つづき。
大阪市と大阪府で票を分ければ良い
前半で書いたように、大阪都構想の住民投票を大阪府域で実施することに大義はないどころか、下手すると違憲である。せいぜい聞かれるのが「大阪府全体に影響があるから」という理屈だが、これも前半で書いたように、「影響がある」ことは「自治権を持つ」ことにはならない。
この「影響があるから」というごまかしの似非道理を仮に真っ当な道理とするなら、
「住民投票は大阪府全域で実施し、大阪市内と大阪市外の2勢力に票の集計を分け、それぞれで過半数となった場合にのみ可決とする」
とすれば良いのである。これなら「影響があるから」という市外勢力も満足するだろうし、合憲性の問題もほぼゼロになる。
だが、例によって維新の政治家や界隈は、こういう当たり前の意見を特殊アビリティー『見なかったことにする』を発動して徹底的に無視する。そんなことは当たり前で「影響があるから」など大嘘だからだ。大阪市廃止を実現する可能性を少しでも上げたい、ただそれだけである。
本当に大阪都構想住民投票を、誰からも文句を言われずに大阪府民という1主体で実施したいとなったら、方法はひとつだけだ。
タイムマシンを開発して2014年に戻り、時の維新代表であり大阪市長であった橋下徹に「お願いだから住民投票は大阪府域でやって!」と土下座して頼むことだ。
吉村洋文という人は、ネガティブなコンテキスト(背景、文脈)を作り上げることに関しては天才的である。
斎藤知事問題では、「真実が究明されるまでは!」と言っておきながら橋下徹とメディアの風向きで「パワハラ知事だ!」に転換。
大阪関西万博では、「並ばない万博」を標榜しながら、イタリア館6時間待ち。
「3回目の大阪都構想はやらない!」と言って今3回目。ついでに「僕は約束を守らない政治家は大嫌いなんです!」と本人談。
選挙のたびに得票数を落としていくトレンドにあって「衆議院【比例のみ】45議席削減」。
準備期間12日間の池田市長選を「むちゃくちゃだ」と批判して、自分は6日間の出直し大阪不意打ちダブル選挙。
都構想住民投票については、橋下氏がさも当たり前のように「ということで、大阪府で住民投票を実施します」と言っていれば、多くの人はそれを当たり前のように受け入れて、合憲性の論争も起きなかっただろう。その背景には、少なくとも当時の大阪は府も市も関係なく全体として維新の改革を歓迎し、当然党内でも分裂など起きていなかった。それは橋下徹という政治家に圧倒的なパワーがあったからでもある。(ま、当時住民投票が大阪府域で実施されていれば、都構想は可決していただろうから、今このようなことで論争が生じることもなかったのだが)
それを今ここで、「やっぱり大阪府域で住民投票やりまーす!」となったら、それは「負けそうだから範囲を変える」というコンテキストが生まれてしまうのだ。権力者の都合で選挙の範囲を変えてしまうことを「ゲリマンダー」と言うが、これは議席削減の話を合わせてまた別の記事で書く。
何にせよ、卑怯、なのである。
そもそも大阪市と大阪府で同じ住民投票をする必要がない
吉村代表と斎藤アレックス政調会長の対談の切り抜きを見たが、「大阪都への名称変更と大阪市廃止の住民投票を同時にやれば1回で済む」という主旨の発言があった。あたかも税金負担を減らすような言い方だが、嘘の禊ぎのために28億円(生まれたての赤ちゃんから管だらけで老人ホームで寝ているお年寄りまで、府民1人あたり350円)使って不意打ちダブル選挙やったのは「民主主義のコスト」としたくせに、都構想住民投票の拡大は「節約」を持ち出すのか?というツッコミは脇に置いたとしても、この話はおかしい。「法的に問題はない」とのことだが、それを言った役所の人間は合憲性まで担保してくれているのだろうか。
もし投票を1回で済ませることそのものが目的だとするのなら、大阪市内では「名称変更」と「大阪市廃止」、大阪市以外の大阪府域では「名称変更」のみの住民投票を実施するのが当然のスジだろう。
もちろんこういう当たり前の提案も見なかったことにされる。維新とその界隈がやりたいのは、大阪市の権利を3分の1に薄めて、何が何でも都構想を成立させることである。
祝福されない大阪都構想に意味はあるのか
最初の大阪都構想に挑戦した時の代表である橋下徹氏は、最近になって「実は僅差で可決しても実施は先送りするつもりだった」と告白した。なるほど、それでこそ住民自治の理念である。もちろんその場合でも住民投票の結果は有効であり続けるので、大阪都以降は法的にいつやっても良い状態が続く。ただ、住民投票にこだわった橋下氏の理念は「住民の理解のない統治機構改革はやるべきではない」だろうから、こういう裏の条件を設けていたのだろう。そして「いつやっても良い状態」の中でさらなる民意醸成を試みたはずである。
さて、今の維新はと言えば、首長と議会構成は4極とも維新が握る完全与党状態だ。ところが大阪都構想については関心が薄い。皆さんご存じのように党内でも相当みっともないゴタゴタがあって、それを何とか収めた形だ。
ここでポイントになるのは大阪市議会の議会構成だ。現状、大阪市議会における維新のシェアは、1議席でも落とすと過半数割れという崖っぷちにいる。吉村氏は当初、可決だろうが否決だろうが、国政に進出するつもりだったらしい。どうも自分個人の名誉にしか興味がないらしい吉村氏は、可決したらしたで「わしが都構想をやった!」というトロフィーが獲得できて、次は「国務大臣就任」というトロフィーを獲得しに行けばいい。否決だったらそもそも誰がトップだろうと4回目は絶望的なので大阪府知事にとどまる意味がなく、やはりとっとと国政に行くのが合理的だ。つまり、吉村氏は自分名義での大阪都構想が可決さえしてしまえば、その後の移行作業にまでコミットする気はさらさらないらしいのだ。こんなやり方で都構想に汚れたイメージを植え付ければ、次は誰がトップになろうとものすごく大きな障害になる。だが、そんなの知ったこっちゃない。吉村氏は自分名義でない大阪都構想には興味がないだろうから。
都構想が可決しても移行が進まないという事態
次の統一地方選で大阪市議会における維新シェアが過半数割れする確率はかなりある。では万が一、「議会が過半数割れしたけど都構想住民投票が可決」という状況になったらその後はどうなるか。
大阪都構想は可決したら次の日から大阪都!とはならない。実際の移行段階においては、府・市それぞれで無数の条例を通さなければいけない。その時、維新が過半数を持っていなければ、野党が協力して都構想関連条例にことごとく反対するという手が使える。これだけで無駄な税金を使いながらどこまでも移行実施を遅延させることができるのだ。
それだけではない。最悪の場合、つまり知事・市長・府議会の構成、これらの要素のうちどれかが欠けると、都構想の取り消しだってできてしまうかもしれないのである。
橋下氏が「ギリギリなら先送り」と判断した裏にはこういう事情も勘案したからではないか。ましてや、1回目と2回目の時は、維新と言う政党の党勢が上昇トレンドにあったさ中だったが、今は選挙のたびに得票数を落としていく長期下降トレンドから抜け出せていないというのが現状だ。維新幹部は「その後」のことをどこまで想像し、計算に入れているのか。
ではなぜ下降トレンドの今、都構想をやるのか
議席構成だけ考えると、一見過去の2回よりもずいぶん有利だと言っても良い3回目の都構想だが、空気は真逆だ。先に書いたように、今の維新は暗鬱な空気に覆われている。ではなぜ下降トレンドの今、慌てて都構想をやらなければいけないかと言えば、答えは簡単。
これから維新の党勢が上昇する要因が何ひとつないから
である。
あれだけ【がんばって】主張した社会保険料改革も完全な空振りに終わり、連立与党となってどれほど高市総理と吉村氏が仲良しアピールをしても、いまだ政党支持率で国民民主党の下にいることの方が多い。直近(6月8日)のJNN支持率調査では、維新の支持率は実に半減して2%となり、国民民主党はもちろん、参政党や(内部分裂して支持率割れを起こしているはずの)公明党よりも下にいる。

なぜ維新が長期低迷に陥っているのかについてはここでは書ききれないが、維新界隈が意識していないものすごく分かりやすい弱点であり欠点がある。ここでは趣旨が違うので書かないし、どうせほとんどの人は興味がないだろう。どうせ読まれないならnoteで100円のカギをかけて書いてみようかと思う。
話を戻すと、本来、上昇トレンド中に腰を据えてやらなければいけない大事業を、下降トレンド中に突発的にやろうとしているから、やることなすことドサクサになってしまうのである。
大阪都構想の熱烈な支持者として言う。
このようなやり方で大阪都構想を汚すな。
つづく。



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