これにて晴れて、大阪都構想実現に向けた法定協の設置が内定した。グズっていた市議団が賛成に転じたのは、吉村大阪府知事に任期満了後の「府知事続投」の条件を飲ませたからだ。
なぜ議員の出直し選挙は必要ないのか
さて、改めてここまでの経緯をまとめる。
発端……と言うよりお家騒動が顕在化したきっかけが、例の大阪府知事・市長出直しダブル選挙である。こともあろうに、「3度目の都構想はやらない」発言を翻す重大事案を載せたこの選挙を、ごく近い幹部を除いて内部に一切の相談なく断行したことで、内部が分裂する騒ぎになった。
再度言う。法定協は府知事・市長・府議会・市議会という4局(+α)で構成される。これを設置するために選挙で民意を問う必要があるなら、知事・市長のみならず、府議会議員・市議会議員も同様に出直し選挙をする必要がある。市議団を「保身のために抵抗している」という批判があるが、であるなら同様の論理で「府議団は我がことではないからどうでもいいんだろ。スジを通すならお前らも出直し選挙をしろ」と批判されるべきだろう。
維新市議団は「私利」のために抵抗したのか?
いや、そもそも市議団が保身のために抵抗しているという論理にもかなり無理がある。と言うのは、仮に都構想が可決されたとしても、次の日に大阪府が大阪都に変わるわけではない。最低でも2年、長ければ4年5年と、移行実施までにはかなりの時間があり、ただちに身分がなくなるわけではない。また、大阪都に移行したとしても、個々の特別区には、合計して今の市議会とほぼ同数の区議会が設置されることになっている。当然ながら、今の市議が当選する確率は高いし、制度移行されるかどうかに関わらず、議員を続けるためには選挙が必要なのである。
もちろん、個々の維新市議が清廉で高邁かなんて知ったことではない。維新の看板に頼って立候補しただけのクズ議員だっているだろうが、それは市議に限ったことではない。
問題は、本気で民意を得るプロセスが重要と考える真面目な政治家が含まれている場合だ。今の吉村まんなか界隈である維新信者はそんなこともお構いなしで、
「誰のおかげで当選できたんじゃい!」
「お前らろくに仕事もせんくせに」
「維新やったら都構想やるのは当たり前やろ」
と、一見するとカタギかどうかも怪しいような罵詈雑言で市議団を攻撃した。結果として、市議団は条件付きではあっても妥協したのだから、こういうやり方も奏功したということになる。これがさらなる問題なのである。
最近の維新支持者の態度は常にこんな感じで、吉村さんが答えにくい質問を投げかけただけでも「アンチ」として攻撃をするのだから、もはや議論が成立しない。
市議団はなぜ賛成に回った?
市議団は「自分たちは民意を得ていない」ということを理由に法定協設置に反対していた。私からすればこれは全くもって理に適っている。
では。
なんで賛成に回ったの?
だ。
条件を出したところで、いつどうやって民意を得たのだ?という疑問が残る。すると、そのエクスキューズが「タウンミーティング」ということになる。
不意打ちダブル選挙が批判されて、内部分裂が顕在化した維新がやったことは、タウンミーティング(以下、TM)である。
はて?これで「民意を得た」ことにできるのなら、知事・市長だって28億円もの血税を使わずに民意諮問はできたはずだ。もちろんこんなものは詭弁であり、民意を得たことになどできない。
タウンミーティングで「民意」は確認できるのか?
そもそもTMとは、政治家と地域住民の交流・意見交換の場であって、総意としての民意を諮問する機能は持たない。ここで採られているアンケートだって総数2600人ほどで、220万人以上いる大阪市全体の有権者数の1%にも及ばない。さらにTMに参加するほど政治に対して意識の高い人は熱狂的な支持者かアンチかであることが多いだろうし、その参加者を主催者側が選別する(サクラを用意する)ことだってできるだろう。
本日13時30分より議員団総会が行われました。
タウンミーティングで集計したアンケートについて、今後の法定協議会の設置については「早期に設置すべき」、「十分な説明後に設置すべき」を足すと1,169件、「反対」が982件など、結果について共有しました。#大阪維新の会大阪市会議員団 pic.twitter.com/bz2rGAcGvm— 大阪維新の会 大阪市会議員団 (@shikai_ishin) May 7, 2026
維新大阪市議団の公式アカウントも、この時点ですでにかなり日和ったようで、「早期に設置すべき」と「十分な説明後に設置すべき」を足した数だけをポストしている。「吉村知事の任期内に慌ててやるべきか」という論点はぼやかそうとしているのだ。
アンケートを民意の根拠にしたいのであれば、せめて数千万円のコストを使って無作為抽出による電話アンケートなどを実施すべきだろう。もちろん、それでも完全な民意とは言い難い。ただひとつ言えることは、この時点で28億円を費やした大阪ダブル選挙の大義名分は崩れていた、ということだ。
結局「民意」とは何だったのか
不思議な話はまだ続く。
先日実施された現職の死去に伴う大阪市議補欠選挙もまた「民意の確認」だと位置づけられたのだ。いや、選挙だから民意なのは間違いないが、それで民意を得たのは当選した栗田氏1人であって、維新全体ではない。そもそも偶発イベントで市議の議席たったひとつを争う選挙が「維新全体への民意」とするなら、それこそあのダブル選挙はなんだったのだ?という話だ。吉村代表は、この選挙結果をもって市議団の要求である知事続投を決めたらしいが、いったいどこにスジがあるのだろうか。もし来週、1人の市議がなんらかの理由で辞任して補選が行われるとしたら、そこでもまた民意を問うことになるのか?
吉村氏のプロフィールには「趣味:民意を得ること」とでも書いてあるのだろうか。
元凶は吉村氏の無責任な発言
何度でも言うが、この騒動の原因を遡ると、吉村氏の「3度目はやらない」という全く必要のない宣言にある。これは「維新として」ではなく、吉村氏個人の話なので、吉村氏が撤回・謝罪すればそれで済んだ話である。もっとも、「アンチ」は「勝つまでジャンケンだ!」と批判は続けるだろうが、それこそ民意があるなら堂々とやれば良い。
問題は、吉村さんがこの個人の案件を子供のようなプライドが邪魔をして処理できず、日本維新の会代表に就任した直後、しれっと都構想PTを立ち上げてしまったことだ。この時、私の記憶が確かであれば「僕自身は積極的ではないが、是非やりたいという声が党内に強い」と言うのがその理由だったはずだ。だが、今の騒動を見てみたら、そんなことは自分がゴメンナサイしたくないから出た言い訳でしかなかったことが分かる。仮にそんな声があったとしても、代表の立場で前言を撤回したくないのなら、PT設置などするべきではなかったのだ。




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