ。山本けい氏がどういう人物か知らない人は是非ググって頂きたい。複数の中学生とLINEグループを作って男子児童だけ排除してバズった◯◯である。その後もあまりにエキセントリックな維新や万博への批判をして注目を浴びていた。
そういうかなり特殊な人物相手に「現職が強い」なんていうことを根拠にしているから維新はダメなのだ。そこで本来言うべきことは「現職が強い」ことではなく、「維新が弱い」ということのはずだ。
つまり、外部要因ではなく、自身に原因を求めなければいけないということだ。
交野市長選の敗北から維新が学ぶべきこと
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」
これはちょいちょい私が引用する故・野村克也氏の言葉(だが、その原典は江戸時代の武術家の教え)だ。
意訳すれば、「勝ったら偶然だと思って兜の緒を締めよ。負けたら自分に原因があるのだから反省して次に活かせ」である。
当ブログでは2024年衆院選での敗北の際にも同じ言葉を引用している。その裏で私はXで馬場元代表のことをボロクソに批判していたはずだ。そして2021年衆院選の時にすでに警告していたことも自慢している。
「前編」としておきながら「後編」を書いていないのは面倒くさくなったからだろう。ごめんなさい。だが、予告には、
「お前らが甘やかすからこうなったんや!」
「斎藤知事騒動における維新のブサイクな振る舞い」
「国民に伝えたいことがないなら政治家なんてやめてしまえ」
と、我ながら面白そうなことが書かれている。
1つ目と2つ目は置いとくとして、今関わりがありそうなのは3つ目だろう。
これまた私が長年指摘してきたことだが、維新はリーダーだけが目立ち、その他が皆下を向いて無個性・無気力・無責任に見えるのだ。維新は新興改革派政党でありながら、結構な規模になったは良いが、その過程で培われなければいけなかった「活発で開かれた議論」を推奨する党風などとうの昔に消失してしまった。目下の吉村代表の全く出鱈目な独裁ぶりを見ても明らかだろう。
馬場政権末期から吉村政権にかけて離党した地方議員は1割にも達すると言うが、Grokによるとこのような例は他にないらしい。この事象も傍証となるだろう。
同時に行われた府議の補選では勝つが、首長選挙ではあれほどヤバい現職にすら大差で負けてしまうというのは象徴的だ。議員は党の看板が有効であり、行政権者である首長は個人の資質が問われる。
政治家のSNS発信は選挙に意味がないのか?
以上の話を考えると、必然的に政治家のSNS利用の有効性の話に発展する。
山本交野市長については、SNSだけ見ていたら、それはもうとんでもない人間であるように映る。まさかこのような人物が再選するとは、と私も思った。
だったらいくらSNSで活動しても意味がないのでは?
いや、断じて違う。
私は維新支持者だった期間、一貫して「とにかくSNSを使え、動画を上げろ」と主張し続けていた。
そして一方で、「SNSが選挙に直接与える影響力は知れたもの。テレビに出てる人間には勝てない」とも言っていた。
一見矛盾するようにも見えるが、それは「選挙」にしか注目していないからだ。
例えば、日記をつけている人は多いだろうが、日記は基本的に他人には見せない。他人に見せないから「意味がない」のかと言えば、決してそんなことはない。日記は、「記録」以上に「言語的整理」の役割がはるかに大きい。
今日、あるいは最近起きたことを言葉に認めて整理する。特に感情を言語化することには大きな意義がある。もちろんそれは「うれしー!」「たのしー!」「むかつくー!」みたいなけものフレンズのようなノリではそれこそ意味がない。なぜポジティブに感じたのか、どこに違和感を感じるのか、なぜ腹立たしいのかを書く必要がある。それが出来て初めて他人に説明する機会があった時に役立つのである。
SNS発信は言わば「他人に見てもらう日記」だ。選挙結果と直接の因果関係を結びにくいが、それはそう見えるだけであって、いざ選挙活動となると、その言語化能力が大いに活きてくる。特にテキストのみではなく、動画を上げることは、話し方の訓練になる。
当然ながら、直接的な本人の宣伝にもなる。選挙に大きな影響は認められにくいかもしれないが、全くやらないよりははるかに効果がある。
維新系で言えば、発信においては足立康史氏と音喜多駿氏が大いに目立った。この2人を1行に並べるのは少し気が引けるところもあるが、今回はどちらも等しく褒める文脈だ。
足立氏は人間関係においてはバーサーカーで、それが結局(維新においては)身を亡ぼすことになったが、その頭の良さや発信意欲、人懐っこさなんかは全ての政治家が見習うべき点だ。何より実際演説が面白い。だからこそ国民民主党に拾われて1議席を持つ身分になっている。維新界隈がどれだけ攻撃しようがこれが現実である。
音喜多氏は、どれだけキモいと言われようがダンス動画を上げ、叩かれれば叩かれるほど喜ぶマゾ気質。何より政策面では、結構攻めた発言も多く、「誰かのコピペ」ではなく、自身の頭で考えているということがよく分かる。そして彼もまた、いまや民間登用という形でれっきとした維新のメンバーになっている。
一方、言語化能力を鍛えないまま発言機会だけがやたら与えられる立場になった人と言えば、維新の吉村代表である。彼こそ、「誰かが言ってたことのコピペ」でしか会話ができないため、メディア出演時もまるで会話が成立していなかったり、大阪ダブル選挙においては評論家から「何を言ってるのか分からない」と言われるなど総スカンを食らうことになった。例を挙げれば2本の手では収まらないがここでは割愛する。
そんなわけで私はずっとSNS発信を推奨してきたのだが、多分この視点は私が「政治垢」だからだろう。「政治垢」として括られる多くのアカウントは、その9割が「特定政治家(政党)の応援垢」だったり、「選挙が好きな垢」だったりする。
政治を考える上で誰かを応援するのではなく、誰かを応援することそのものが目的となっている。必然的に、選挙の時にやたらエンジンの回転数を上げることになる。だから、普段の地道な努力を忘れがちなのだ。
なぜ、タダで発信できるメディアがあるのにやらない?マスメディアに文句を言う前に、自分が伝えたいことがあるなら個人メディアであるSNSやYouTubeを使うのが当然のはずだ。それは「義務」というより、自分が政治家(志望)になったらやらずにいられないと、私なら思う。
柳ケ瀬裕文氏や藤田文武氏も当初はなんだかんだ「やらない理由」を上げて動画配信に消極的だったが、結局やっているんだから、5年早くやっておけばよかったのではないか?隣の音喜多を見てみろ。
交野市長選の結果は今後の維新と大阪都構想にどう影響するか
維新界隈が敢えて口に出さないようにしているのが非常によく分かるのが、来年の統一地方選そして大阪都構想住民投票への影響だ。正確に言い直せば、「影響」と言うより、この交野市長選の結果こそが今の維新の地力と言う側面は多分にある。
維新の議員および支持者がこの数年念仏のように「維新は大阪では絶大な信頼と実績を~」と主張してきたのは、大阪から一歩外へ出ると途端に弱くなる徹底的な内弁慶ローカル政党だからだ。国政など大型選挙の際にはそれが強調され、維新としてはこのフレーズを使わざるを得なくなる。
| 選挙 | 年 | 比例得票 | 比例得票率 | 選挙区得票 | 獲得議席 |
|---|---|---|---|---|---|
| 衆院選 | 2021 | 約805万 | 14.0% | 約480万 | 41 |
| 参院選 | 2022 | 約785万 | 14.8% | 約553万 | 12(改選) |
| 衆院選 | 2024 | 約511万 | 9.4% | 約605万 | 38 |
| 参院選 | 2025 | 約438万 | 7.4% | 約345万 | 7(改選) |
| 衆院選 | 2026 | 約494万 | 8.6% | 約374万 | 36 |
これは過去5年間の国政選挙戦績だが、比例得票は実に約4割も落としている。その境目に前回の統一地方選があった。この時に維新は初めて大阪市議会で単独過半数を達成したのだが、その後の国政勢力の急落、何より近畿ブロックでも30%ほど得票数を落としていることを考慮すれば、次の統一地方選がどうなるかなど界隈は考えたくないかもしれない。
大阪市議会の場合、定数が11議席削減されることが維新には圧倒的有利に作用するはずだが、もしこれで過半数割れするようであれば、いよいよ「大阪では絶大な信頼がー」とも言えなくなるだろう。
何より困るのが、大阪都構想だろう。もし府市議会で(さすがに府議会でそんなことは起きないと思うが)過半数を割りながら都構想だけ可決してしまったら、相当面倒くさいことになる。都構想は可決したからといって次の日に大阪府が大阪都になり、大阪市が解体されて特別区が設置されるわけではない。実際の都区制度移行には、無数の条例を通す必要がある。だが他党の協力なく住民投票にこぎつけ、仮に可決したとしても、いざ実務の段階になって勢力が過半数未満であれば、反対派勢力がなんだかんだ理由をつけて、必要条例群を通せなくなる可能性も十分ある。
住民投票はあくまで民意の確認であって、都区制度移行の実施にはそれはそれで民主的プロセスが必要なのである。つまり、住民投票で可決したという事実を残したまま凍結させてしまうこともできてしまうのだ。





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